OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

正統派 part 2

2007-06-24 16:59:26 | Weblog

午前中はバンド練習に行って、楽しかったのに、午後からは仕事のゴタゴタした連絡や選挙のお願いとか、ドロドロした世界に引きずり込まれてウンザリでした。

ということで、本日も正統派の1枚を――

Spring Is Here / 小曽根真 (CBS / Sony)

小曽根真は今や世界でも有数の実力派ジャズピアニストになっていますが、それはデビュー当時から充分に予測出来た事だと言われています。

確か1985年頃から、ジャズマスコミは大々的にプッシュしていましたし、デビュー盤からして、ゲイリー・バートン(vib) が大きく関わっていたと記憶しています。

しかし私には、凄いんだろうけど、ちょっと……???

確かに誰の真似でもない高級テクニックと音楽性は感じられたのですが、なんとなく香りが高いというか……。やっている音楽がオリジナル曲ばっかりというのが、私のような凡人には取っ付きが悪かったのです。

すると、1987年になってようやく出たのが、この有名スタンダード曲ばっかりの正統派ピアノトリオ盤です。

録音は1986年12月、メンバーは小曽根真(p)、ジョージ・ムラーツ(b)、ロイ・ヘインズ(ds) というのですから、もう、ワクワクです――

01 Beautiful Love
 ビル・エバンス(p) が決定的な名演を残しているスタンダード曲ですから、私は聴く前から妙に肩に力が入っていたのですが、それを綺麗に解きほぐしてくれた小曽根真トリオの躍動的な演奏に、いきなりの拍手喝采です!
 あまりに素直なテーマ解釈ゆえに、これはサイドメンの手抜きが懸念されたんですが、リラックスしたノリが逆に良い結果をもたらしたようです。
 小曽根真のピアノスタイルはオスカー・ピーターソン系のバカテク派ですが、誰々の影響云々という話が出来ないほどに完成されていて、そこが物足りなかったりします。しかし、ここでは思わず音量を上げてしまうほどに、惹き込まれてしまうんですねぇ~。ただしそれは私的に素晴らしいとか、最高とかいうレペルではありません。ただジャズの本質を掴んだ演奏をもっと聴いていたいという欲求によるものです。
 演奏はジョージ・ムラーツのベースソロを挟んで、ロイ・ヘインズのドラムスと小曽根真が烈しく対決しますが、このパートが一番、「らしい」と思います。

02 Spring Is Here
 これもビル・エバンス(p) が素晴らしい演奏を残している曲なので、う~ん、と選曲に唸る他はないんですが、アルバムタイトルになっていますから、きっと凄い出来なんでしょう……。
 と思っていたら、全く正統派の解釈でジャズピアノの基本を聞かせてくれました。無味乾燥に美メロのアドリブを綴る小曽根真のピアノに対して、ピリリとスパイスの効いたベースとドラムスが、絶妙の味わいを醸し出していると思います。
 特にジョージ・ムラーツは失礼ながら、時には露骨な手抜きをしたりする人という個人的なイメージがあるんで、あまり期待していなかったのですが、このセッションでは御大ゲイリー・バートンがプロデュースに関わっていた所為か、なかなか落ち着いたプレイで好感が持てます。

03 Someday My Prince Will Come
 これはマイルス・デイビス(tp) 、そしてビル・エバンス(p) やデイブ・ブルーベック(p) 等々、人気演奏がゴマンとありますから、否が応でも期待が……。
 まずテーマ解釈がワルツのポリリズムビートになっていて、素直にテーマメロディを綴る小曽根真に対して執拗に絡むジョージ・ムラーツ、時として烈しく斬り込んで
来るロイ・ヘインズが、モダンジャズ王道のスリルを作り出しています。
 そしてトリオは、ゆったりとした中にも密度の濃いアドリブ世界を現出させるのですが、特に小曽根真は大らかなフレーズとノリで素晴らしく、ジョージ・ムラーツはガチンコの姿勢を鮮明にしていて、気持ちが良いところです。

