湘南発、六畳一間の自転車生活

自転車とともにある小さな日常

上って下って266km スバルライン・三国峠編

2006年09月30日 | 自転車生活
上って下って266km ヤビツ峠・山伏峠編より

さて山伏峠を下りながら、これからどうしようか考えました。実は山伏峠を走ることを決めて少したった頃から、体力と時間が許せばスバルラインも上ってみたいという気持ちが生まれていたのです。けれども今日は体調的には少し難ありです。それに肉体的なダメージも正直かなりのものです。ただ時間的にはまだ余裕があるんですよね。それに何より天気が良い。この時期にしては気温だって高めです。そんなことをあれこれと考えながら山伏峠から山中湖へ下って行きました。



山中湖に着いてみると残念ながら富士山は雲のなかでした。ただ天気はやはりとても良く、爽やかな感じでした。なので、とりあえず湖畔のサイクリングロードをゆっくり走ることにしました。



そしてサイクリングロードを流しながら自分に問いかけます。
「体力的にはもうかなりきているけれど5合目まで頑張りきれるのか?」
「帰りは途中からナイトランになるけれど最後まで集中して走りきれるのか?」



そうしてスバルラインの入口まで結局やってきしまった。このスバルラインは直江津ランのときの渋峠とは違ってまったく必然性のないものだ。けれども、いまの僕には自分がどこまで走れるか、どこまで上れるかを試したい気持ちがあるのだ。自分の限界を感じて、できれば自分の限界を押し上げておきたい欲求がとても強くあるのだ。多分こんなモチベーションを感じることなんてこの先そうそうないだろう。だったらいま試さないでいつ試す?



そんな気持ちを胸に、料金所までの一直線の上りをゆっくりゆっくりと上っていく。疲労と膝の痛みからもうゆっくりとしか上れないのだ。でも、ゆっくりとでも諦めずにペダルを漕いでいけば確実に坂のてっぺんに辿り着くことができるのが自転車なのだ。そうやって自分を少し励ましたりした。



そして12時4分、富士スバルライン料金所着。

スバルライン料金所着12時4分 距離126.12km 平均20.3km

ここで補給と休憩をして、12時13分いよいよ出発です。しかし気持ちを引き締めて走りはじめたものの、膝の痛みもあってもう本当に力は出ませんね。スバルラインの入口から料金所までの上りもそうだったのですが、ペダルの上に静かに足を置き、その足になるべく力をこめずにクランクの円周上を転がしていくようなペダリングしかできない。なんだか泥棒が忍び足でそろりそろりと歩いているかのようなペダリングです。

走る速度もだいたい10km前後でしょうか?これくらいの速度だとLEMONDのギア比(52-39、13-25)だとケイデンスが低くなりすぎて余計に膝にきます。でもどうにもなりませんね。とにかく5合目まで走ると決めたわけだから、いままでの自分の経験を総動員してなるべく体に負担がかからぬよう上っていきましょう。

2合目通過 12:40

ここらで何かの虫が右目に飛び込んできてチクリという鋭い痛みが。一瞬眼球を刺されたのかと焦るがどうやらそういうわけでもなさそう。とりあえず途中のパーキングの便所の水道で右目を何度も洗った(あとから確認したら目の下に少し大き目の青あざのようなものができていた。今は下瞼に刺されたあとがポツンと残るのみになったけれども)。



2合目過ぎの樹海台駐車場の手前で2台のロードを発見して少し元気がでる。追走させて欲しいところだったのだけれども、駐車場でのんびりと休憩されるようで適わず。

3合目通過 13時25分

ほんとにきつい。体だけでなく心も悲鳴をあげはじめてる。気づくと脇のほうへふらふらと寄っていってしまいハッとしまうことが何度かあった。この道の側溝には蓋がないので危険なのだ。ここから5合目まで「集中しろ、集中しろ!」と自分に言い聞かせながら走ることになる。こういうことをしないと気持ちの糸が切れるのではないかという不安をここらで少し感じたのです。



それでも、一向に終わらない上りに何度も弱気になる。そのたびに「集中しろ!」と自分に強くことばをかける。景色がなかなか開けないのも気持ち的にきつかったです。



それまでもガスのなかとガスの切れ目のなかを交互に走っている感じではあったのですが、4合目近くでガスがいっそう濃くなってきました。気温も急激に下がってきました。



4合目通過 13時57分

ようやく2000mを越えた。あと少し。ガスはあるもののここらからだんだんと景色が開けてきたこともあって気持ちはだいぶ楽になりました。天気や風景に助けられて自分は走っているのだということを実感しました。



そして少し勾配のきつい部分を越えて、5合目手前の平坦基調のところへようやくたどりつく。ただ悔しいことにここでもほとんどまともにペダルを踏むことができません。しつこいけれど「焦るな、集中しろ!」の精神で5合目に近づいていきます。

そんなふうに最後の力を振り絞っていたら一瞬ガスが晴れました。そして富士の頂がガスの合間からその姿を見せた。



おぉ、頂上があんなに近く見えるぞ。このあとすぐにまたガスがかかり、その後まったくその姿を見せることはなかったのでこのとき写真を撮っておいて正解だった。

そして平坦基調のあとの最後のきつい上りを上りきり、



ほんとうにようやく5合目着。おおげさでなくもうこれ以上は上れない、上りたくないといった状態だった。この標高2305mのスバルラインの終点に到着したとき、「これが自分の限界だ」と僕は素直に受け入れることができた。さすがに「もう充分だ!」と思った。直江津のときはお尻さえ痛くなければまだもう少し走れるという余裕があったけれども、ここに着いたときはそんな余裕はまったくなかった。そしてとにかく集中力を切らさずここまで上って来れたことに、それからこれ以上は上らなくてすむことに心からホッとした。

