内田けんじ監督が、大人たちの放課後(アフタースクール)を描いた。
かつての同級生たちが、大人になって起こす出来事には、すべて裏があり、建前があり、嘘があった。
人を信用できない男がいる。そして、変わった男も・・・。
そんな‘昔の’同級生たちが巻き込まれてゆく仕掛けの中で、彼らが驚きの展開に翻弄され、一種爽快な(?)物語に一応は仕上がった。
この作品は、コメディあり、サスペンスのタッチあり、甘やかなラブストーリーの展開もありで、一見、一筋縄ではいかない頭の回転が必要かもしれない。
時には、信じていたものが、ひっくり返るような、想像もできない、お膳立てが用意されていたりする。
母校の中学で働く教師、神野(大泉洋)は夏休みだったが、部活動があって出勤していた。
彼のもとに、同級生だと言う探偵(佐々木蔵之介)が訪ねてくる。
探偵は島崎と名乗るが、神野は何となくしか覚えていない。
同じクラスだったこともないし、それほど親しくもなかった。
探偵は、やはり同級生の木村(堺雅人)を探していると言う。
木村は二枚目サラリーマンだ。
神野と木村は、中学時代から親友同士だ。
今朝も、産気づいた木村の妻を、仕事で忙しく昨夜から全くつかまらない彼に代わり、病院へと連れて行ったばかりだった。
そのことを探偵に告げると、今朝撮られたものだという一枚の写真を渡される。
そこには、若い女と親しげにしている木村が写っていた。
ショックを受けている神野に、探偵は木村を探すべく手伝ってほしいと言う。
返事に迷っているうちに、探偵の強引なペースにのまれ、神野は木村探しを手伝うことになってしまった。
神野は、顔が知られ身動きできない探偵の代わりに、木村探しを探偵に依頼してきた男の尾行をするはめになった。
そして、男は、木村が働く梶山商事の上層部の人間で、その背後には社長の存在があることが明らかになる。そこには、たちの悪いヤクザ片岡も絡んでいる。
捜索活動を続けていると、片岡の経営するクラブで働いている女、あゆみの行方を捜しているという情報が入り、そのクラブは、梶山商事の人間が頻繁に利用していたことがわかった。
クラブの別の女に聞くと、あゆみが消えた日に、木村が店に来ていたという。
神野はショックを隠せない。
探偵は、ヤクザの女に手を出した木村が、女房子供を捨て、女と一緒に逃げたのだと結論づけた・・・。
しかし、そんな話はよくある話で、実は、信じていたものがひっくり返るような、想像もできない展開が待っていたのだった・・・。
出演は、ほかに田畑智子、常盤貴子、山本圭、伊武雅刀らが揃い、物語の進行につれて、登場人物の印象もめまぐるしく変わる。
こういうキャスティングもあるのかと思った。
ドラマとしては、少々懲りすぎ、ハナシを創り過ぎ、演出過剰のきらいは否めない。
ミステリアスな人物の登場もあって、当初台本を読んだ俳優陣には、文字を追っていて、誰がどんな状態でセリフを言っているのか、なかなか理解できなくて頭に入ってこなかったとは、堺雅人の弁だ。
カットのひとつひとつを理解して演じるのに、ベテラン役者が監督にそのたびに確認を繰り返したという話もあるくらいだそうだ。
この内田けんじ監督作品「アフタースクール」は、脚本も筋立ても荒削りの部分が多く、もっと推敲され、整理されてもいいのではないか。
どんでん返しの奇をてらったのかも知れないが、ナンセンスだ。
あれもこれもと、盛りだくさんの伏線をはりめぐらして、作品として必要でもない(?)カットがやたらと多くなったのが気になる。
深夜のレストラン、客たちが、申し合わせたように麺を音を立てて啜るシーンなど要らないのではないか。
観客を一瞬は煙に巻いたつもりで、とことん騙そうとした企みの演出、でもその演出のくどさ、わざとらしさが、いかにも青臭いと言ったら、内田ファンは怒るかも知れないが・・・。