人生をワイン造りになぞらえた、芳醇な(?)物語である。
ワインと人間の織なす、一応はロマンに満ちたハートフルストーリーだ。
フランス・ニュージーランド合作のこの作品は、フランス・ブルゴーニュ地方の壮大な自然を背景に紡ぎ出される、女性監督ニキ・カーロの最新作だ。
ワインというと、日本でも今や定着の感があるが、この作品には、200年前のワイン醸造家が、苦労を重ねて最高のワインを作ろうとする姿が描かれている。
牧歌的な、フランスの田園風景の中に、葡萄畑の美しさやシャトーのたたずまいが、見事にマッチしていてリアリティに富む。
しかし、ここに描かれる葡萄農家は、小さく粗末な主人公の家だ。
それだけに、ワインづくりも身近なものに感じられる。
それはそれでいいのだが・・・。
1808年、フランスのブルゴーニュ地方・・・。
葡萄を摘み取る農民たちの中に、若き野心家ソブラン・ジョドー(ジェレミー・レニエ)がいた。
彼は村娘セレスト(ケイシャ・キャッスル=ヒューズ)を見初めるが、父からは結婚を許されない。
彼女の父が、異常者だからという理由だ。
ソプランの父は元小作人で、葡萄を元地主のヴリー伯爵の醸造所(シャトー)に売っている。
ソプランはそのことに不満で、いつか自分のワインを作りたいと夢を語るが、皆からは相手にされない。
ヤケ酒を飲んでさまようソブランのもとに、天使ザス(ギャスパー・ウリエル)が舞い降りた。
ソブランは驚きながらも、ザスに悩みを打ち明ける。
ザスは、セレストに手紙を書けとアドバイスし、1年後に結婚を祝いに戻ってくると約束する。
セレストに手紙を書いたソブランは彼女と結ばれ、彼女は彼の子を身ごもった。
ソブランは自立資金を得るため、ナポレオン軍のロシア遠征に参加するが、軍は惨敗し、彼は命からがら帰郷する。
父はすでに他界し、セレストは、幼い長女と赤ん坊の次女を抱えて疲労困憊していた。
ソブランは、2年ぶりに会ったザスに、何故家族を守ってくれなかったのかと詰め寄る。
だが、ザスには災いを防ぐ力はなかった。
それでも、ザスのはげましとセレストの愛に支えられ、ソブランは1815年に最初のワインを造った。
ザスも認める、素晴らしい出来のそのワインを、ヴリー伯爵に届けにいったソブランは、伯爵の姪で後継者のオーロラ(ヴェラ・ファーミガ)と出会う。
オーロラは男爵位を持ち、パリで進歩的な学問を学んだ才媛であった・・・。
そして――。
芳醇なワインのように、味わい深い作品なっていて、波乱のワイン造りに生涯をささげる男と、天使や妻、男爵夫人に見守られながら、この寓話のような物語は、一種濃厚な(?)ラブストーリーでもある。
ニュージーランドを代表する作家エリザベス・ノックスという人の、ベストセラーが原作だ。
そして、ブルゴーニュ地方といえば、ワイン界の皇帝とも称される良質なワインの産地として有名だ。
ニキ・カーロ監督の映画「約束の葡萄畑―あるワイン醸造家の物語―」は、ワイン造りをめぐる物語であるとともに、一人の男と彼を取り巻く女性たち、そこに現れた天使が織りなす、実は30年間にわたる‘愛’の物語だ。
それにしても、この作品、大人のラブストーリーとして成功しているといえるだろうか。
物語の中盤、葡萄畑は、嵐や凶作、壊滅的な病気に見舞われ、嫉妬に苦しんだセレストは正気を失い、男爵夫人オーロラは身体の一部を切除される。
主要な登場人物は、皆ずたずたに傷つき、ただならぬ悲壮感が画面をおおいつくしていく。
それでも四季はめぐり、主人公がありったけの愛情を注ぎ続け、残っていた一本の葡萄の木が理想のワインに結実するあたりは、ドラマの持っていきかたに納得もできる。
この作品の一番いいところだ。
豊かな土の中から、寓話と魔法と官能の香りがどこからともなく漂ってくる。
気になるのは、天使だ。
天使は主人公の心の象徴か。
子供騙しで、困ったことにどうもピンとこない。
しまらないのだ。
そのことが、このドラマを薄っぺらなものにしてしまっているきらいがある。
ここは、一考したいところだ。
そんなことより、富裕なシャトーに対する、主人公農夫の暮らしの苦しさとの確執、最高のワイン造りを目指す、彼と彼をを取り巻く人々の絆や苦悩や勇気について、もっと骨太な展開を考えたほうが、よりよい作品になったのではないだろうか。
