黄昏どきを愉しむ

傘寿を過ぎた田舎爺さん 「脳」の体操に挑戦中!
まだまだ若くありたいと「老い」を楽しんでま~す

ゴッホは、ほんとうにピストル自殺をしたのか? NO.10

2021-06-29 | 日記
 3人とペータースとの対話は4時間に及んだ。
        
     料理は手つかずのまますっかり冷めてしまった。

「しかし、とんでもない話を聞かされたもんだな。
 あのリボルバーが、ファン・ゴッホじゃなくて、ゴーギャン
 関係しているものだったとは・・・」
            

                             
                                  (こんな感じかな?…)

ポプラ並木の乾いた路上に広がる緑陰の中を歩きながら…つぶやいた。

ゴッホも描いているよ。
  「秋のポプラ並木」
        
           
           
しばらく行くと並木が途絶えて、ぱっと視界が開けた。
小径は麦畑の間を通ってその先にある森へと続いている。

ここでゴッホがこの地(オーヴェール)で「麦畑」を多く描いています。
 その中から少しご紹介しますね。
         

         

           

         
     
       
 三人は立ち止まって、並木の出口にすらりと立っている一本の樹木へと
近寄って行った。

「この樹の根元を堀り返したら、あのリボルバーが出てきたってわけか…
 錆びつていたとはいえ、物騒な話だな」

「さらにリボルバーのありかを教えたとかいう、ゴーギャンの孫『X』
 実在の人物だったとして…なぜ使い物にならない拳銃がこんなところに
 埋められているのを知っていたんですかね

冴は、ペータースの話を反芻した。
サラが親しくしていた「X」は、病に倒れて療養中だったが、自分は
もう長くないからと、あるときサラに「四つ秘密」を打ち明けた。

一つ。 自分の祖父は、ポール・ゴーギャンである。
二つ。 ゴーギャンがその妻=「X」の祖母にリボルバーを遺した。
    その祖母はその娘=「X」の母にそれを遺し、母は「X」にまたそれを遺した。
    つまり、リボルバーは三代の母娘の手を渡ってきた。
三つ。 リボルバーはゴッホにまつわる貴重なものである。
四つ。 祖母から伝えられてきた「誰も知らない歴史上の真実」それを長い間多くの
    人々に信じられてきた「史実」を変えてしまうかもしれないものであり、
    たったひとりだけに口伝されなければならない。

  「四つの秘密」を告白したうえで、「X」はリボルバーのありかをサラに教えた。
 そして、リボルバーをどうするか。「真実」を誰に口伝するかは委ねる。ーーー
 と、言い遺して息を引き取った。

冴は、この四つの秘密を即座に信用するわけにはいかない。
史実とは、異なる点がいくつかあるからだ。

「X」がゴーギャンと何らかの関係を持っている~という仮説を前提に
して考察してみると、少なくとも二つの矛盾が浮かび上がってくる。

一つ。 妻のメットはゴーギャンから譲り受けた作品や美術コレクション
    のほんとんどを売却しており、作品以外のものーを
    「受け継いだ」というのは考えにくい。

二つ。 5人の子供がいたが、たった一人の女の子は早逝している。
     つまり、「X]が言う、「祖母から娘」口伝されたという、
     その娘は存在しない。

 また、「X」とサラがどんな関係かは分からないが、まるで、一子相伝
のような「たったひとりのみに口伝すべし」という「真実」を、
他人のサラになぜ伝える気になったのか‥‥」

    サラ・ジラール。 いったい、彼女は何者なのか?

 余談ですが・・・
 ゴーギャンがタヒチに行っているときに、娘の訃報を受けた…
 絶望のあまりヒ素をあおって自殺を図ったが未遂に終わる。
  その直前に、あの傑作

   <我々はどこから来たのか? 我々は何者なのか?
       我々はどこへ行くのか?>を


 
 人生のどん底に落ちた状態で描き上げたことはあまりにも有名だ。


 サラのことについて…
ペータース曰く、サラは熱心なゴッホの信望者である。
画家としてゴッホの作品を追いかけ続け、オーヴェールという地に
こだわって創作を続けてきた。
この地に、ゴッホの作品が一点も残されていない~
そのことを嘆いていた。
 想像するに、「ゴッホのオーヴェール時代の作品を購入して、
彼が引き取った部屋の壁に展示する」というペータースの悲願を
最初に聞かされたとき、
サラはすぐに協力を申し出た。
自分は独身、自分に万一のことがあれば、所有しているコレクション、
自分の作品を売却してそのすべてを「スティチュート・ファン・ゴッホ」に
寄贈する。
     彼女の申し出は具体的で誠実なものだった。

    ペータースはこの提案をありがたく受け入れた。

「ゴーギャンのリボルバー」と呼ばれていた
それを近々オークションハウスに持ち込むと、サラから聞かされていた。

 だから、こうして冴からの連絡があったとき、ついにその時が来た
のだと理解した。
            
 
 まさか、「ゴッホが自殺に使ったピストルだ」と言って持ち込むとは、
想像もしなかった…とペータース。

 三人が「ラブ―亭」を後にするとき、見送りがてら、~


       
 
ペータースは
「オークションの期日が決まったら教えてください。
 私も会場へ馳せ参じます。
  あのリボルバーが史上最高価格で落札される瞬間を、
 ぜひともこの目で見たいので。」 

「実際どうなんだ、
 あのリボルバーは、うちのオークションテーブルに載せたら、
 ファン・ゴッホのタブロー 一点を変えるくらいの高値がつくものかね?」
           (*「タブロー」=絵画において完成作品を指す言葉。)

 ギローに向かって訊いた~   
  冴は、ため息をついて言った    「まさか、無理ですよ」
 
その通りだ。
もし、サラが持ち込んだのが錆びついたリボルバーなどでなく、
ポール・ゴーギャンの作品だったら。
ゴッホのオーヴェール時代に匹敵する金額で落札され、オークション会場を賑わすことだろう。・・・・妄想ばかりたくましくしてもどうにもならない。
 サラから預かっているのは、謎めくばかりの錆びついたリボルバーなのだから。

「後学のために教えてほしいんだが~
  、君が研究しているファン・ゴッホとゴーギャンの関係っていうのは、
  単なる友人同士だったのか、それとも…
  ほんとうのところ、どういうものだったんだ?」 と、ギローが訊いてきた。
   
      

       

 、「一言では言えませんが、特殊な関係だったと思います」

「ゴッホとゴーギャン」と「対」にされることも多いふたりの画家は、
 生まれも、生い立ちも、生き方も、性格も、絵に対する考え方も、
 作品そのものも、何もかもが違っていた。

    それなのに、二人はどこかしら似通っているところがある。
 
            なぜなのか~。

それでは、いよいよ、「ポール・ゴーギャン」について少し時間をかけて

     その正体(史実に沿って)を覗いてみましょう~。

 
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