午前中は物凄いどしゃぶりでした。一部の道路は水没していたほどです。
で、午後は雨上がりの蒸し暑さ……。こいつも、たまらん! シャツがグッショリになるほど汗、かきましたです。
それが意外に爽快だったのも、結果オーライですかねぇ。
ということで、本日は――
■In My Own Sweet Way / Woody Shaw (In + Out)
誰もがクロスオーバー&フュージョンに走っていた1970年代ジャズ界において、ひたすらに硬派な4ビートを守り通していたのが、ウディ・ショウという黒人トランペッターです。
そのキャリアは1960年代から認められており、常にハードな主流派ジャズを演奏していましたが、それが主流で無くなった1970年代には時代遅れの熱血漢として、ジャズ喫茶族に愛された存在でしょう。
ですから、世渡りも金儲けもヘタクソだったと思いますねぇ。このアルバムは1987年の欧州巡業からのライブ音源をCD化したワンホーン盤ですが、なんとリズム隊は現地調達のようです。
録音は1987年2月7&8日、メンバーはウディ・ショウ(tp) 以下、Fred Henke(p)、Neil Swainson(b)、Alex Deutsch(ds,per) となっています――
01 The Organ Grinder
ウディ・ショウのオリジナルですから、バリバリの新主流派ジャズ! つまりモード節にラテンビートまで絡ませたイントロから、痛快なテーマメロディまで、もうワクワクの展開です。
アドリブパートでは、いきなりベースソロが始って、いかにも欧州系らしいリズム隊のノリともどもに、抜群の導入部になっています。
そしてウディ・ショウのトランペットは張り切った音色と十八番のフレーズの乱れ打ち! ただし本国のリズム隊とは違和感があるんでしょうか、ややツッコミが足りない雰囲気が勿体無いところ……。
しかし続くピアノのアドリブパートに入ると、自分達だけのグルーヴが表出されてきて、唸ります。
02 In Your Own Sweet Way
作曲はデイブ・ブルーベック(p) ですが、トランペットではマイルス・デイビスの名演が残されていますから、ウディ・ショウも気合が入っているようです。
ただし基本姿勢は和みでしょう。あえて意識したミュートで吹奏するあたりに意地が感じられ、それでいて自然体の歌心が素晴らしいと思います。しかもほとんどテーマの変奏しかしていない潔さ!
緩やかにグイノリしていくリズム隊も、なかなかです。
03 The Dragon
アフリカ色の強い、如何にもモードジャズという響きが、ジャズ喫茶にはうってつけという演奏です。作曲はピアニストの Fred Henke ですが、全く分かっているですねぇ~♪ ウディ・ショウも気持ち良さそうに自分の世界に没頭しているようです。
04 Just A Ballad For Woody
タイトルどおりスローな演奏で、テーマメロディとアドリブには、どっかで聴いたようなフレーズがテンコ盛りです。あぁ、こういうのは和みますねぇ♪ というか、憎めません。
リズム隊は、ちょっと雰囲気に押された感じですが、後半の巻き返しは立派だと思います。
05 Sippin' At Bells
マイルス・デイビスが書いたビバップ丸出し曲で、テーマ部分からトランペットとベースのユニゾンが鮮やかです。じっくりと躍動的なドラムスも良い感じ♪
そしてアドリブパートは、もうウディ・ショウが本場のハードバップをたっぷりと聞かせて聴衆をKOするのです。それも闇雲に突っ走るのではなく、抑制と激情のバランスが実に最高なんですねぇ~♪ リズム隊のサポートも的確ですし、こういう落ち着きは臨時編成ゆえの事かもしれませんが、結果オーライだと思います。
06 Estate
これが素晴らしい演奏です!
曲は今や定番となったラテン系の和み曲ですが、ここでは正統派のボサノバジャズとして、暖かく爽快に演じられています。
まずブラシでボサノバのビートを敲く Alex Deutsch が快演です。そしてウディ・ショウのメロディ解釈と思わせぶりなテーマ吹奏が、たまりません。個人的には、このアルバムで一番好きな演奏です。ドラムスを聴いているだけで、ニンマリしてきます♪
またピアノが夢見心地のアドリブですから、本当に素敵ですねぇ。ラストテーマの最後まで、間然することの無い出来だと思います。
07 Joshua C.
オーラスは、少し重苦しいウディ・ショウのオリジナル曲ですが、ドラムスの軽快なリムショットが絶妙のアクセントになっていますから、疲れません。
それどころかジンワリと盛り上げて熱くなっていくバンド全体のグルーヴが、ウディ・ショウだけのジャズ世界を見事に聞かせてくれます。決して派手さは無いのですが、これがジャズ! 硬派のジャズです。
演奏はラストテーマに続き、短くバンドテーマが演奏され、メンバー紹介が行われますが、あんまりウケた拍手とは思えないのが???
ということで、ウディ・ショウの名演・名盤群の中にあっては、非情に地味で目立たないアルバムなんですが、「Estate」1曲で、愛聴盤になっています。
ご存知のように、ウディ・ショウは悲劇的な最期でしたし、実力を真っ当に評価されるにはイマイチ、時代が悪かったのかもしれません。しかし残された録音は、どれもが素晴らしく、ジャズ者には永久に愛される存在でしょう。
少なくとも、私は死ぬまで聴き続けます!