ワインと人間の織なす、一応はロマンに満ちたハートフルストーリーだ。
フランス・ニュージーランド合作のこの作品は、フランス・ブルゴーニュ地方の壮大な自然を背景に紡ぎ出される、女性監督ニキ・カーロの最新作だ。
ワインというと、日本でも今や定着の感があるが、この作品には、200年前のワイン醸造家が、苦労を重ねて最高のワインを作ろうとする姿が描かれている。
牧歌的な、フランスの田園風景の中に、葡萄畑の美しさやシャトーのたたずまいが、見事にマッチしていてリアリティに富む。
しかし、ここに描かれる葡萄農家は、小さく粗末な主人公の家だ。
それだけに、ワインづくりも身近なものに感じられる。
それはそれでいいのだが・・・。
1808年、フランスのブルゴーニュ地方・・・。
葡萄を摘み取る農民たちの中に、若き野心家ソブラン・ジョドー(ジェレミー・レニエ)がいた。
彼は村娘セレスト(ケイシャ・キャッスル=ヒューズ)を見初めるが、父からは結婚を許されない。
彼女の父が、異常者だからという理由だ。
ソプランの父は元小作人で、葡萄を元地主のヴリー伯爵の醸造所(シャトー)に売っている。
ソプランはそのことに不満で、いつか自分のワインを作りたいと夢を語るが、皆からは相手にされない。
ヤケ酒を飲んでさまようソブランのもとに、天使ザス(ギャスパー・ウリエル)が舞い降りた。
ソブランは驚きながらも、ザスに悩みを打ち明ける。
ザスは、セレストに手紙を書けとアドバイスし、1年後に結婚を祝いに戻ってくると約束する。
セレストに手紙を書いたソブランは彼女と結ばれ、彼女は彼の子を身ごもった。
ソブランは自立資金を得るため、ナポレオン軍のロシア遠征に参加するが、軍は惨敗し、彼は命からがら帰郷する。
父はすでに他界し、セレストは、幼い長女と赤ん坊の次女を抱えて疲労困憊していた。
ソブランは、2年ぶりに会ったザスに、何故家族を守ってくれなかったのかと詰め寄る。
だが、ザスには災いを防ぐ力はなかった。
それでも、ザスのはげましとセレストの愛に支えられ、ソブランは1815年に最初のワインを造った。
ザスも認める、素晴らしい出来のそのワインを、ヴリー伯爵に届けにいったソブランは、伯爵の姪で後継者のオーロラ(ヴェラ・ファーミガ)と出会う。
オーロラは男爵位を持ち、パリで進歩的な学問を学んだ才媛であった・・・。
そして――。
芳醇なワインのように、味わい深い作品なっていて、波乱のワイン造りに生涯をささげる男と、天使や妻、男爵夫人に見守られながら、この寓話のような物語は、一種濃厚な(?)ラブストーリーでもある。
ニュージーランドを代表する作家エリザベス・ノックスという人の、ベストセラーが原作だ。
そして、ブルゴーニュ地方といえば、ワイン界の皇帝とも称される良質なワインの産地として有名だ。
ニキ・カーロ監督の映画「約束の葡萄畑―あるワイン醸造家の物語―」は、ワイン造りをめぐる物語であるとともに、一人の男と彼を取り巻く女性たち、そこに現れた天使が織りなす、実は30年間にわたる‘愛’の物語だ。
それにしても、この作品、大人のラブストーリーとして成功しているといえるだろうか。
物語の中盤、葡萄畑は、嵐や凶作、壊滅的な病気に見舞われ、嫉妬に苦しんだセレストは正気を失い、男爵夫人オーロラは身体の一部を切除される。
主要な登場人物は、皆ずたずたに傷つき、ただならぬ悲壮感が画面をおおいつくしていく。
それでも四季はめぐり、主人公がありったけの愛情を注ぎ続け、残っていた一本の葡萄の木が理想のワインに結実するあたりは、ドラマの持っていきかたに納得もできる。
この作品の一番いいところだ。
豊かな土の中から、寓話と魔法と官能の香りがどこからともなく漂ってくる。
気になるのは、天使だ。
天使は主人公の心の象徴か。
子供騙しで、困ったことにどうもピンとこない。
しまらないのだ。
そのことが、このドラマを薄っぺらなものにしてしまっているきらいがある。
ここは、一考したいところだ。
そんなことより、富裕なシャトーに対する、主人公農夫の暮らしの苦しさとの確執、最高のワイン造りを目指す、彼と彼をを取り巻く人々の絆や苦悩や勇気について、もっと骨太な展開を考えたほうが、よりよい作品になったのではないだろうか。