湘南発、六畳一間の自転車生活

自転車とともにある小さな日常

水芭蕉の尾瀬

2022年06月02日 | 山・山スキーなど
 若い頃、時々あったように、その日の夕方に決めて出かけた。一度も見たことがないので、いつか見ていたいと言っていた水芭蕉。そういえば僕も見たことないはずだった。少し前まであいにくな予報だったはずのここら湘南の天気。ふと予報を見ると午前中は晴れになっている。そしてなんとなく尾瀬の天気を調べてみると、やはり午前中は晴れ。どうする?と訊くと、「行く」と奥様。急いで支度をはじめた。

 赤城高原のサービスエリアで仮眠をして、空が明るくなり出してから鳩待峠へのバスが出る尾瀬戸倉へ向かった。

 6月に入り、登山道の雪はほとんど溶けたようだ。そこかしこに雪は残ってはいたけれど、雪で危険な場所はまったくなかった。



 鳩待峠から尾瀬ヶ原へ下り、はじめての水芭蕉。





 以前一度だけ来たときはGW、山スキーでだったので、雪のない湿原を見るのははじめて。



 さすが、尾瀬。規模の大きい湿原って途中で飽きがくるのでは、と思っていたのだけど、これなら飽きそうになんてまったくないぞ。




湿原の沼を泳ぐサンショウウオ

 と思っていたのだけれども、終盤は強行軍の疲労も相まって飽きた。いや、とっても素晴らしかったんですけどね。学生の頃にケニアのマサイマラ国立公園のサバンナツアーに参加したときも、2日目には飽きがきたものな。ライオンは寝てばかりだったし。いや、あちらももちろん素晴らしかったのですが。

 でも気持ち良い空の下、この時期の尾瀬ヶ原を歩けて良かった!



 帰路は懐かしの坤六峠経由で。1年のときの強化合宿男子班で、雨のなか上らされた峠。自転車の乗り方も下手だし、長丁場の峠の走り方にも全然無知で、とにかく疲れ果てた。そういえば、その日体調がいまひとつだった3年生の先輩は、吐きながら上っていたような。。。

 6月初旬の晴れた峠道は、明るい薄緑の新緑が素晴らしく、道の隣を流れる川もきれいで、いつか自転車で再訪したいと思わせる道だった。いつか、あるかな?二の舞にならないように体力つけなくては、だな。

2021.10.5 安達太良山

2021年10月05日 | 山・山スキーなど
 本当は昨日上ろうと思っていた安達太良山。しかし予報を見ると、この日の午前中までは天気持ちそうだし、安達太良山ならロープウェイを使って短い時間で上れるということで、予定外の磐梯山を追加し、安達太良を最終日にスライドしたのだった。



 写真は空が明るいときが多いのだけど、薄っすらとガス多めの天気。



 今年は紅葉が少し早いらしく、ちょうど良い見頃。ただそのかわり、そして手軽に上れる百名山ということもあり、人が多い。
 一昨日の好天の日曜日はいったいどれ程の賑わいだったのだろうか?



 のんびり歩いて乳首下。19年振り、2度目の山なのだけど、乳首の部分は思ったよりポッコリとした岩場になっていた。
 一方通行の復路の下りははしご場があったけれど、全然記憶がない。
 雪の季節だったということもあって、ピークには上らなかったのだろうか?
 いや、そんなはずはないと思うけれど実際はどうなんだろう?



 と、そんなことを考えながら山頂。

 残念ながらガス多め。でもガスが流れると紅葉に彩られた山肌が見える。
 くっきりとした青空、秋の陽射したっぷりだったら、紅葉ももっと映えるのにと思ったりもしたが、



 流れるガスの合間に時々現れる周りの風景を見ながら、



 これで充分、これはこれでいいじゃないかという穏やかな気持ちになったりしたのだった。



 早い時間のほうが予報的には良かったのだけど、下山をはじめると空が明るくなりだした。



 でも青空でて良かった。



 下山後はロープウェイ乗り場のすぐ近くにある温泉に入って汗を流した。
 明るい日差しのなか、きらきらした緑の木々を前にゆったりと露天風呂。
 3日間の余韻を味わいながら、そして前日観た岳温泉の湯守の人たちのことを思い出しながら、しばしお湯に浸かっておりました。