04 On The Street Where You Live / 君住む街で
 これはミュージカル「マイ・フェア・レディ」からの有名曲で、オスカー・ピータソン(p) やアンドレ・プレヴィン(p) という、小曽根真と同系統の名手によって素晴らしい名演が残されていますから、ちょっと……。
 と懸念していたら、優るとも劣らない凄い演奏を聞かせてくれました。
 まずロイ・ヘインズのブラシ主体のドラムスが最高ですし、小曽根真のテーマ解釈の妙は若さと熟練の技が一体となった素晴らしさです♪ しかもアドリブが、また凄いんですねぇ~♪ もう全部が歌になっている即興メロディは、天才の証だと思います。粘りつつも歯切れの良いピアノタッチも驚異的!
 グルーヴィなノリを弾き出しているジョージ・ムラーツのベースも、実に良い味ですし、アドリブソロも堂々の「節」を披露しています。

05 The Night Has A Thousand Eyes / 夜は千の目を持つ
 これもモダンジャズでは人気曲♪ そして小曽根真は前曲に続いて好調な演奏を聞かせてくれました。
 それはもちろんラテンビートを使いつつも、かなり早いテンポを設定し、グルーヴィな4ビートが交錯する最高の舞台で大暴れするという展開です。
 あぁ、それにしてもロイ・ヘインズの張り切りは流石です。この人にはチック・コリア(p) とやった畢生のピアノトリオ・セッションが沢山ありますが、当にそのノリ! ですから小曽根真も安心して烈しいモード節と歌心に満ちたフレーズをゴッタ煮にしてブチまけているようです。

06 My One And Only Love
 これはジョン・コルトレーン(ts) の名演がジャズ者には染み付いているはずですから、小曽根真も油断がならないという雰囲気になっています。
 もちろん定石どおりにスローな解釈で、最初から小曽根真が一人舞台のテーマ演奏が、なかなか素直で好感が持てます。
 そしてアドリブパートではベースとドラムスを従えて、思わせぶりをたっぷりとやってくれますからねぇ~、唸りながらも最後には絶句させられます。ここまで正々堂々とした真っ向勝負は、己のピアノに相当の自信があるんでしょう。
 心底、流石だと思います。失礼ながら音程を外しそうになって姑息なゴマカシをやってしまうジョージ・ムラーツが、逆に憎めないですねっ♪

07 O' Grande Amore
 これはボサノバの有名曲なんですが、ここでの演奏は少しばかりハズシ気味……。
 というか、ロイ・ヘインズが擬似ジャズロックみたいなリズムを敲いてしまって、せっかく小曽根真が美メロのアドリブを弾いているのにぃ~~~!
 ということで、本当に勿体無いのが、このトラックです……。
 ただしジョージ・ムラーツのベースソロのパートでは、意外にしっくりキマッていますから、あながち嘘はなかったということでしょうか? 続く後半の小曽根真は自分から歩み寄ったかのようなアドリブを聞かせてくれますが……。

08 Tnagerine
 という前曲の憂さを晴らしてくれるのが、この演奏です♪
 とにかく最初っからトリオのノリが半端ではありません。グイノリのジョージ・ムラーツ、シャープなロイ・ヘインズに煽られて、小曽根真は思いっきり炸裂しています。そのピアノ全体が鳴りまくったアドリブは、最初のブレイクから強烈至極! バリバリ・ガンガンに弾きっぱなしのバックドロップです! 両手ユニゾン&バラバラ弾きやビートを逆手にとった烈しい打楽器奏法、さらには変態コードの挿入等々、持てる思いを有りったけ吐露した凄さが感じられます。
 これには共演のジョージ・ムラーツも押され気味ながら、白熱のベースソロ! もちろんロイ・ヘインズもガチンコのドラムソロで対抗していますが、もう誰も小曽根真の勢いは止められないうちに、演奏は大団円を迎えるのでした。

というこのアルバムは、既にCDが普及し始めた頃に出た1枚です。

私も当時、とうとうCDプレイヤーを買っていたんですが、その時に一緒に買ったソフトが、これでしたので、随分と聴きまくった思い出があります。

ご存知のようにCDの利点には、曲順のプログラムが自分で設定出来るという楽しみがありますから、このアルバムも自分勝手に作って聴きましたですねぇ~♪ で、それは「1」→「4」→「5」→「2」→「3」→「8」というものです。

ちなみに最近の小曽根真は、またまたオリジナル曲に拘っているようですが、ぜひともこういう企画をやって欲しいもんです。9年ほど前に生ライブを聴いた時はゴッツイ黒人のサイドメンを引き連れたトリオでしたが、営業的な見地から、それでも数曲のスタンダードを演奏してくれましたから、ぜひともお願いしたいところです。

コメント
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