アレクサンドル・デュマの名作が、今世紀の壮大なアクション・ドラマとなって生まれ変わった。
奇才といわれる、ポール・W・S・アンダーソン監督の、ドイツ映画だ。
3Dカメラを8台も使って、新しい視点からの「三銃士」として、空中アクション・バトルの面白さを満喫させてくれる。
友情と笑いとロマンスをたっぷり詰め込んで、物語はダイナミックな展開を見せる。
息をのむアクションは、何もかもが常識破りだ。
撮影は主にドイツで行われ、世界遺産での撮影も見ものだ。
このヨーロッパ製の大型娯楽映画、ハリウッド製でないのはよかったが・・・。
主人公は、無鉄砲で気が強い田舎者の青年ダルタニアン(ローガン・ラーマン)だ。
17世紀フランス、若くてまだ無知な、ルイ13世が王位を継承した時代である。
みすぼらしい馬に乗って、パリにやって来たダルタニアンは、偶然にも、フランス最強の'三銃士’である、アトス(マシュー・マクファティン)、ポルトス(レイ・スティーヴンソン)、アラミス(ルーク・エヴァンス)に出合った。
成り行きから、40人の相手を打ち負かしたダルタニアンと三銃士の4人は、若きフランスの王、ルイ13世の宮殿に呼ばれることになった。
ちょうどその時、宮殿では、ヨーロッパの覇権を争う、大きな野望と陰謀が渦巻いていた。
リシュリュー枢機卿(クリストフ・ヴァルツ)の企みによって、アンヌ王妃(ジュノー・テンプル)が所有するダイヤのネックレスが盗まれたとき、王妃の侍女コンスタンス(ガブリエラ・ワイルド)は、ダルタニアンに助けを求めた。
ネックレスが5日以内に戻ってこないと、アンヌ王妃は、とんでもない罠にはめられてしまうのだ。
コンスタンスに恋心を寄せるダルタニアンは、ネックレスを取り戻すために、イギリスに渡ろうと即座に決意する。
その陰謀は、やがては、全ヨーロッパをも巻き込む戦争へ発展すると読んだ三銃士も、彼に同行することになった。
一行を待ち受けるのは、イギリスのバッキンガム侯爵(オーランド・ブルーム)と、欲望のままに動く、二重スパイの悪女ミレディ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)であった。
この強力な敵に、ダルタニアンと三銃士は力を合わせ、知恵と剣、勇気と友情を持って、立ち向かっていく。
そして・・・、すさまじい最終決戦は、何と空へと移っていくのだった。
王妃のネックレス盗難事件が、大きな戦争を引き起こすなど突拍子もない展開だが、三階建ての巨大な飛行船の激突と砲撃合戦が、これまた凄い。
三銃士たちの華麗な剣さばきはもちろんだが、前代未聞のこの空中戦は、ドラマのクライマックスのために用意されたようなものだ。
観ていて、「パイレーツ・オブ・カリビアン」に似ていると思った。
オーランド・ブルームが初の悪役で、ジャック・スパロウに通じるキャラクターで、新しい味を発揮している。
新星ローガン・ラーマンは、瑞々しいダルタニアンを演じる18歳が、若さにあふれている。
欲望のおもむくままに、次々と寝返るミレディを演じるミラ・ジョヴォヴィッチは、この作品ではミステリアスな存在だ。
アンダーソン監督の、私生活のパートナーでもある彼女は、コルセットをつけて、派手なドレスで暴れまわるシーンがるが、面白いアイディアだ。
すべて、彼女自身の発想だそうだ。
王妃の浮気を疑っているはずの、嫉妬深いルイ13世が王妃に夢中になっていたり、飛行船戦争など、ドラマの展開には無理筋もあるけれど、おおむね原作には忠実なほうだ。
エンディングでも、次回作も作るようなことを示唆している。
三銃士というよりは、四銃士といったほうがいいかも知れない。
ポール・W・S・アンダーソン監督によるこのドイツ映画「三銃士」は、おそらくこれまで誰も観たことのない「三銃士」だろう。
フランス発祥のパルクールをはじめ、ロッククライミング、パンジージャンプやアクロバティックなアクションをふんだんに取り入れ、歴史的に欠かせないスピード感あふれる剣劇が、スクリーンいっぱいに繰り広げられる。
「三銃士」は、19世紀を代表するフランスの作家デュマの古典をいじくって、ファンタジックな冒険劇に仕上げた。
これまでも、幾度となく映像化されてきた古典だ。
今回の映画版は、悪女を英仏を股にかける二重スパイに設定したり、17世紀にはまだ存在しなかった三階建ての飛行船を登場させたりと、かなり自由な発想で、遊び放題の演出だ。
「三銃士」と映画の相性は、誰もが知るところだ。
これまで、折々の時代の人気キャストで映画化され続けてきたことは、日本で言えば「忠臣蔵」みたいだ。
ま、ちょっと無茶苦茶な(!?)、ヨーロッパ発のアドベンチャー映画だが、壮快感と洒落っ気たっぷりの娯楽大作である。
最新の画像[もっと見る]
-
川端康成 美しい日本~鎌倉文学館35周年特別展~ 4年前
-
映画「男と女 人生最良の日々」―愛と哀しみの果てに― 5年前
-
文学散歩「中 島 敦 展」―魅せられた旅人の短い生涯― 6年前
-
映画「帰れない二人」―改革開放の中で時は移り現代中国の変革とともに逞しく生きる女性を見つめて― 6年前
-
映画「火口のふたり」―男と女の性愛の日々は死とエロスに迫る終末の予感を漂わせて― 6年前
-
映画「新聞記者」―民主主義を踏みにじる官邸の横暴と忖度に走る官僚たちを報道メディアはどう見つめたか― 6年前
-
映画「よ こ が お」―社会から理不尽に追い詰められた人間の心の深層に分け入ると― 6年前
-
映画「ア ラ ジ ン」―痛快無比!ディズニーワールド実写娯楽映画の真骨頂だ― 6年前
-
文学散歩「江藤淳企画展」―初夏の神奈川近代文学館にてー 6年前
-
映画「マイ・ブックショップ」―文学の香り漂う中で女はあくなき権力への勇気ある抵抗を込めて― 6年前
楽しそう!
多分、今回のドイツ製作の「三銃士」(脚本は英語)公開に合わせたのでしょう。(笑)
まあ、映画も小説も誰もが楽しめる作品ですね。