甘いマスクのキザな結婚詐欺師が、次から次と女性を騙す話だ。
様々な思惑が絡む結婚をめぐって、男も女も本性と本音を露わにする。
直木賞作家、井上荒野の原作をもとに、西谷真一監督が映画化した。
狡くて、悪質で、嘘つきだが、どこか愛おしい。
女性を虜にする男とは、どんな男であろうか。
「結婚しよう」
男はいつも、この甘い一言でプロポーズを決める。
男は古海健児(ディーン・フジオカ)だ。
その端正な容姿、知的な会話、憂いある横顔や瞳を武器に、相棒のるり子(柊子)の手引きで、結婚をちらつかせては女性たちから金を巻き上げる日々を送っている。
そんな古海には妻初音(貫地谷しほり)がいた。
家具店の店員麻美(中村映里子)は結婚に幸せを求めていたし、市役所に勤務する被災者の鳩子(安藤玉恵)は探偵に相談したことから、被害者らが続々と結束する。
彼女たちは姿を消した古海を追跡し始め、謎めいた女性泰江(満田久子)まで現われて・・・。
主演のディーン・フジオカは、NHK連続テレビ小説「あさが来た」の実業家役で知られるが、この作品では一見優しい「紳士」風を装っていて、結婚を夢見る女性たちから金も希望も奪い取る悪役に挑戦している。
西谷監督は、「あさが来た」では演出スタッフとして参加していてディーン・フジオカと知り合った。
その後、「喧騒の街、静かな海」(2016年)というスペシャルドラマで一緒になり、このときから彼を主役にして映画を撮りたいと考えていたそうだ。
西谷監督は原作を探している中で、男女の孤独と哀しみに裏打ちされた愛を描いた井上荒野の「結婚」に出会った。
原作は、古海に騙される女性たちひとりひとりの視点で描かれたオムニバスで、この映画では古海をドラマの中心に据えて、彼に女性たちが翻弄されていく姿をドキュメンタリータッチを交えて描いている。
主人公古海という男は、何故結婚詐欺師になったのか。
どこまで嘘を貫き通し、女たちの想像も願望も鮮やかに切って捨てる。
結婚をめぐる女と男の虚々実々のバトルは、悲しくも可笑しいコメディの様相を見せる。
ここでは細かい説明など不要だ。
この西谷真一監督の作品「結婚」は、筋書きとしては新しいものはないが、ちょっぴり(?)きりりとしまった悪さがよく効いた娯楽映画になっている。
これはこれでいいではないか。
「結婚しよう」
それが、たとえ彼の‘別れの’言葉だったとしても・・・。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)
次回は日本映画「海辺の生と死」を取り上げます。
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金品を巻き上げるからよくありませんよね。
近頃は、女の結婚詐欺師もいるようですから、油断禁物です。
なかなか巧妙な手口で、しかも立派な殿方が、ころりとやられるケースが多いのだそうですよ。
くれぐれもお気を付けになってください。
ほんと、くれぐれもです。はい。
なぜに結婚が詐欺として成立するのか・・・。