吉田君と八戸学院大・正村監督との出会いは、今となれば奇跡のような巡り合わせだった。もう記事になっている話だが、嶋崎前監督の送別会にさかのぼる。
その日、欠席した正村監督が後日秋田に来た。その時、気掛かりだった吉田君を見てもらった。速球はいいけど、カーブが狙われて打たれる。それを何とかしたい。そこでスライダーを習得させた。そして投球フォームが気になったので、下半身を使った無駄のないフォームに変えた。
正村監督は毎週、週末に八戸から秋田まで来て指導してくれた。大学リーグの大事な決勝の前も足を運んでくれた。
プロ入りを決めた事で嶋崎さんは複雑な心境でしょうね。こんなに騒がれなければ、正村監督のもとへ行っていたに違いない。
講演でもう一つ、面白かったのは医者との駆け引き。追分に吉成医院というのがある。ここに毎度毎度お世話になった。しょっちゅう担ぎ込まれるので、先生があきれてしまう。一体どういう練習をしているんだ。こうなる前に連れて来い。「生徒は甲子園に行きたいんです(秋田弁で)」
一度、深刻な状態の生徒がいた。生命が危ない状態になり、家族・親戚を呼んだ。あの時もしも最悪の状態になっていたら、その後の金農は無く、吉田君の成長も無かったかも知れない。
嶋崎さんは、医者は楽でいいなあと冗談を言う。手に負えない状態なら、救急車で大病院へ回す。手に負える生徒は、丁寧にレントゲンまで取る。レントゲンは、関係ないだろ。
地元でしゃべっているんだから、当然吉成さんまで聞こえていく心配がある。それでも大丈夫な、二人の関係なんだろう。