徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「新しい靴を買わなくちゃ」―パリの街をさすらう迷子の男女の恋の始まり―

2012-10-12 22:00:00 | 映画


 フランス・パリ、エッフェル塔の下、セーヌのほとりの、おとぎ話みたいな3日間のドラマだ。
 3日間の旅で、一体何が変わるか。
 迷子となった男女が、折れたヒールに導かれて恋を紡ぐ。

 これまで数々のトレンディードラマを手掛けてきた、人気脚本家北川悦吏子監督を務める。
 日本映画としては、異例とも思われるオールパリロケを敢行した。
 パリに暮らす女性と、日本から観光で来た青年の運命がクロスする、3日間限定のときめきのラブストーリーという触れ込みだ。
 だが、そんなドラマ云々よりも、ここはパリ観光(!)に絞って楽しんだほうがいいようだ。









      
カメラマンのセン(向井理)は、妹スズメ(桐谷美玲)に付き添ってパリに着いた。
ところが、単独行動をもくろんでいたスズメに置き去りにされる。
センは、泊まるはずのホテルもわからず、落としたパスポートは踏まれて破れてしまった。
パリでフリーペーパーの編集をする、日本人女性アオイ(中山美穂)が、踏んだ靴の主だった。
パスポートを踏んでしまったために、ヒールが折れてしまったアオイの靴を、センが接着剤でなおす・・・。

そのことに感謝したアオイは、困ったときのために、センに自分の連絡先を教える。
妹と連絡の取れないセンは、仕方なくアオイに電話をかけ、その夜二人は一緒に食事をする。
話がはずんで、気分よく酔っぱらってしまったアオイを、センが自宅まで送り届ける。
結局、ホテルに戻れなくなってしまって、センがアオイの部屋に泊まってしまうことになる。

・・・こうして1日目が終わり、2日目が始まり、そしてパリでの3日目へと・・・。
その間をずっと共に過ごすことになった、センとアオイは、やがて、お互いの相手に対する想いを高めていく。
しかし、センが日本へ帰る別れの日はすぐ、確実にやって来る・・・。


赤ワインとピアノ、歯の浮くようなセリフでの二人の語らい、クロワッサンとモーニングコーヒー・・・。
朝が来て、夜が来て、また朝が訪れる・・・。
3日間の、恋の始まりだけを描く北川悦吏子の演出に、何やら期待は大きく膨らむのだが・・・。
日本のOLは、こういう作品に案外弱いかもしれない。だとしたら・・・?

北川悦吏子監督「新しい靴を買わなくちゃ」は、何のことはない、大人のラブストーリーといっても、実際は少しピュアな少女小説を読んでいるような映画だ。
次に何が起こるのかと、淡彩な期待と成り行きにはらはらさせられることはあっても、ドラマはそれ以上でも、それ以下でもない。
二人の距離は少しずつ縮まっていくようには見えるが、そこまでだ。
この作品、わざわざパリロケで撮る必要があったのだろうか。

フランス、パリ、エッフェル塔、セーヌ河とくれば、小粋なフランス映画の世界のはずである。
10年間も実際にパリで生活している中山美穂からは、そんなパリの香りも漂って来ないし、フランスなのにフランス語の響きやシャンソンのメロディもほとんど聞こえてこない。
ドラマ2日目に、アオイの友人ジョアンヌ(アマンダ・プラマー)をセンが紹介されるシーンがある。
彼女は、センにアオイの過去を話してしまう役を担っているが、このシーンがさほど必要なシーンだとは思えないし、何だかとってつけたようだし、どうにかならなかったのか。

作品自体、薄っぺらな感じで、北川監督の脚本、演出自体に格別新味といえるほどのものもない。
もっとも、大きなドラマではなく、些細なひとつひとつが積み重なって、何も起こらなくても記憶に残る、そんな作品を期待していたというのだろうか。
結局、このドラマは、これから何か新しい恋が始まるまでのプロローグでしかなく、「恋の魔法」などというキャッチフレーズは不要だ。
セーヌの流れと、夕暮れに沈むパリの街並みには救われるが・・・。
中山美穂向井理ファンは、こういう作品に胸がきゅんとなるのかも知れない。
しかしどうも、最初から、パリの観光ガイドブックを見ているような気がして・・・。
     [JULIENの評価・・・★★☆☆☆](★5つが最高点


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
これは・・・ (茶柱)
2012-10-12 22:21:05
いわゆる「乙女向け」なんですね。
さすればJulien様があまりお気に召さないのもやむなしでは。
「乙女の,乙女による,乙女のための映画」なのでしょうから・・・。
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実は… (ローズヒップ)
2012-10-13 14:28:00
見に行こうと思ってたんですけど…ちょっと考えます。
でも、やっぱり見ようかな。もし、キュンとしたら乙女ってことで。笑
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さすれば・・・ (Julien)
2012-10-14 20:21:34
茶柱様。
・・・やっぱり、乙女向けなのです。
それならそれでも良いのですが、もうちょっとどうにかならなかったのかなといった気持です。
ノーベル賞作家の川端康成も、若いころは少女小説を沢山書いていましたからね。
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無粋な男には・・・ (Julien)
2012-10-14 20:34:54
不似合でも、女性なら、見れば多分キュンとなるのではと・・・。
ローズヒップ様。

だって、きっとキュンとなるでしょうから、心はちゃんとした乙女です。
少し辛く書きましたけど、ま、見て損はない作品では・・・。
女性は、いつになってもガールだといいますから。
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