 帰宅後、前回の画像を確認。歩きはじめから周りの景色がもっと見えた気がしたのはその通り、やはり低い木は雪の下だったんだな。



 そしてやはり雪のせいで、乳首の岩場も雪で覆われていたのか。納得。

 3日間+1日、遅い夏休み、楽しめました。

2021.10.4 磐梯山

2021年10月04日 | 山・山スキーなど
 意地汚く宿の夕食を食べ過ぎ、苦しみのなかで眠りについたので、朝食は十分目以上にはならないように自重。
 しかし、しっかりお腹いっぱいになって、磐梯山に最短コースで上れる八方台登山口に向かった。

 9時前に登山口の駐車場に着いたときには、平日の月曜日だったけれどすでに満車。
 他の駐車場へはちょっと距離があって嫌だなと思っていたら、ちょうど一台出てくれた。
 小さなことだけど、ついてると喜び、空いたスペースに車を停めた。



 歩きはじめは気持ち良いブナの森のなかの林道歩き。
 自転車で走っても楽しそうだとすぐに思ってしまうのは悪い癖だ。



 見上げれば色づきはじめた木々の間から青空。



 そして標高を上げて見下ろせば色づいた山肌越しに、裏磐梯の桧原湖。
 ただ、今日は秋の陽気というような気候ではなく、ひたすら暑いのがつらい。
 降りてくる方たちの、山頂も暑いよ、風ないよという言葉にうへーまじかと思わざる得なかった。



 そしてようやく山頂。写真のなかのごみのようなものはおびただしいトンボ。

 ただ確かにほとんど風のない暑い山頂ではあったけれど、気持ち良く過ごせた。
 やっぱり外遊びは天気が一番だ。



 上りはほとんど樹林帯ばかりだったので、帰りはちょこっとだけ寄り道して開けた場所へ。
 初夏にはきれいな花がたくさん咲くのだろうな。



 振り返って上ってきた磐梯山。



 紅葉のピークはもうちょい先か。



 中ノ湯跡まで戻ってくればあとは気楽な林道歩き。
 とぼとぼ歩いて駐車場まで戻りましたとさ。

2021.10.3 一切経山・鎌沼

2021年10月03日 | 山・山スキーなど
 夕方、土湯温泉の共同浴場で汗を流し、浄土平の駐車場で車中泊。
 たまたま開催されていた天文台の星空観賞会に参加しようと列に並んだが、振り出した雨にすごすごと車に戻った。
 夜中トイレに起きたときには雨はあがり、くっきりとまではいかなかったけれど、空一面のきれいな星空を楽しめた。



 駐車場から短い時間で歩ける山ということで一切経山。
 紅葉がはじまったとは思えないような陽気のなかの山歩き。
 こんな山が身近にあるなんてなんて素敵なことだろう。



 酸ケ平の草紅葉。山もいいのだけれど、山の中の平らなところにある、お花畑とか湿原とか池塘とかはもっといいなと思う今日この頃。
 草花とか全然知らないにもかかわらず。



 上りはじめて振り返ると鎌沼。帰りに寄れたら寄ってみよう。



 ピークに到着してひと休みしてから上ってきたのと反対側のほうこうに歩いて行くと、息を吞むような青色の水面の五色沼を見下ろすことができた。
 どうやら魔女の瞳と呼ばれているらしい。下調べをしてこなかったこともあり、下手したら見逃すところだった。
 ちゃんと知識があったら、ここでひと休みしたんだけれどな。本当にきれいな水面だった。



 そして帰りに寄った鎌沼。ここは素晴らしい場所だった。沼の畔りを歩き、往路とは別のコースを辿ったのだけれど、
 歩きながら、心の奥底から静かな感動のようなものが体のなかに広がっていくのを抑えることができなかった。

,

 一切経山への道と違い人がそんなに多くなかったこともあり、何度も立ち止まり、景色を楽しみ、同じような写真を撮った。
 いつになったら、心ゆくまでこういう場所でのんびり過ごせるようになるのだろう。



