せっかくの休日なのに、参議院選挙が近いので、いろいろなシガラミから電話が多くて閉口しました。
ちなみに私の従兄弟は、某保守系野党の女議員の下で秘書をやっていたんですが、先日、あんまり先生がヒステリーをおこすので、ついに喧嘩して辞めたと、今日、報告がありました。あ~ぁ……。
だから私は、やめとけ、と言ったんですよ。その仕事に就く前に! しかし従兄弟はその時、失業状態だったしなぁ……。
それにしても選挙間近で旗色が悪いからといって、連日連夜、秘書に当り散らすなんて……。一応、私設秘書でも国民であり、「票」だと思うんですが……。実際、従兄弟はプンプンで自分の元先生を批判していましたから、きっと他所でも言いふらしでしょう。イメージダウンは必至ですぜっ、先生!
ということで、本日は――
■Up, Up And Away / Sonny Criss (Prestige)
もしジャズ喫茶人気盤投票なんてものがあったなら、必ずや上位200位内には入ろうかと思うのが、このアルバムです。
ソニー・クリスは、皆様ご存知のようにチャーリー・パーカー派の黒人アルトサックス奏者ですが、その過剰に吹きすぎるスタイルゆえに、好き嫌いがあるようです。実際、私もそれほど入れ込んでいるわけではないのです。
しかし、このアルバムでは私的偏愛曲「Sunny」をやっていますからねぇ~♪ もう、それだけで要チェックなのに、出来がまたグッときますからっ! もう完全虜の1枚です。
録音は1967年8月18日、メンバーはソニー・クリス(as)、タル・ファーロゥ(g)、シダー・ウォルトン(p)、ボブ・クランショウ(b)、レニー・マクブラウン(ds) という実力派が揃っています――
A-1 Up, Up And The Way
オリジナルはソフトロック系グループのフィフス・ディメンションが、1967年夏に大ヒットさせたポップス曲を、ここでは擬似ボサロックと4ビートを混ぜたような、絶妙のジャズビートで、しかも本格的なアドリブ主体の名演に仕立てています。
もちろん、あの軽快なテーマメロディが存分に活かされています♪
ソニー・クリスのアルトサックスは、しつこい唸りと遠慮の無い吹きっぷりで、ちょっと辟易する瞬間もあるのですが、共演のシダー・ウォルトンのツボを抑えたピアノやカッコ良いキメをビシッと弾くタル・ファーロウには、ノー文句です。
A-2 Willow Weep For Me
モダンジャズでは黒いフィーリング満点の定番演目ですから、当にソニー・クリスには十八番なのでしょう。このバージョン以外にも幾つかの録音が残されていますが、ここでは素直に抑制の効いた吹奏で、好感が持てます。
それはギリギリのクサイ芝居とでも申しましょうか、あと一歩でイモと言われかねない見事があります。
またタル・ファーロウは、カムバック直後でありながら、往年の太い音色でバリバリの早弾き! シダー・ウォルトンも控えめな助演が、かえって魅力です。
あぁ、ブル~ス!
A-3 This Is For Benny
ソニー・クリスのオリジナル曲で、これも本人が気に入っていたのでしょうか、1975年には再録バージョンが残されていますが、落ち着いたブルーな雰囲気のそれとは対照的に、こちらの演奏からは激した感情の迸りが感じられます。
人間、自分に素直に行動することは非常に難しいわけですが、このソニー・クリスの演奏を聞いていると、なおさらそれを感じてしまいます。
共演者ではシダー・ウォルトンが抜群ですねぇ~♪ 膨らみのあるコードの響きとピアノタッチの素晴らしさには、ちょっと感動させられます。
B-1 Sunny
黒人シンガーのボビー・ヘブが、1966年夏に大ヒツトさせた音楽史に残る名曲で、我国でもグループサウンズの多くのバンドが演目にしていましたし、カバーバージョンも膨大にあるという中で、ハードバップ解釈では、これが最高かと思います。
まずシダー・ウォルトンのイントロにワクワクさせられますし、ソニー・クリスのテーマ吹奏が熱くて、もう最高です! ポリリズムっぽいレニー・マクブラウンの変則8ビートが、これまたジャズっぽくて、グッときます♪
そしてアドリブも強烈です。なにしろソニー・クリスが自意識過剰(?)の熱血アルトサックスですからねぇ~♪ 聴くほどにギュ~っと心が鷲掴みにされるような「泣き」の連続です。ここではソニー・クリスのアクの強さが良い方向に働いたと思います。
シダー・ウォルトンも好演ですが、ここはとにかくソニー・クリスが全て! と断言致します。
B-2 Scrapple From The Apple
ソニー・クリスのスタイルの元となっている天才チャーリー・バーカーが書いたビバップ定番曲ですから、バンドのハッスルぶりも半端ではありません。
激烈なアップテンポながら、リズム隊のシャープなノリは抜群ですし、ソニー・クリスのアルトサックスからは、お得意の投げっ放しバックドロップのような、豪快なビバップフレーズが淀みなく流れ出します。
またタル・ファーロウが太竿の魅力というワイルドなギターソロ! ゴマカシが無い分だけ無骨な印象ですが、ちょっと真似出来ないストレートな物凄さには絶句させられます。
そして、ここでも絶好調なのがシダー・ウォルトンで、水を得た魚のようなイキの良いピアノには爽快感がいっぱい♪ このセッションの成功は、この人の働きが大きかったように思います。
クライマックスのソニー・クリス対タル・ファーロウの激闘にも感動してしまいますよ♪
B-3 Paris Blues
オーラスは耐えて忍んだ男の涙というような、スロ~なブルース大会です。
シダー・ウォルトンのイントロが見事に雰囲気を作ると、続けてタル・ファーロウが、ちょっとバランスの良くないアドリブに入りますが、それにしても、この人は好んで難しい指運の押え方のしているような気がしますねぇ。地味ながら凄いソロだと思います。もちろん伴奏でのコード弾きも最高に「味」です。
肝心のソニー・クリスは十八番の展開とあって、ケレン味たっぷり! このあたりが「クサイ」と言われるところなんでしょうが、好きな人にはたまらない、ホヤ貝のような演奏かもしれません。ちなみに私はホヤの塩辛が大好物♪
ということで、ジャズ喫茶ではB面が人気ありましたですね。実はこれが我国に入ってきたのが1968年頃らしく、もちろん当時も流行ったのでしょうが、時が流れ、1975年になってソニー・クリスが放った起死回生のヒット盤「サタディモーニング(Xanadu)」によって、再びジャズ喫茶を賑わせたのが真相かと思います。
つまり「サタディモーニング」にリクエストが殺到した店のマスターが、ほら、こんなのもあるんだよ、と鳴らしてくれたのが、このアルバムでしょう。
特に私の場合は、既に述べたように「Sunny」中毒者ですから、忽ちこのアルバムを入手しようとしましたが、当時は国内盤も出ていなくて、しかも外盤も見当たらず……。どうやら廃盤状態だったようです。
それゆえジャズ喫茶の人気盤として君臨したわけですが、現在はめでたくCD化もされていますから、どこでも気軽に聴いて熱くなれる傑作だと思います。ただし朝からは、ちょっとモタレるかもしません……。