OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

これも本家だ!

2007-06-26 18:11:56 | Weblog

全く仕事で泣き言をたれる奴が多くて、情けなくなった日でした。世の中、厳しいのよっ! と言うのは簡単なんですが、言って分かるには時間がかかるんですねぇ……。実際、私も、そうでしたから……。

ということで、憂さばらしに痛快なこれを――

Giant Steps / Tommy Flanagan (Enja)

トミー・フラナガンほどの人気ピアニストになると、けっこう「あざとい」企画も押しつけられたと思うのですが、それだって名盤請負人として、多くのセッションで結果を出してきた勲章だと思います。

中でも一番期待されるのが、過去の名演よ、もう一度! でしょう。このアルバムは、その最右翼に位置する1枚で、なにせ、あの1959年に作られた歴史的名盤「ジャイアント・ステップス / ジョン・コルトレーン(Atlantic)」の思い出追求セッションですから! ジャケットには小さく「in Memory of John Coltrane」とサブタイトルを入れているほどです。つまり前述のアルバムでリズム隊の要を務めていたトミー・フラナガンに、その中の演目を再び弾いてもらおうという目論みです。

しかし出来上がったものは、流石ですねぇ~♪

録音は1982年2月17~18日、メンバーはトミー・フラナガン(p)、ジョージ・ムラーツ(b)、アル・フォスター(ds) という、硬軟併せ持ったピアノトリオです――

A-1 Mr. P.C.
 件のアルバムの中でも一際人気が高いマイナーブルースで、ジョン・コルトレーンが盟友のベーシストだったポール・チェンバースに捧げて書いたオリジナルというのは、言わずもがなでしょう。
 ここでは持ち前の「トミフラ節」に加えて、何時もよりも突っ込んだ力強さが良く出ていますが、それはビシビシに煽るドラムス&ベースの硬派な姿勢によるものかと思います。
 特にジョージ・ムラーツは唯我独尊のバッキングが、まず良いですねぇ。ただしアドリブソロは、もっと出来るはず? という感じなのが勿体無い……。
 またアル・フォスターは、シンプルなシンバルとドンスカのドラムソロが良い塩梅♪ そしてラストテーマの最後の最後で、グワァ~ンと恐さを垣間見せるトミー・フラナガンが、やっぱり流石の貫禄で、ここが一番、爽快です。

A-2 Central Park west
 これだけは「ジャイアント・ステップス」では無く、同じレーベルから発売された「コルトレーン・サウンド」に収録されていた曲です。そしてオリジナルのピアニストはマッコイ・タイナーだったんですが、なかなかにジェントルな味わい魅力的なテーマメロディでしたから、もしかするとトミー・フラナガン自らが希望して、ここに演奏されたものかもしれません。
 実際、綺麗で優しさの漂うピアノタッチを聴かせるトミー・フラナガンは、歌心も申し分なく、一瞬、ビル・エバンス風のアプローチになる瞬間までもが楽しめます。
 皮肉にも、このアルバムの中では一番、「らしい」演奏だと思います。

A-3 Syeeda's Song Flute
 リズム隊の動きとキメが魅力だったオリジナルの演奏に対し、そのリズム隊だけの演奏では、やはりテーマの解釈に物足りなさが残ります。
 しかしアドリブパートは快調そのもので、モダンジャズの真髄を抉り出す瞬間が、何度も訪れます。特にアル・フォスターのドンドン響くタムやバスドラが、たまりません。

B-1 Cousin Mary
 極めて淡々とフレーズを続けていくトミー・フラナガンのクールな姿勢に熱くなる演奏です。意識的に黒いフィーリングを押し留めているあたりが、モードに対する意識なんでしょうか……?
 全篇に「トミフラ節」がいっぱいなんですが、途中でセロニアス・モンクみたいになったりするのが、憎めません。

B-2 Naima
 これもオリジナルではピアニストがウィントン・ケリーでしたが、静謐な人気曲なので、ぜひともトミー・フラナガンで聴いてみたいと思っていたファンには、嬉しいプレゼントでしょう。
 で、素直に思わせぶりを発揮するトミー・フラナガン! あまりにも期待通りなんで、拍子抜けするほどです。でも、やっぱり良いんですねぇ~~~♪ 罪作りだなぁ。

B-3 Giant Steps
 これは説明不要でしょう。あまりの凄さにリアルタイムでは、ほとんどカバーされていなかったはずですが、ここに本家本元という決定版のカバーバージョンが出たわけです。
 トミー・フラナガンはオリジナルよりも一層イケイケの姿勢を鮮明にしていますが、それは決して荒っぽいものではありません。寧ろ慎重に弾いている感じです。
 しかし逆に突っこんでくるベースとか、些か潔く無いドラムスが結果オーライのスパイスになっているという、幸せな演奏かもしれません。

ということで、今回はやや辛口の御紹介になった感があります。それはやっぱり企画がミエミエというか、私自身が当時から納得していなかった所為でしょう。

しかし中身は痛快な演奏なんで、頻繁にターンテーブルに乗せたのも、事実でした。

こういう自己矛盾もジャズ者の哀しさかもしれません。

コメント (2)
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