 鎌沼に別れを告げて帰り道。気持ちのいい木道をいつまでも歩いていければいいのだけれど、
 ぬかるんだ山道を歩かなくてはならないのが残念。でもそうそう楽ばかりしてこの景色は味わえないか。

 いつかまた訪れたいぞ。

2015.10.13 二つの季節のたくさんの顔 赤岳

2015年10月13日 | 山・山スキーなど
 自転車仲間であり、いつもお世話になっているメガネ屋さんの店主であるakiraさんと赤岳に登ってきた。

 最初の計画では常念岳に向かう予定だった。しかしやってきた寒波のせいで、北アルプスあたりは予報が晴れから曇りにかわってしまった。なので、まだ晴れ予報の八ヶ岳や奥秩父あたりで日帰りできるどこかの山に登りましょうと、茅ヶ崎を出発した。赤岳に決めたのは、中央高速に入ってからだった。他の候補は、位置的標高的にまだもう少しのあいだ登れそう。赤岳もまだ大丈夫だとは思うけれど、標高的にこのあたりでは冬の訪れが早いほうだろう。ならば、今のうちに登ってしまいましょうということになったのだった。

 中央道からは南アルプスとそして富士山がばっちり。朝日を浴びたそれらの姿に気持ちが昂る。しかしもう少し進んで八ヶ岳が近づいてみたら、なんと八ヶ岳は雲がかかっている。一応晴れの予報だったので、赤岳に決めたのに。大丈夫だろうか?akiraさんからは、「今からでも甲武信ヶ岳間に合いますよ」といったことばも。信州側からの甲武信ヶ岳という案にも僕がひかれていたからなのだけれども、ここまで来たらやはり赤岳でしょう。晴れなかったとしても、それはそれで経験値を高める山行になるはずと思い、結局赤岳に向かうことにした。

 歩き出しは美濃戸口ではなく、赤岳山荘から。美濃戸口以降は荒れた道で、僕の車、そして僕の運転ではきついかなと思っていたけれど、楽勝だった。さすが。



 ガスのなかではないけれど、頭上には厚い雲。森の中は暗く、そして寒い。決して雰囲気が悪いわけではないのだけれども、今日は青空は無理かもしれないとお互い思わざる得なかった。



 天気はそんな感じではあったけれど、苔に覆われた木や岩のなかを歩くこのコースはとても良い感じだ。天気の良い休日であればもっとたくさん人がいるのだろうけれど、そんなに人が多くないのもいい。行者小屋まではそんなに道が険しくないこともあり、楽しく歩くことができた。



 これもナナカマドなのだろうか?ガスのなかの赤というのもなかなかいいなと思った。



 宮崎駿の世界みたいですね、とakiraさんに言われて気づいた景色。確かに。声かけてもらって良かった。



 こちらもakiraさんに言われて気づいた苔の実?自然のなかを歩くのはやはり面白いなぁ。



 行者小屋あたりはかなり冷え込んでいた。そしてこのあたりまで来ると頭上だけではなく、周囲も薄っすらとガスに包まれた。ベンチに座って、冷たくなった手で補給をしたりしながら、これはやはり今日は青空は無理だなとほとんど確信したところで、隣のベンチの男性が同行者に「山頂あたりでは晴れると思うんだよな~、賭けようぜ」と言っているのを聞いて、その前向きさに驚く。これはさすがに青空には賭けられないでしょ。



 行者小屋からは文三郎道を行く。地蔵尾根よりこちらのほうが険しい印象があったので、文三郎道から登って、地蔵尾根を下るというほうが安全かなと思ったのだ。



 行者小屋からはずっと急斜面。でも気温は低く、また風も少しあるので、汗はほとんどかかない。



 少しずつ標高をあげながら、気づいたらハイマツが凍りつきはじめているではないか。まだ10月13日なのに。



 周囲はすっかりガスに覆われている。頭上では強い風が吹いているようで、やたら雲の流れがはやい。そんななか、時折薄い雲越しに太陽の姿が見えたり、雲の切れ目からほんのわずかだけ青空が覗いたりはした。



