松美の言絵(いえ)

私は誤解されるのが好きだ。言い訳する手間が省けるから。

内村航平を、尊敬する。

2020-12-14 07:46:54 | 日記・エッセイ・コラム
 体操種目別決勝の鉄棒は、孤独との戦いだった。中継が入った12時過ぎ、内村のイメージトレーニングの様子が映った。すぐに始まるらしい。

 内村のために用意されたような舞台だったが、しょっぱなに演技するための集中は、難しそうだった。このために予選では、各種目を一通り触ってから試技に臨んだという。決勝も、その前に平行棒で体を慣らし、宙返りをしてからの演技だった。


 名前を呼ばれて、準備に入る。準備で実際にやったワザは、ブレットシュナイダーだけだった。それも外して、足から落ちた。失敗したのだと思った。
 そうじゃなかった。鉄棒をつかんで、自分の体重を支えるには、事前の準備運動としては、体に負担が掛かり過ぎるのだそうだ。それでわざと外す。それでも、足から落ちた時の衝撃は、かなりのものだと思う。


 ブレットシュナイダーという技は、しっかり見ると空中で逆さまになりながらも、ちゃんと鉄棒を見る時間的余裕がある。ひねりが加わっているから、鉄棒が斜めに回転して見えるはずだ。その鉄棒をすり抜けるようにして、両手を伸ばす。

 あれを成功させて、同じく鉄棒の上で回転する離れ業をもう2回。それで着地を一歩も動かず決めるのだから、素晴らしい集中力だ。繰り返し練習して体が覚えたからこそ、予選の時の「ゾーンに入る」ことも、30を超えてなお体験できるのだろう。あれだけのことをやったら、観客を煽って拍手を強要するのも許す。反対に個人総合で勝った萱(かや)の「雄叫び」は、まずかったな。


 今は、降り技としてだけでなく、各種目に使われる「ムーンサルト」。これの生みの親は、塚原光男だ。日本語で「月面宙返り」降り。1972年の発明だ。これのドキュメントも見たことがある。その3年前に、アポロ11号が月面に降り立った。そして新技「新月面」が現れる。


 鉄棒の系譜は、遠藤幸雄と小野喬(たかし)にさかのぼると思いませんか。二人共、秋田県出身です。遠藤は能代市、小野は秋田市出身。「鬼に金棒、、小野に鉄棒」というフレーズも生まれました。秋田が体操王国と呼ばれた時代も、あったんです。

 鉄棒一本に絞った内村を支持します。5種目こなした後に、あの演技をやるなんて無理です。

 無条件に、自分に出来ないことをやる人間を、尊敬します。敬称略。
コメント
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