豪華絢爛、疾風怒濤とくれば、大作「レッドクリフ」のジョン・ウー監督が放つ、最新作だ。
この作品は、中国武術の剣(つるぎ)の舞を描いて、出色の面白さだ。
様々な、究極の秘技を操る刺客たち・・・。
その決戦のさなかに、ぐいぐい引き込まれる。
美しい孤高の女剣士を待ち受ける、非情な宿命が愛に舞い、壮絶きわまりない武侠アクションを繰り広げる。
お互いが、秘められた過去を持つ、男と女の愛と葛藤のドラマである。
壮大な神秘に彩られたこの物語は、武術の奥義を究めたインドの王子、達磨大師をめぐる‘伝説’から幕を開ける。
それから数百年後、明朝時代の中国・・・。
謎の暗殺組織<黒石>が、ミイラ化した達磨の遺体を手に入れようと、暗躍していた。
その遺体を得たものは、絶対的なパワーの恩恵に浴し、中国武術界の覇権を握るとされていた。
ところが、<黒石>の最強の女刺客細雨(ミシェル・ヨー)が、忌まわしい過去と決別するために、組織を裏切り、達磨の遺体とともに失踪した。
やがて、細雨は曾静という新しい名前を名乗り、都の片隅で出会った、心優しい配達人の阿生(チョン・ウソン)と結ばれる。
しかし、非情な宿命が、殺しの過去を捨て去った女性の、慎ましい幸福さえも容赦なく打ち砕く。
そんな彼女に、<黒石>の凄腕の刺客たちが、ひたひたと迫って来ていたのだ。
孤高の女刺客は、人生のすべてをかけ、最強の暗殺組織との壮絶な最終決戦に、その身を投じていくのだった・・・。
中国・香港・台湾合作映画、ジョン・ウー監督の「レイン・オブ・アサシン」は、ドラマの迫力と面白さについては、もう文句なしだ。
美貌と演技力を兼ね備えた、アクション女優ミシェル・ヨーが素晴らしい。
冷酷な、女刺客の過去を封印して生きようとする曾静は、凛々しさ、勇猛さに加えて、揺れる女心の哀しみまで、実に繊細に表現する。
魅力的なヒロイン像だ。
相手役は、韓国の正統派二枚目俳優のチョン・ウソンだが、愚直で不器用な配達人を演じながら、ドラマ後半に入ってまさかの‘変身’を披露するという、阿生の驚くべき二面性を好演している。
ただ、よほど注意力を集中していないと、字幕に追われているうちに、画面がどんどん変わっていってしまう速さだ。
しかも、スローな映像と、スピード感あふれるアクションシーンを、見事にコラボレートさせている。
とりわけ、剣(剣)の舞は必見だ。
外国映画は、字幕に追われていると、訳が分からなくなってしまうことがある。
あまりなじみのない、登場人物の名前まで混乱してしまうものだ。
このドラマの最後のからくりは、絶対に見逃してはならない、なかなかの仕掛けだ。
ミシェル・ヨーが舞えば、チョン・ウソンが覚醒する。
このドラマの中には、冒険、復讐、恋愛、伝説、義理、人情、ユーモアといった、活劇映画の精神がいっぱいに詰め込まれているから、観ていて楽しい。
過去を持つ男と女の、愛と葛藤のドラマが、中国、韓国、台湾、香港のトップスターの競演で、まずは期待に応えてくれる作品に仕上がっている。
魅惑的なスリルとロマンに満ちた、武侠大作といえる。
この映画、首都圏、それも神奈川県では、上映館が横浜で一館だけというのは、またどうしたものだろうか。
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私なんかはこういう映画大好きなんですが。大画面を活かした縦横無尽のアクション!そしてどんでん返し(どんなのかは判りませんけど-笑)!
こういう映画を気楽に見に行けないのが寂しい限りです。
ちょっと、「LOVERS」なんか思い出しました。
娯楽映画として、申し分ありません。はい。