 そして周囲のガスが薄くなると、



 木々には霧氷が。この時期、こんな景色はまったく想像していなかったので、これはこれで気持ちが昂ってきた。

 このあたりで、中岳との分岐まで登って引き返してきた人たちとすれ違う。分岐あたりでは体が飛ばされそうな風が吹いているという。



 そんな話を聞いているうちに、少しずつ青空が見えはじめ、



 今まではまったく見えていなかった中岳の姿も見えはじめた。ガスは依然として濃いけれど、引き返す気にはなれない。とりあえず分岐まで行って決めましょうと、このまま登り続けることにした。



 秋の山登りに来たのだけれども、



 辺りはどちらかというと冬の気配。これはこれでラッキーではないか。そしてこれで青空になったりしたら・・・



 ガスのなかに太陽。



 さぁどちらの勢力が上回るか。



 分岐の標識にはエビの尻尾が。確かに冷たくて強い風が吹いているけれど、引き返すほどではない気がする。天気も少しずつ良くなっている気もするし、ここから頂上まではもうそう遠くないはずなので、相談して頂上に向かうことにした。



 だんだんと青空が優勢になってきた。





 強い風が吹く中、凍てついた斜面を登るakiraさん。絵になる景色だ!



 空をすごい速さでガスが流れる。少し早い寒波に化粧をほどこされた周囲の景色がとても格好いい。



 赤岳にして今日は大正解だったようだ。



 左に小さく見える登山者の姿と見比べると、なかなかのスケールだということがより実感される。



 このあたりで、akiraさんが高度の影響か肺の痛みを訴えはじめた。まさか肺水腫ということはないだろうし、頂上まであと少しなのでakiraさんなら頑張れるはずと思ったけれど、無理そうであれば引き返すので言って下さいと伝えて、akiraさんのペースで山頂を目指してもらった。えっと下山後、「あのとき全然引き返す気なかったですよね」と言われてしまったけれど。いやぁ、akiraさんなら登れるはずって信頼していたってことですって。



 岩場を登って山頂を目指す。



 なんかすごく格好良いんですけど。



 ホント、いい日に来れた。



 登ってきた岩の斜面。



 そして頂上まであと少しの踊り場で姿をあらわした富士山。青空、そして周りの景色も見えてきたじゃないですか。行者小屋で賭けようと言っていた人、すごいなとakiraさんと笑いあった。



 そして最後の岩場、



 階段を登り、



 青空にかわった山頂にakiraさんと一緒に立った。やった~



 山頂からの景色。大展望とはいかなかったけれど、候補だった奥秩父方面は良く見える。あちらはずっと晴れだったのかな。でも、やはりいろいろな景色が楽しめた赤岳で今日は正解だったのだと思う。



 こちらは川上村方面。中央奥に見える岩々した山塊は妙義の山だろうか?



 そして見下ろした黄葉。



 またガスが濃くなってきた。もしかしたら最高のタイミングで頂上に立てた?



 赤岳頂上山荘は冬の気配。



 先週の穂高にもこんなのなかったけれど、北アルプスは少なくとも今日は冬の気配ではなく、初冬の景色になっているだろうな。



 下山は慎重に。見えて来た展望荘。記憶していたより、急な斜面だった。



 稜線を離れる前に富士山と、



 奥秩父の山々の姿を目に焼き付けた。



 地蔵尾根と横岳との分岐。嘘でしょ?と言われそうだけれども、近づくまで小柄な女性が休憩しているのだと思っていた。目の前はガス、そして冷たい風が吹いているのでおかしいとは思ったのだけれど。



 こちらも記憶していたより、ずいぶんと急な斜面だった。ただそんなには長い下りではなくて良かった。



 せっかく火器の準備をしてきたことだしと、行者小屋に戻ってきて温かいものと一緒に最後の補給。自分のカップ麺に加えて、多めに持ってきたというakiraさんからおにぎりとサンドイッチをもらって、すっかり満腹になってしまった。



 登るときは見えていなかった横岳周辺の山々、



 そして主峰である赤岳。



 樹林帯に入る前にしっかり目に焼き付けた。



 帰りはさすがに疲労を感じながら来た道を歩いた。紅葉はやはり陽射しがあったほうが映えるなぁ。



 途中、岩場で足を滑らせて、転倒を避けるために変な挙動をして、後ろのakiraさん大笑い。しばらくそれをネタに2人で笑いながら歩いた。



 そして16時過ぎに駐車場に帰着~。いやぁ、お疲れさまでした。寒波のおかげもあり、充実感いっぱいの印象深い山行になりました。





 最後はすっかり青空にかわっていた。周りの木々を眺めながら帰り支度。

 お疲れのところ、帰りも運転はakiraさんにお願いしてしまった。さすが、僕の運転とは全然違う。この軽がこんな走りをするとはまったくもって思っていなかった。楽しい1日をありがとうございました。またよろしくお願いします!

