故あって、しばらく映画からもパソコンからも遠ざかっていました。
久しぶりです。
秋も深まりました。
これからも、いつもマイペースですのでどうぞよろしくお願いいたします。
今回はフランス映画です。
イタリア人作家、ミレーネ・アグスのベストセラー小説「祖母の手帖」の設定を1950年代に置き換えて、フランス南部を舞台に、17年に及ぶひとりの女性の自由への希求と理想の愛の行方を、ストイックかつ官能的に見つめた問題作である。
本編は「愛と悲しみボレロ」(1981年)、「ヴァンドーム広場」(1998年)などの作品で知られ、女優としても活躍中のニコール・ガルシア監督が映画化した。
愛の真実を求めるとき、女の愛は狂気の果てに結ばれるのか。
ヒロイン役のマリオン・コティヤールがドラマ全般を牽引する。
「エディット・ピアフ 愛の讃歌」(2017年)で、アカデミー賞主演女優賞など数多くの賞に輝いた知る人ぞ知る名女優だ。
この作品は、ときに幻想性もはらんだ多様な愛の本質に迫ろうとする力作だ。
フランス、プロヴァンス地方の小さな村で暮らすガブリエル(マリオン・コティヤール)は、教師として働く青年への恋に破れ、両親に言われるがままに、寡黙で真面目なスペイン人労働者のジョゼ(アレックス・ブレンデミュール)と結婚する。
彼女は流産し、それをきっかけに腎臓結石と診断され、治療のためアルプスのふもとの療養地に向かった。
そこで、温泉療法を始めるうち、戦争帰還兵のソヴァージュ(ルイ・ガレル)と出会い、運命を感じるのだった。
二人は恋に落ち、そして・・・。
運命の愛などとよく言うが、愛を激しく求める求めるヒロインを、マリオンがときに危うさともろさを感じさせる絶妙の演技を見せる。
実に説得力がある。
いつもながらの、1975年生まれのこの女優の演技は特筆ものだ。
こうした究極の愛の形に、でも現代人は観ていても共感できるものだろうか。少なからず疑問も感じる。
個人個人の恋愛観や人生観が試される一作だ。
相手役を務める二人の男優も悪くない。
死の影をまとったかのような美青年役のルイ・ガレル、辛抱強い夫役のアレックス・ブレンデミュールともどもにいい味を出している。
このフランス映画「愛を綴る女」は、ストイックで官能的な愛を見つめた物語だ。
総じて実に寡黙で静かなラブストーリーだ。静かすぎて退屈なほどでもある。
しかしこの退屈が、人間の心を狂わせるのだ。
本来愛というのは、愛し愛されたいというシンプルな欲望に過ぎない。
ニコール・ガルシア監督の大胆な設定が、功を奏している気がする。
愛の表現、その揺らぎまでもたおやかな演出に徹し、緻密で美しいラブストーリーとして仕上げている。
小品ながら、男女三人の行く末から目が離せない作品だ。
マリオン・コティヤールが上手いことを言っている。
「人は、自分自身でいることを周りから否定され続けると、気が狂ってしまいかねない。」
けだし名言である。
[JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点)
とても回復したとは言えませんが・・・。
恥ずかしい限りです。