夫婦の絆というのは、どうすれば深まり、人生を豊かにすることができるのだろうか。
異なる世界に住む男女を描いた、「ノッティングヒルの恋人」(99年)のロジャー・ミッシェル監督が、長年温めてきたテーマだ。
長年連れ添った夫婦の「その後」とは、いかがなものか。
この映画は、結婚30年の夫婦への讃歌だ。
自分たちの30年を祝おうと、英国人夫婦が新婚旅行の地パリを再訪する。
英国流のユーモア精神を奏でるドラマで、甘い観光気分には人生の苦味もありで、人間誰もが抱く老いの先への不安が痛々しく表現されている。
中 高年を主人公にした、ロマンティックコメディだ。
大学の哲学教師ニック・バロウズ(ジム・ブロードベント)と、中学校で生物を教える妻メグ(リンゼイ・ダンカン)は、還暦を過ぎた夫婦だ。
二人は新婚旅行の思い出の地パリを訪れ、高級ホテルや洒落たレストランで楽しい時間を過ごすが、実はニックは直前に勤め先の大学をクビになり、今後の生活が心配でならない。
その上ニックは、日ごろからくすぶる妻への性的不満も高まって、妻は妻で夫の融通の利かない性格が鬱陶しい。
二人は旅をしながら、お互いの秘密や本音を打ち明け合ううちに、次第に怪しい雲行きに・・・。
そんなときに、人気作家となった学生時代の友人モーガン(ジェフ・ゴールドブラム)と、偶然再会した。
ニックはコンプレックスを感じ、老いゆく自分への懸念が一層高まる・・・。
二人とも人生の岐路に立って、いろいろな問題を抱えている。
パリのレストランを一軒一軒のぞいては、文句を言いながら、やっと満足できる店を見つけて愉しむ。
夫のニックも、妻のメグも、ともに分別と茶目っ気もあって、大人のお手本のようなところもある。
ドラマは軽い喜劇調のタッチから、後半、自分の昔の学生運動に関わった頃の話に及ぶと、厳しい展開になるが、こんなエピソードがこの映画には必要だったのだろうか。
パリのロケーションは大人のロマンティシズムを演出し、ベテラン俳優同士のユーモア満載のかけ合いが
最後まで物語を引っ張っていく。
倦怠の先に待ち受ける離婚の危機さえほのめかしているのに、長年苦楽を共にしてきたカップルならではの、お互いに通じ合う絆も描かれる。
泣き言あり、愚痴ありでも、どこか冷静な目で自分を見ている夫と、ときには辛辣なユーモアで刺激したりする妻もキュートで、イギリス人のインテリ夫婦とはこんなものかと感じ入る。
ロジャー・ミッシェル監督のイギリス映画「ウィークエンドはパリで」は、本国では22週にわたってロングランヒットを記録した作品だ。
夫ニックを演じるジム・ブロードベントは「マーガレット・サッチャー」(11年)でも高く評価されているし、妻メグに扮するリンゼイ・ダンカンは「トスカーナの休日」でおなじみだ。
いずれにしても、キャリアを誇る名優二人のコミカルかつリアルな演技が笑いを誘う作品だ。
ただ、演技は演技でもほどほどが宜しいが・・・。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)
最新の画像[もっと見る]
-
川端康成 美しい日本~鎌倉文学館35周年特別展~ 4年前
-
映画「男と女 人生最良の日々」―愛と哀しみの果てに― 4年前
-
文学散歩「中 島 敦 展」―魅せられた旅人の短い生涯― 5年前
-
映画「帰れない二人」―改革開放の中で時は移り現代中国の変革とともに逞しく生きる女性を見つめて― 5年前
-
映画「火口のふたり」―男と女の性愛の日々は死とエロスに迫る終末の予感を漂わせて― 5年前
-
映画「新聞記者」―民主主義を踏みにじる官邸の横暴と忖度に走る官僚たちを報道メディアはどう見つめたか― 5年前
-
映画「よ こ が お」―社会から理不尽に追い詰められた人間の心の深層に分け入ると― 5年前
-
映画「ア ラ ジ ン」―痛快無比!ディズニーワールド実写娯楽映画の真骨頂だ― 5年前
-
文学散歩「江藤淳企画展」―初夏の神奈川近代文学館にてー 5年前
-
映画「マイ・ブックショップ」―文学の香り漂う中で女はあくなき権力への勇気ある抵抗を込めて― 5年前
なるほど~~
普遍的な話ですね。
特別、新しいというのでもなく・・・。
2年近く前に見た、ヒューマンドラマでした。
スター・チャンネルは見ていませんが、いい作品をよく取り上げていますね。
もっとも、そのチャンネルで見る機会はないのですが、見逃した映画も必ずレンタルということもないので、見たいファンにはありがたいですね。