2015.10.05 ぎりぎり秋の穂高へ 1日目

2015年10月06日 | 山・山スキーなど
 真夏の3回の沢のあとは、またしばらく自然から遠ざかってしまった。そろそろと、気持ちがそわそわしだしていた。ちょうど天気の良さそうな5日、6日の休み。久し振りにテントを持って、以前から行きたいと思っていた場所へ行こうと思った。温泉の湧く山の斜面。そんなにたくさん歩かなくてもいい。温泉の横にテントを張って、山の水を沸かして淹れたコーヒーでも飲みながら温泉三昧だ!とかなり前のめりになっていた。

 しかしながら、なんたることか、家を出る直前にそこに至る道の途中にある橋が数日前の大雨で流されたことを知る・・・

 気持ちは前のめりだったものの、毎度ではあるけれど長距離の運転は面倒に思っていた。だから山行きを中止することも考えた。でも、やはりこの天気の良さそうな休みに出かけないのはもったいない。とりあえず準備も済んでいるのだしと、結局秋の景色の有名なあの場所へ向かうことにした。下調べはほとんどしていないけれど、メジャーな場所だしまぁなんとかなるだろうと思って家を出たのだった。



 朝の上高地。まだデジカメなど持っていない時代の残雪期に穂高を登って以来だから、15年振りくらいだろうか?あいかわらず良い場所だ。しかし山のなかへ入っていきたい人間からすると、なんとなくあまり長居したくない場所だったりもするのが不思議だ。



 コースは迷ったけれど、岳沢経由で。最初は楽な横尾経由で涸沢から奥穂をピストンで考えていたのだけれども、残雪期に登ったときと同じコースになってしまうので、家を出る直前にみつけたヤマレコの記録を参考に、岳沢~前穂~吊り尾根~奥穂というコースを歩くことにした。

 朝の光、青空、色づきはじめた木々が嬉しい。



 岳沢への道へ入る。



 そして久し振りの重い荷物を背負って少し登って、開けた場所。



 目の前に広がった秋色に彩られた沢を見入って、しばし休憩。ただ確かに嬉しい景色なのだけれども、もっと空がくっきりと青かったら、さらに紅葉が映えるのになぁと心のなかで思ったりしていた。そしたら、近くにいた女性が僕が頭のなかで思っていたのと同じようなことを口にして、「あんた、いつも恵まれ過ぎてるからそんなふうに思うのよ」と仲間にたしなめられていた。天気が良い日を選んでいるからだけど、そう、確かに今まで恵まれ過ぎだったことが多いのだ。



 沢沿いの登山道をしばらく登っていくと岳沢小屋が見えてきた。なかなか良いところに建っている小屋ではありませんか。



 小屋の前のベンチで補給をしてまた歩きだす。小屋の周りはとても紅葉がきれいだ。



 小屋から前穂へ向かって歩き出す。



 結構長い梯子。





 直前に決めただけにコースに関して予備知識はほとんどなかった。思っていたより岩々したコースで少しびっくり。そして少しわくわく。



 紀美子平にザックをデポして前穂を目指す。



 いやぁ、結構な高度感ではないですか。ホントこんなコースとは思っていなかった。ただ程よい厳しさで、今日の天気であればすごく楽しく登れる。悪天候では登りも下りも勘弁願いたいけれど。



