・・・本当の気持ちに気づいたとき、人生をやり直すことは許されるだろうか。
主人公のこの問いかけに、この作品はどんな答えを用意しているのだろうか。
「君に読む物語」「一枚のめぐり逢い」など、泣ける恋愛小説の名手ニコラス・スパークスの本編も、ベストセラー小説の映画化で、 「終着駅/トルストイ最後の旅」のマイケル・ホフマン監督が手がけた作品だ。
運命に導かれ、運命に翻弄される二人を描いた、珠玉のような一篇のラブストーリーだ。
ルイジアナ州の田舎町・・・。
石油採掘基地で働くドーソン(ジェームズ・マースデン)は、爆破事故に遭うが、奇跡的に一命を取り留める。
奇しくも事故直後、人生の恩人である友人タック(ジェラルド・マクレイニー)が他界し、二十年ぶりに故郷へ戻る。
そこには、初恋の相手だったアマンダ(ミシェル・モナハン)がいて、タックは二人に、自分の遺灰は思い出の詰まった別荘の池に撒くように遺言を残していた。
実は幸せな家庭を築いていたアマンダだが、夫との間にできた溝が徐々に広がりつつあった。
ドーソンとアマンダが出逢ったのは、二十年前で、二人は深く愛し合いながらも、別々の人生を歩まざるを得なかったのだ。
ドーソンとアマンダは別荘に向かう。
アマンダへの想いをいまでも持ち続けているドーソンと、愛する娘を亡くし夫との関係も冷え切ってしまっているアマンダであった。
それぞれの人生を歩んできた二人の運命が再び交錯し、心の奥に封印していた“想い”が熱くよみがえるのだった・・・。
二人の再会に、果たしてどんな意味があるのだろうか。
適わなかった初恋の相手と、再びめぐりあったら・・・。
ほろ苦い青春時代を想い出させる、いい映画だ。
恋愛というのは偶然か。運命か。
二十年の歳月を経て、二度目の運命(セカンドチャンス)を手にするとすれば、それはかつて一度手離してしまったものがもし運命だとしたら、その運命をもう一度手にすることはできないものだろうか。
このアメリカ映画「かけがえのない人」は、運命を試しているラブストーリーだ。
運命の糸を、赤い糸というではないか。
映画の中に散りばめられている、意図的とも思える赤色は何を物語るのか。
ドーソンがアマンダに渡した赤い椿の花、二十年ぶりに二人を再会させた弁護士の赤い蝶ネクタイ、二人が初めて結ばれた夜にアマンダがまとっていた赤いバスタオル、タックの遺灰を撒くためにヴァンダミアの別荘に行くときのオープンカーの車体の赤、その時のアマンダの赤いワンピース、途中レストランで食べたエビの赤さ等々・・・。
椿の花の花言葉は「敬愛」と「完璧」だそうだ。
二十年前の二人の青春には、完璧な敬愛の瞬間があったかもしれない。
ラストシーンで、アマンダが佇む湖のほとりに一面に咲いていたのは赤いポピーの花で、花言葉は「慰め」と「感謝」だ。
二十年前の高校時代の二人を演じる、ルーク・ブレイシーとリアナ・リベラトのフレッシュコンビも魅力的だ。
だからこの映画は二人一役だ。
現在と過去が交錯し、高校生の二人は様々な障害を乗り越えながら強い絆を培っていく過程が描かれ、時を経て再会した二人が、時の溝を埋めながら、互いの気持ちを確かめていく過程が、細やかに描かれている。
見方によっては、二つのラブストーリーと見ることもできる。
二十年の歳月を経ての再会は、二人の心の奥にくすぶる情熱を激しく燃え上がらせるが・・・。
この作品は、映像の美しさも特筆すべきだろう
そして最後に訪れる意外な結末に、いやが上にも感動が・・・。
いやいや、なるほど、これはまた、何というラストシーンか。
[JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点)
次回は中国・台湾・フランス合作映画「黒衣の刺客」を取り上げます。
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人それぞれ・・・。
あまり甘ったるいのはどうもという気がしますが、自然体であれば、受容範囲です。
ラブストリー、大いに結構じゃありませんか。