徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「十三人の刺客」―壮絶!死闘の迫力―

2010-11-28 10:00:00 | 映画



圧倒的なスケールとリアリティを追求した、大型時代劇だ。
47年前の東映時代劇(工藤栄一監督・主演片岡知恵蔵)のこのリメイク版は、前作を踏まえながら、新鮮な工夫をさらに加えて、時代劇の醍醐味をたっぷりと見せてくれる。
海外でも才能を高く評価されている、鬼才三池崇史監督作品だ。
Thirteen Assassins (2010) trailer


江戸時代末期、明石藩江戸家老・間宮(内野聖陽)が、老中・土井家の門前で、切腹自害した。
彼の死は、生来の残忍な性格で、罪なき民衆に不条理な殺戮を繰り返す、明石藩主・松平斉韶(なりつぐ)(稲垣吾郎)の暴君ぶりを訴えたのだった。
このままでは、幕府ひいては国の存亡に関わると判断した土井(平幹二朗)は、藩主暗殺を決断し、御目付役・島田新左衛門(役所広司)にその命を下した。

新佐衛門は、総勢13人の暗殺隊を結成し、密かに動き出した。
13人の配役は、役所広司をリーダーとし、重厚な補佐役に松方弘樹、剣豪浪人の伊原剛志ら重みのある面々・・・。
一同は、参勤交代を終えて帰る途中で、中山道の落合宿で、明石藩主・松平斉韶を狙う手はずだ。
村全体は要塞化し、そこへ明石藩の一行を誘い込んで襲撃する。
13対300余の壮絶な死闘が、延々と50分間も続くから、凄い。
息詰まる死闘を観ていて、こちらも身がきりきりするようだ。

数の上では明石勢が圧倒的だが、袋のようになった迷路を右往左往して、パニックは最高潮に達し、上下左右からの攻撃で、大狂乱となる。
渦巻く阿鼻叫喚の中で、血が飛び、敵も味方も疲労困憊し、目の離せない死闘が続く。
とにかく、藩主・斉韶暗殺に身命を賭けた、13人の気迫が凄まじい。
映画「十三人の刺客」は、元祖に劣らぬ迫力十分すぎるほどの、時代劇エンターテインメントだ。

明石藩主役の稲垣吾郎が、全編を通して残虐な暴君の狂気をリアルに演じていて、面白い。
ただ、この長時間の乱戦は、どこか猛々しい空しさを漂わせている。
人間の血まみれとは、かくも悲しいものなのだ。
暴君を死守する用人役の市村正親と、役所広司の一騎打ちも見どころ十分だ。
こうなると、もう敵も味方もあったものではない。

選ばれし十三人の男たちの、幕末最大の密命をうたった最終決戦は、一世一代の大博打だ。
一歩間違えれば、大怪我をしかねない、間合いを詰めたリアルな殺陣といい、これだけの大型時代劇の撮影は、脚本(天願大介)はもちろん、美術、ロケ、メイクと、さぞかし大変だったのではないか。
斬って斬って斬りまくる、彼ら刺客たちのドラマは、いや、本当に観ている方もくたくたに疲れることを覚悟せねばならない。