五合目着14時32分 距離149.88km 平均18.0km

五合目についてまずしたことは防寒。ジャージを脱いで下に化繊のシャツを着た。それからアームウォーマー、レッグウォーマーをつけた。そして薄手のベストとウィンドブレーカーを羽織った。まずこれをやっておかないと体温が奪われて消耗が激しくなる。そして次にしたのが補給。カロリーメイト、残っていた薄皮あんぱんを口に入れた。面倒でもなにはともあれ、これだけは先に済まさねばということを終えて、ようやくここまで走ってきた達成感と満足感に浸ることができた。

ただ帰りのこともあるので長居はできない。なにせ輪行袋は持ってきていないので、江ノ島まで自走して帰らねばならない。そんなわけで五合目には15分ほど滞在しただけでスバルラインを下りはじめた。

正直スバルラインの上りは単調すぎてあまり面白くないと思うけれども、下りに関しては超一級の快適さだと思う。勾配は適度に緩やかだし、カーブもそんなにきつくないし、路面だってとても良い。本当に楽しく下れる下りである。この下りのおかげで少し力も戻ったような気がする。

下りきってからは時間が気になるので黙々と三国峠を目指す。ただ若干の空腹感があったのでせわしく山中湖のセブンイレブンでまたおにぎりを補給した。なんとしてもハンガーノックだけは避けないといけないと思っていたので。



三国峠(1167m)までの標高差約180mの上りは体力的にはやはりつらかったのだけれども、山中湖を見下ろしながら穏やかな気持ちで上っていくことができた。ここでも峠の雰囲気と風景に助けられたのです。



すすきが揺れる夕景のなか、開放感のある道を峠までゆっくりと上っていきます。



だいぶ雲が出てきて空もだいぶ暗くなってきましたが、なんとか日没前には峠に辿り着くことができそうです。とにかく日が暮れる前に峠を下りきってしまいたい。



そして最後の上りをこなして、



ようやく三国峠着!スバルラインを上りきったときよりも、たった標高差180m程度のこの峠に到着したときのほうが感動は大きかった!なにせこれが最後の峠ですからね!

三国峠着16時57分 距離200.39km 平均19.5km

さて峠での少しの休憩ののち、いよいよこの峠名物の急勾配のダウンヒルです。ここまで来て事故でも起こしたら何にもなりませんので、あらためて「集中、集中」と自分に言い聞かせて下りはじめました。



しかしそんなふうに気を引き締めたものの、この吸い込まれていくような急な下りはユーモラスにさえ感じてしまいますね。これはすげぇや、なんて思いながら、なんかちょっと笑っちゃいました。で、10%とか15%という標識が連続したあとにこれ↓が。



・・・・・・。まぁとにかくこんな感じの下りをこなして日暮れ前に駿河小山に辿り着くことができました。

駿河小山からはR246を秦野まで走り、そこからはヤビツまで朝走った道を江ノ島まで帰りました。R246では自転車すれすれにトラックが通り過ぎるナイトランが本当に恐ろしくて何度も自転車を停めてトラックに先に行ってもらいました。足は完全に売り切れ状態で勾配7%の上りで先日の葉山ヒル以下のスピードを記録しました。ヤビツで走りなれている秦野が近づいて気持ちが緩んだのか急にとてつもない空腹を感じ、なんつっ亭で自転車を降りて大盛りのラーメンを食べました。



そしてR134号に帰ってきたときは泣きそうに感動しました。



R134では膝と腰の痛みでもう必死になっても25kmくらいのスピードしか出ませんでした。だから巡航21kmくらいで江ノ島まで走りました。ママチャリだろうと何だろうと、どんな自転車に抜かされたって構わないと思いました。それだけの走りをしてきたんだから何ら恥じることはない、と思いました。

そして部屋に戻ってきたのが、出発してから15時間半後の20時32分。正直なところもうしばらく自転車には乗りたくないし、少なくとも1週間くらいは自転車に乗るのがきついだろうと思いました。そういった種類の走りでした。要は自分の限界を感じるには充分だったのだと思います。

走行距離  266.90km
実走行時間 13時間7分43秒
平均速度  20.3km


今回のエントリー、おおげさな表現が多くて少し申しわけなく思っています。けれども走っているときはほんとに一杯一杯だったんですよね。ただ走り終えて2日たったいまではまた自転車に乗りたい気持ちや、走りきれた素直な嬉しい気持ちがじわじわと生まれてきました。今回の走りがいつかまたどこかで自分を励ましてくれるのではないかとも感じはじめました。そして一応言っておくと走っているときは確かにとってもつらかったのですが、途中でやめたいなんて一度も思いませんでした!でもって、何が言いたいかというと、まぁ結局のところ自転車サイコー!と叫びたいわけです。いやいや、ほんとに自転車ってすごいです。直江津まで走ったときもそう思ったけれども、今回もやはり同じように思った。いろいろ泣き言みたいなことを書いてしまいましたけれども、それだけはしっかりと主張しておきたいと思います。

で、こっそり小声で言っておきたいのですが、これでもう○○は返上したいと思っております(苦笑)。しばらくは坂はいいかな、いや、ほんとに。