束の間の光の後に深い闇が訪れる。
愛を謳って、花も実もあるラブストーリーの誕生だ。
世界42カ国以上で話題となったベストセラー、M・Lステッドマンの「海を照らす光」を原作に、デレク・シアンフランス監督が映画化した。
人間に光と闇を照らす孤島の灯台を背景に、微妙な人間心理の綾を鮮やかに手際よく織り込みながら、落ち着きのある冴えた語り口で、味わい深い心にしみるような作品を綴っていく。
愛は痛みを伴うものだ。
子を失った産みの母、罪悪感に苦しむ夫、子を引き離される育ての母・・・、罪と赦しの間でそれぞれの感情は引き裂かれる。
戦争で心に傷を負い、トム(マイケル・ファスベンダー)は孤島の灯台守となった。
彼は岬の町の娘イザベル(アリシア・ヴィキャンデル)と結婚し、穏やかな日々を送るが、度重なる流産という悲劇が二人を見舞う。
その頃、一艘のボートが島に流れ着く。
ボートには死んだ男と無事な赤子が・・・。
トムとイザベルは、赤子を自分たちの娘として育て始める。
…しかし二年後、娘が生きていることを知った実の母親ハナ(レイチェル・ワイズ)が現われて・・・。
イザベルは母になりたかった。
罪と知りながらも、妻の願いを聞き入れたトムは、やがて心の呵責に耐えられなくなる。
男女の恋愛劇は、子供をめぐる罪と赦しのドラマとなって、人間として深い結びつきが孤島の風光の中に描かれる。
水平線に沈む太陽、灯台の灯り、星空、海風にうねる波・・・、人を寄せ付けない孤島は、男と女の心模様を切なく映し出していくのだ。
生きることを問う人間ドラマは、よく仕組まれたロマンティックなメロドラマでもある。
嵐と凪が訪れる孤島の風景は、厳しくも美しい。
作品を観ている方は胸がしめつけらるれるようだ。
赦しはあるのだろうか。
赦しとは何であろうか。
本当の親がいつ現われるか。
サスペンスの展開するドラマに、名優三人が激突して見応えも十分だ。
ややくすんだ映像も、ここでは美しい。
「ブルー・バレンタイン」(2010年)のデレク・シアンフランス監督によるアメリカ・オーストラリア・ニュージランド合作映画「光をくれた人」は、親子の宿命劇を描いていて詩情豊かである。
絶望のどん底で迎える穏やかなラストが、切ないまでに胸を締め付けてくる。
涙なしには観られない人もいることだろう。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)
次回は日本映画「彼女の人生は間違いじゃない」を取り上げます。
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