徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「JUNO/ジュノ」ー十六歳の出産初体験ー

2008-07-01 20:30:00 | 映画

世代を超えた、女性へのエールのこめられた作品が誕生した。
一風変った、女の子の青春記といったらいいか。
脚本の力に負うところの多い作品だ。
親友や家族、周囲の人たちに支えられて、小さな命を授かって見えてきたものは、両親の深く大きな愛、そして、かけがえのない友情だった。

ジェイソン・ライトマン監督アメリカ映画「JUNO/ジュノ」は、アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞し、主要四部門(作品・監督・主演女優・脚本)各賞にノミネートされた。
ローマ国際映画祭最優秀作品賞、トロント国際映画祭観客賞など数多くの肩書きも持つ。
ディアブロ・コディという脚本家は、ブロガー出身だそうで、確かにその独創性と台詞使いのセンスはなかなかだ。
このことが認められて、スティーヴン・スピルバーグ監督から、新しいドラマの脚本家に任命されたそうだ。
新鮮で、リアリティのある台詞があって、はじめてヒロインの熱演もうなずけるというものだ。

16歳の高校生ジュノ(エレン・ペイジ)は、父マック(J.K.シモンズ)義母ブレン(アリソン・ジャネイ、妹リバティ・ベルの四人家族だ。
或る日、ジュノは友達のポーリー・ブリーカー(マイケル・セラ)との交際で、妊娠してしまったのだ。
まだ、愛とか恋とか、真剣に考えていない年頃の、突然降ってわいた出来事だった。
ジュノポーリーに報告すると、ポーリーは戸惑った。ジュノは中絶を提案した。

後日、ジュノが向かったクリニックで、中絶反対運動中の同級生にたしなめられ、彼女は考えを翻した。
ジュノは、親友のリア(オリヴィア・サルビー)に相談して、養子縁組を望むカップルを探し出した。
そのうえで、両親にも打ち明けた。
ジュノの家庭に衝撃が走った。
初めは、十代の娘の妊娠に驚いた父だったが、子供を出産しその子を養子に出すという、ジュノの意見を尊重してくれた。

ジュノは父親とともに、養父母となってくれるローリング夫妻の家を訪れる。
その家には、キャリアウーマンで、美人のヴァネッサ(ジェニファー・ガーナー)と夫のマーク(ジェイソン・ベイトマン)がいた。
夫妻は、生まれてくる子供を養子とすることについて、快く約束してくれた。

季節は過ぎて、冬になり、日を追うごとに、ジュノのお腹はどんどん膨らんでいく。
学校でも、彼女の妊娠の噂は広がっていたが、ポーリーは今までと変らない態度で、ジュノに接していた。

音楽や映画の話のできるマークは、ジュノにとって大切な存在になっていた。
しかし、そんな時に、マークはヴァネッサと別れようとしていた。
その、マークの突然の宣言に、ジュノは衝撃を受ける。
マークは、ジュノと一緒に子供を育てていこうと提案したのだ。
しかも、マークジュノがそれを喜ぶと思っていたのだ。
家庭の崩壊など望まぬジュノの願いは壊れ、ジュノは号泣した。

ジュノの口にする言葉が威勢いい。
 「“人類”の信頼を失ったわ」
ジュノを迎えたのは、いつもの我が家と父マックの温かい声であった。
 「二人の人間が永遠に一緒にいられるか?」というジュノの命題に、
 「何よりも大事なのは、ありのままのお前を愛する人を見つけることだ」と父は答えた。
そして、ジュノが思い浮かべたのは、やはりポーリーのことだった。
・・・いよいよ、ジュノの出産の時がやってきた。・・・

家族の絆と希望、いろいろな愛の形がある。
それらを、この映画は浮き彫りにする。
16歳の少女の“大事件”が、みんなの心をひとつにつなぐ。
そこに生じる、人間関係の微妙なバランスが描かれている。
16歳の少女は、臨月のお腹を突き出して、前を向き、堂々と自分のペースで歩いていく・・・。
ジュノは、しっかりと自分を守って生きている。
へこみもしないし、へこたれもしない。女とは、かくも強いものか。
しっかりと、自分なりの解決策を見出すのだ。
十代から元若者までの世代に、この青春映画はどう映るだろうか。
ジュノは活発でエネルギーがあり、少し生意気だが、知的で賢い部分を持っている。
結構じゃありませんか。胸を張って行け!なんて・・・。
確かに、脚本は面白そうだ。
明るさと笑いもある。それで、どこか可笑しい場面も・・・。
若いカップル向けの作品かも・・・。
ただちょっと、少女小説のような気もして・・・。(?!)
ジュノは、父親の前だけ、年齢相応のか弱い少女に戻れるのだ。
その父親の役目は、やがて赤ちゃんの父ポーリーにバトンタッチされるのだ。
最重要人物はポーリーだ。
出産後、青春の過ちに泣き続けるジュノを、くるむように抱き続ける。
悲しみと温かさが交錯するシーンに、いたわりあう二人の姿を見せられて、誰もがほっとするのではないだろうか。

軽快なテンポで語られる台詞は、面白く、痛快な響きがある。
おそらくスラングも混じっているから、字数制限のある日本字訳は大変だったに違いない。

16歳の妊娠というプロットについても、映画は奇をてらわず、大人の決めつけた紋切り型ではなく、地に着いた姿勢で、ジェイソン監督は描いている。
要は、あくまでも「自分の生き方は自分で貫く」という真っ当さが、この作品の芯になっている。
監督も脚本家も、まだ30歳を超えたばかりで、二人とも若い。
脚本のディアブロ・コディは、自叙伝をブログで書き上げ、それがプロデューサーの目にとまってデビューとなったそうだ。

友達以上、恋人未満なんていう言葉がある。
味付けすると、こんな物語になるのかも知れない。
アメリカ映画「JUNO/ジュノは、降りかかってきた大きな問題に直面して、少女の戸惑いをときに笑いと涙で、明るいコメディタッチで描いた作品だ。

蛇足ながら、アメリカは児童福祉上の観点から、国全体を挙げて、養子縁組に取り組んでいるため、数多くの養子縁組が成立している。
1997年からほぼ1年間で、児童養護施設から養子縁組に移った児童が3万6000人にものぼるそうだ。
あちらでは、日本の「家のあとつぎ」といった観念がなく、里親制度や養子縁組の情報が身の回りにいっぱいあるので、普通のこととして受け入れやすいこともあると言われる。
(この映画の中では、ヒロインが、タウン誌で養子縁組の情報を検索している。)


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