OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

欧州ジャズ人気

2007-06-02 17:17:14 | Weblog

土曜日だというのに、仕事に奔走しています。

爽やかな日本晴れというのに、気分は仕事一色で、私は寂しい男だと……。

ということで、本日は――

Decipher / John Taylor (MPS)

今でこそ、当たり前に鑑賞出来る欧州ジャズも、1980年代初頭までは紹介されることが稀でした。だいたい日本で一番権威があるとされる某ジャズ月刊誌にさえ、大きな特集が組まれることがなかったと記憶しています。

しかし最新輸入盤が入るジャズ喫茶では、欧州物が案外と人気があって、アメリカの大物が渡欧した際のレコーディングに参加していた現地のサイドメンに注目するマニアも、確実に増えていたのです。

それはもちろん、欧州勢の実力が半端ではなかったからで、輸入盤を扱う店の中には、積極的に欧州ジャズを仕入れるところもありました。

しかし、それらのブツは値段も高かったのですが、決定的に入荷枚数が少なく、なかなか入手困難なのが実状……。

ですから、ジャズ喫茶では争ってそういうレコードを入れる風潮さえ現れました。その背景には、電化ジャズロック~フュージョンの嵐に対抗しようにも、本場アメリカには正統派4ビートの良心的な作品が作られなかったという事情もあったのです。

さて、この作品はそういう1970年代ジャズ喫茶での人気盤!

主役はピアニストのジョン・テイラーで、後にECMというレーベルで透明感溢れる演奏を披露してブレイクする名手ですが、ここでは非常に躍動的、過激なスタイルを聞かせてくれます。

録音は1971年6月&1972年とされており、メンバーはジョン・テイラー(p)、クリス・ローレンス(b)、トニー・レビン(ds) というイギリスの3人組! 演目は全て、ジョン・テイラーのオリジナルです――

A-1 Cipher / Wait For Me
 ちょっとチック・コリア風の曲と演奏ですが、トリオは初っ端からビシバシに疾走していきます。
 まあ、このアルバムの根底にあるのは、チック・コリアの「ナウ・ヒー・シングス」であることは隠しようも無いんですが、ここでは何の衒いも無く、自分の信じた道を行くジョン・テイラー・トリオの潔さが快演を生み出していると思います。
 とにかくアップテンポでガンガン弾けるジョン・テイラーの歯切れの良いピアノタッチと硬派なモード節は、1970年代ジャズ喫茶にはピッタリでした♪ もちろんベース&ドラムスの存在感も抜群で、各々のソロスペースの密度の高さは抜群です。
 演奏は中盤で宇宙空間的なフリーになりかかっていますが、直ぐに後半の「Wait For Me」に入って、正統派4ビートの世界に戻っていくあたりが、たまりません。ここはミディアムテンポでグルーヴィな雰囲気も漂いますし、自由自在な音の広がりというか、あくまでジョン・テイラーのピアノを中心に熱く盛り上がっていくのでした。

A-2 Leaping
 ドラムソロ中心のテーマからトリオはフリーな絡みに進みますが、突如、正統派の早い4ビートの部分が現れたりして、油断がなりません。
 もちろんそれは、如何にもジャズ喫茶的快感♪
 ジャズ喫茶での居眠りモードがブッ飛ばされる演奏でもあります!
 個人的には最初聴いた時、チック・コリアかと思ったほどなんで、そのあたりをご理解願います。

B-1 Speak To Me
 前半はワルツ、そして後半はスピート感満点の4ビートに変化する魅惑的な名曲・名演です。もちろん、これもネタ元はチック・コリアなんですが、憎めません。
 というか、ここでの演奏そのものが、非常に真摯です。
 ベースやドラムスのツッコミも鋭く、それゆえにジョン・テイラーのピアノがチック・コリア丸出しになっても微笑ましい限り♪ 私は好きですよ、こういうの♪

B-2 Song For A Child
 これは後のECMでの演奏を想起させる、幻想的なスロー曲です。
 それはジョン・テイラーの一人舞台で始りますが、ベースとドラムスが滑り込んで来ると、場がグッと引き締まり、甘さを配した美しさがジワジワと広がっていきます。
 あぁ、本当に素晴らしいですねぇ。このアルバムのハイライトだと思います。

B-3 White Magic
 オーラスは正統派モードジャズ! なかなかストレートな表現なので、素直に楽しんでしまいます。
 その中身は、案外緻密にアレンジされているのかもしれません。しかし、だとしても、この気持ちの良さは不滅でしょう。まさにジャズ喫茶の音と演奏です。

ということで、とても自宅で聴いて和める作品ではありません。第一、大音量じゃないと感じない演奏だと思います。

しかし、私はこのアルバムが欲しかったですねぇ。リアルタイムでは高値の花というよりも、現物そのものが珍しかった時期がありました。それがジャズ喫茶での人気から、確か日本盤も発売されたと思います。

ちなみに私は、某中古店のバーゲンでオリジナル盤を発見し、それは、あまりの安値に目を疑った瞬間でもありました。もちろん速攻で確保したのですが、なんと直後、店内に居た見知らぬお客さんに、「頼むから、それを譲って欲しい」と図々しくつきまとわれ、辟易した思い出があります。

もちろん私は拒絶したんですが、愕いた事に、その人は後年、某ジャズ雑誌に評論家として登場するようになりました。その時に名刺を渡されていたんで、分かったんですが、気が変わったら連絡して欲しいとか……。

そんなわけ、ねーだろぅ、と今でも思っているのでした。

コメント (2)
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