国産ですが、カセットデッキで往年の名器を中古で入手しました。
3ヘッドの完動品♪ 今夜は早速、鳴らしまくるぞっ!
と思惑が先行したら、仕事が縺れて……。
ということで、本日は痛快なライブ盤を――
■Solitude / Wes Montgomery (BYG / 東宝)
ウェス・モンゴメリーはジャズ史上でも永遠不滅の超実力派のギタリストですが、一般的な人気も高く、それは晩年のイージーリスニング路線のアルバムが大ヒットした事によります。
もちろんそれは、今日でも全く古びていない完成度の高さが魅力ですが、さて、イノセントなジャズファンにしてみれば、やはりバリバリにアドリブ弾きまくりのウェス・モンゴメリーが愛しいのです。
残念ながら、ウェス・モンゴメリーは人気絶頂時に早世していますから、ますますそういう想いを強くするジャズ者の前に、突如として現れたのが、本日のアルバムです。
内容はフランス巡業時のライブ音源で、しかも強気な4ビートが主体なんですから、たまりません。ネタ元は放送音源らしいのですが、発売された1973年には日本独自の2枚組LPでしたから、忽ち話題騒然! しかも演奏が素晴らしく強烈でした!
録音は1966年3月27日、パリのシャンゼリゼ劇場でのライブセッションで、メンバーはウェス・モンゴメリー(g)、ハロルド・メイバーン(p)、アーサー・ハーパー(b)、ジミー・ラブレイス(ds) という巡業カルテットに、1曲だけジョニー・グリフィン(ts) がゲスト参加しています。
ちなみに曲表記は、発売時に???というものがありましたので、一応、訂正したものも入れておきます――
A-1 4 On 6
初っ端から、いきなりウェス・モンゴメリーの十八番です。一節には「Summertime」からヒントを得て書かれたという、ウェス・モンゴメリーのオリジナルですから、ここでもアップテンポでド迫力の演奏が展開されます。
もちろんそれは、リズミックなテーマ提示からアドリブパートに入ると、単音弾き~オクターブ奏法~コード弾きの炸裂という、快楽地獄のフルコース♪ もう、何も言う事が出来ません。
またハロルド・メイバーンが何時もながらの音符過多スタイルで疾走すれば、そのバックでテンションの高いコードリフを付けていくという、最高のウェス・モンゴメリーが堪能出来るのでした。
A-2 Wes Rhythm ( = Twisted Blues)
これもウェス・モンゴメリーのオリジナル曲で、バンド全員がジワジワと盛り上げていくブルース感覚が見事ですし、早いテンポでありながら乱れないリズムアプローチの妙が楽しめます。
リズム隊もウェス・モンゴメリーが多用するキメを鋭く察しての好サポートですから、オクターブ奏法~コード弾きのコンビネーションはスリル満点! あぁ、こんなにギターが弾けたら、楽しいだろうなぁ~~~♪ 尽きることの無いグルーヴは、もう最高です!
B-1 Impressions
ジョン・コルトレーンの激烈演奏で永遠不滅になっているモードジャズの定番ですから、これはウェス・モンゴメリーにとっても力が入ったのでしょう、とにかく物凄い出来です!
それはスピード感溢れるテーマ部分から流れるように突入するアドリブパートの強烈さ! 単音弾きのアタックの強さは、とても真似出来ない高みにありますし、コード弾きとオクターブ奏法の境目が分からないほどの迫力は、ただただ、聴き入るのみの世界です。
またハロルド・メイバーンは、もちろんスタイルが似ているマッコイ・タイナーに負けじと大ハッスル! ドラムスのジミー・ラブレイスも必至の追走で好感が持てます。
B-2 To When
これはハロルド・メイバーンのオリジナルで、なかなか劇的なテーマがカッコイイです♪ しかも演奏がアップテンポながら、けっこうしぶとい仕掛けがあったりして、油断なりません。
アドリブパートでは、まずウェス・モンゴメリーが白熱の単音弾き! この人の音選びは、こういう純ジャズ曲でも独自の歌心が消えないところに流石の輝きがあると思います。なんというか、素朴な迫力があるんですねぇ~♪
もちろん後半では、オクターブ奏法でバンドが一丸となった強烈なキメとノリが展開されるのでした。
C-1 Mr.Walker ( = Jingles)
これもウェス・モンゴメリーが書いた、マイナー調のグルーヴィな名曲ですが、ここでは、またまたアップテンポでガンガンにブッ飛ばしています。
あぁ、この単音弾きの小気味良さとリズム感! バックのリズム隊が完全に引張られている雰囲気です。音色そのものも、太いですからねぇ♪ オクターブ奏法に展開されていく流れも自然で、痛快です!
私にはコピー不可能な世界なので、エアギター、やっちゃいますよっ!
C-2 To Django ( = The Girl Next Door)
アップテンポの激烈演奏が続いて、ここでようやく和みの一時♪
ウェス・モンゴメリーが独り爪弾くのはスダンダードの名曲ですから、その優しい歌心とテクニックの素晴らしさが堪能出来ます。
ご存知のようにウェス・モンゴメリーはピックを使わずに親指主体に弦を弾く奏法なので、弦を撫でるようなところや微妙なチョーキングとビブラートの妙技が、しっかりと確認出来ます。
リズム隊が入って来る中盤からは、得意のオクターブ奏法♪ これも全く間然することの無い演奏で、とてもアドリブとは思え無い歌心に満ちたフレーズが止まりません! このあたりは、後年のイージー・リスニング路線が間違っていない証明かと思います。これも最高です♪
D-1 Here's That Rainy Day
これまた、和みのボサノバです♪
まずジミー・ラブレイスのリムショットが、実に良いですねぇ~♪
そしてウェス・モンゴメリーはオクターブ奏法全開で美メロアドリブ♪ もう、あたりは桃源郷です♪ 本当に何時までも聴いていたいです。
リズム隊のサポートも力強く、甘さに流れないあたりは、イノセントなジャズファンも満足でしょう。
D-2 Round About Midnight
オーラスは説明不要のモダンジャズ名曲で、しかも特別ゲストでジョニー・グリフィンが加わるのですから、たまりません。
最初から真夜中の雰囲気が満点のテーマ、その真髄を表現していくウェス・モンゴメリー以下、バンドの面々の真摯なジャズ魂は素晴らしい限りです。
そして、お待ちかねのジョニー・グリフィンがワンフレーズ吹いたところで、「ベィビ~~」と合の手を入れると、バンドメンバーが思わず笑ってしまうという和みが、如何にもモダンジャズ全盛期の名場面です。
ここは本当に好きですよ、私は♪
で、そのジョニー・グリフィンが、ここでは情熱的に盛り上げていくのですから、流石です! サブトーン気味の音色でありながら、芯のしっかりしたテナーサックスの魅力が存分に味わえるのでした。
ということで、素晴らしい名演ばっかりなんですが、初出当時のLPは音質がモコモコしていて、それが難点でした。
しかしジャズ喫茶を中心に当時は連日、鳴っていたようですね。アルバムとしての売上げも、かなり良かったと言われています。
で、時が流れた現在では、リマスターも良好なCDとなり、なんとボーナストラック3曲がついて復刻されています。
全ジャズファン必聴の名演ライブ盤!
これは断言させていただきます。