変わった作品を観た、というより、観てしまった(!?)と言った方がいいか。
筒井康隆のSF小説については、これまでも幾度か映画化されている。
これは、彼の作家生活50周年記念作品だそうだ。
人の心を読むことができる未知能力者、超能力者のことをテレパスと呼ぶらしい。
ここでは、そのテレパスであるヒロイン・火田七瀬の心の中に宿るトラウマと、彼女の生きざまとその謎が明かされる。
小中和哉監督作品だ。
七瀬(芦名星)は、同じテレパスの7歳の少年ノリオ(今井悠貴)と、テレキネシス(念動力)を持つ黒人青年ヘンリー(ダンテ・カーヴァー)と3人で、北海道の湖畔に暮らしている。
ある日、マカオの旅からの帰り道、現地で知り合った瑠璃(前田愛)とともに、七瀬は何者かに狙撃される。
追ってから逃れた七瀬は、かつて列車で出会った、予知能力を持つ了(田中圭)から危険が迫っていることを促される。
七瀬は、瑠璃の夜遊びに付き合って悪酔いし、男たちの欲望の餌食になりかけるが、その窮地を救ってくれたのも瑠璃だった。
だが、ホテルに戻った二人の前に、突然敵の狙撃者が現れ、瑠璃は七瀬の身代わりとなって、射殺された。
意識の流れが過剰な瑠璃のオーラを、狙撃者は能力者のそれと誤認してしまったのだった。
七瀬は、組織の特殊部隊に追いつめられ、タイムトラベラーの藤子(佐藤江梨子)に助けを求め、過去へ連れ戻してもらい、生き返った瑠璃に別れを告げる。
そして、敵に立ち向かう決意を胸に、ノリオとヘンリーの待つ北海道へと向かった・・・。
主演の芦名星は、「シルク」で好印象だったので期待したが、この作品での好演もまあまあだったのではないか。。
七瀬たちは、彼らを抹殺しようとする‘国家’と闘うわけだ。
タイムトラベラーとか並行世界とか、過去へさかのぼって人を救うとか、もとの世界に生きる仲間とか、かなりひねった無理な理屈と、あわただしい場面転換、紋切り型のセリフと相まって、この異常な荒唐無稽を描くことで、作品は成功しているといえるのだろうか。
大いに疑問がある。
思念といい、念動力といい、特殊メイク、特殊撮影、突然飛び込んでくる音楽、何が起こるかわからないカットの連続と・・・、観ているほうは面食らうばかりだ。
ヒロイン自身が、藤子の力によって過去へとさかのぼったり、新たな未来を創るために闘おうとするめまぐるしい展開だ。
小中和哉監督の作品「七瀬ふたたび」は超能力SF映画だが、まだまだ未成熟で、お子様ランチの域を出ない。
(これ、あまり適切な表現ではないかも知れません。ご容赦を・・・)
ただ退屈と疲労だけは、たっぷりと味わせていただきました。
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「家族八景」、「エディプスの恋人」に続くテレパス七瀬シリーズの三作目。やっぱり今の目で見ると厳しいのかも・・・。
お疲れさまでした。私もこの秋、映画を見に行きましたが、感想は控えておきます。
何しろテレビシリーズの完結編の上、アニメなんで・・・(笑)。
その3作目といっても、前の作品は存じませんので・・・。
無理な話についていくのは、難儀なことでして…。いや、いや。(苦笑)