徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「ウォンテッド」ー暗殺者、その光と闇ー

2008-09-14 20:00:00 | 映画

孤を描きながら標的を射止める弾丸、弾力性のあるアクロバティックなモーション、車同士のランデブーと呼べそうな見事なカーチェイス・・・、これまでのアクションの常識をくつがえすビジュアルが満載だ。
いやはや、たいそうな映画が登場したものである。

・・・はるかなる昔、機織り職人たちは、糸の目に秘められた暗号を発見した。
それは、放置すれば人々に善をなす悪人の名を示すものであり、職人たちは秘密裏に組織を作ると、悪人たちは抹殺すべく動き始めた。

そして・・・、1000年という時が経った。
フラタニティと名づけられた機織り職人の組織は、今や最大の危機に瀕していた。
組織で名うての暗殺者、クロス(トーマス・クレッチマン)が裏切り、次々と仲間を殺戮し始めたのだった。
そのクロスを倒せるのは、ただ一人、腕利きの暗殺者だった父親の血を引く青年ウェスリー(ジェームズ・マカヴォイ)だけだった。

ウェスリーは全くさえない若者だった。
彼は、買い物中の店先で、謎めいた美女、フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)に声をかけられる。
とその時、クロスが襲撃してきた。
フォックスはウェスリーを守って応戦し、さらに激烈なカーチェイスを展開して、何とかクロスの追跡を振り切った。
二人の着いたところは、フラタニティの本拠地の紡績工場であった。
ウェスリーは、組織の指導者スローン(モーガン・フリーマン)から、自らの血の秘密を知らされる。
暗殺者だった父、その父を殺したクロス・・・。
ウェスリーには、信じられない話だった。
だが、銃を手にしたとき、ウェリーの中に眠る‘才能’の片鱗が目覚めた。

ウェスリーの人生は一変した。
もう怖いものはなくなった。
意気揚々と、暗殺者修行の道を歩み始めたのだ。
やがて、彼はスローンが読み取った人物を次々と暗殺していく・・・。

ある日、父の形見の銃を取りに戻ったウェスリーは、クロスと遭遇するはめになった。
フラタニティのメンバーがクロスを追ったが、ロシア人が犠牲となってしまった。
だが、それと引き換えに、クロスが使っている銃弾が、銃弾職人のペクワースキー(テレンス・スタンプ)の手になるものとわかった。
スローンは、ウェスリーにクロスの抹殺を指示、同時にフォックスにウェスリーの始末を命じた。
そして・・・。

ウェスリーという男は、考える間もないうちに、壮絶な争いの渦中に身を置いて、暗殺者としてその潜在能力を開花させていく。
どうもよく解らないのは、そのことが世界の秩序を守るためだということだ。

原作は、グラフィック・ノベル(アメリカン・コミック)と言われているが、まことに荒唐無稽な話の連続だ。
何が起ったか解らぬうちに、次から次へと、衝撃のシーンが息つく間もなくつながってゆくのだ。
弾丸が、標的の前にある障害物を回避する変化球もどきも、疾走するシカゴの高速鉄道の屋根の上や、脱線転落する特急列車内の連続アクションも、これら新しいタイプの“新次元映像”と呼ぶらしい。
凄まじい映像が現れたかと思ったら、その意味を考える間もなく、立て続けに事件は起きる。

主人公ウェスリーは、初めさえない日々を送っていて、突如として訪れた暗殺者としての運命に翻弄されることになるわけだ。
彼の撃った弾は、百発百中する超能力の持ち主だ。だから、ヒーローになったのだ。
映画の中のフラタニティというのは、世界の平定のため、神の意思を解読し、暗殺を決行する秘密結社と言う設定だ。
作品の核は、ウェスリーという青年の成長物語なのだそうだが、どうもそれらしく思えない。

一見ハードボイルド風で、超過激な面白さがあるかも知れないが、奇想天外な展開に馬鹿馬鹿しくなる。
ひどく大げさな飾りつけのわりには、終わってみると中身は薄っぺら、というより空っぽだったという失望感を味わうかもしれない。
これも‘娯楽’(?)と思う人には、さして気にもならないか・・・。

ティムール・ベクマンベトフ監督アメリカ映画「ウォンテッドは、暗殺者たちを扱った異次元のスーパーアクション・ムービーといったところか。
ただ、映画の人気度は高いようだ。
こちらとしては、どうも全身に返り血を浴びたような感じが、いまでも拭えない。(苦笑)