新鋭アダム・ウィンガード監督の、鋭いキレのあるスリラー映画だ。
この人、新世代スリラー監督としての呼び声も高く、いまハリウッドでも注目されている若手監督の一人だ。
各国の映画祭でも、観客を沸かせた興奮の作品がこれだ。
人里離れた一軒家で、主人公が謎の侵入者に襲撃される。
逃げ場のない密室で、次から次へと起こる襲撃、しかも突如として現れるのは、動物の面をつけたアニマルマスク集団だ。
この不気味な設定と定番の音響効果が、いやがうえにも見えない恐怖感をあおり、日常の中に潜む異常を物語る。
ドラマは冒頭から、家族さえ予期しなかった結末へと、一気に突き進んでいく。
定年退職したばかりの父ポール(ロブ・モラン)と療養中の母オーブリー(バーバラ・クランプトン)の、結婚35周年を祝うため、デーヴィソン一家が新緑の別荘に集まることになった。
そこに集まってきた、家族とその恋人達10人が揃って、晩餐会が始まる。
和やかにスタートしたように見えた晩餐会で、突然窓ガラスの割れる音が・・・。
そこへ飛び込んできて、彼らに襲いかかったのは、羊、狐といった動物たちのマスクをつけた、正体不明の軍団であった。
正体もわからず、理由のわからないまま、なすすべもなく襲われていくデーヴィソン家の人々・・・。
そして、まさに絶体絶命のピンチに陥ったその時、アニマル集団も、そして家族すらも予想しなかったことが起こる。
誤算、予想外、想定外と、いくつものサプライズが、家族全員の運命を大きく変え、誰もが予期しなかった結末へと突き進んでいく・・・。
とくに目新しい作劇ではないが、いやはや、なかなか凝った怖ろしい演出だ。
二階の寝室に、何ものかが侵入したところから矢継ぎ早に、連続殺人事件が起きる。
別荘とその周辺という、限定された舞台を最大限に生かして、観客の予想を裏切りながら、ドラマは実にテンポよく進む。
あっと驚くような展開を随所に挟み込みながらの、演出手腕は大したものだ。
しかも、皮肉と風刺をたっぷり効かせながら、思う存分楽しませてくれる。
実行犯はともかく、真犯人は何故ここまでやらなければならなかったのか。
肝心の動機は、財産相続をめぐる争いにあったようだが、詳しくは触れていない。
しかし、このドラマの恐怖に笑いも交えた、切れ味鋭いスリルとサスペンスは満点に近い。
観客は、最終最後まではらはらどきどきの連続でテンポもよく、気を抜く間もない。
アダム・ウィンガード監督によるアメリカ映画「サプライズ」は、迫真の恐怖に満ちたスリラー映画だ。
最後まで楽しめる、十分見応えのある一作だ。
[JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点)
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笑いがあるとなお恐怖はいや増しますね。
それも、いきなりですよ。
いや、いや・・・。