 下ってきた人と道を譲りながら前穂の山頂を目指す。



 こちらは明神?かなり険しそうだ。



 そして前穂山頂。あ~、楽しみにしていた槍や北ア北部、後立山方面はガスで見えないではないか。残念。まぁでもガスに包まれた山頂でないだけラッキーだと思っておこう。



 前穂から紀美子平に戻ってきて、今度は本日のメインである奥穂を目指す。いい感じの岩場のトラバース道を歩く。



 こちらは先ほど登ってきた岳沢。



 そしてこちらは前穂山頂からは見えなかった、一応本日の目的地である涸沢!少し色褪せた感じだけれども、なんとかぎりぎり紅葉に間に合ったようだ。



 だんだんとハードな岩場になってきた。ヘルメットを被っている人、被っていなくてもザックにつけている人が多い。



 背中にはテン泊装備が入ったザック。かなり疲れがではじめていた。幸い怖さはあまり感じていなかったけれど、しっかり集中せねばと気を引き締めた。



 奥穂が近づくにつれてガスが濃くなりはじめた。



 山頂付近。薄くなったときに写真を撮っているわけだけど、山頂あたりはほどんどガスに包まれていた。そして風が強く、とても寒い。周りの人もしきりに寒い寒いと言っていた。というわけで、1枚写真を撮ってもらって、すぐに下山。景色は残念ではあったけれど、無事山頂を踏めて良かった。それにたまにはこういうなかも歩かなきゃね。



 まだ10月の上旬だけれども、北アルプスはもういつ冬がやってきてもおかしくないのだなと思った。



 ガスのなかを慎重に下って、ようやく穂高岳山荘。ここで少しひと息。以前残雪期に登ったときより、だいぶ時間がかかった気がした。



 穂高岳山荘のテン場に泊まることも少しだけ考えたのだけれども、やはり紅葉の涸沢でテントを張りたかったので、あと少し頑張って涸沢まで下ることにした。眼下に見えるテント場。安易に考えていたのだけれども、これが長かった。久し振りのテント泊、さらに結構なロングコースにだいぶ消耗もしていたのだとは思うけれど、とにかく長く感じた。体のあちこちが痛い。普段は痛まない体の脇が痛むのは、上半身も使う必要のあった岩場のせいだろうか?結局最後まではもたず、テン場まであと10分くらいの場所でザックを降ろしてアミノバイタルゼリーを補給。これでだいぶ生き返った気がした。

 平日だというのに涸沢のテン場は大賑わい。石がゴロゴロしていたけれど、適当な場所を見つけてテントを張り、ひと息ついてから受付をしにいった。そして水の補給とトイレを済ませて、夕食の準備をしながら大事なものを忘れたことに気づく。どこをどう探してもヘッドランプがない・・・。どうしよう。かろうじてまだ明るい。急いで夕食の支度をして、もう一度水を汲みに行って、トイレを済ませた。夜中トイレに行きたくならないように、水分補給は控えめにして、日が落ちるのに合わせてシュラフに入った。久し振りに読み返そうと文庫本を用意してきたんだけどなぁ。



 さぁ長い夜のはじまりだ。

2015.10.06 ぎりぎり秋の穂高へ 2日目

2015年10月06日 | 山・山スキーなど
 日付がかわる前、ひどい体の震えで目覚めた。熱があがる前のような嫌な感じの悪寒。しつこい喉風邪が治り切っていなかったのでもしかしたら熱が出るのかと少し不安になったのだけれども、あらためて寝袋にしっかりくるまっていたら震えも寒さもおさまった。良かった。

 夜中の2時半頃。水分を控えていたにもかかわらず、トイレに行きたくなった。しばらく我慢をしていたのだけれども、朝までは到底もちそうもない。外は月明りと星のきらめきのおかげか、まったくの暗闇ではない。これならと思って、そこそこ距離のある小屋のトイレに向かおうとするが、不安定な石ばかりの道を歩くのはやはり難しく、しばし瞬く星を眺めてからテントに戻り、どうしてものときはと考えていた手段をとることにした。

 夕飯に食べたアルファ米。お湯を注いでつくるわけだから、当然入っていたビニールに水を入れても問題はない。なんとか危機を乗り越えた。

 そんなこんなで迎えた朝。朝食はすでに済ませていたので、コーヒーを淹れて、モルゲンロート目当てに外に出た。



 そしてコーヒーを飲みながら朝日に照らされた周りの山々を眺める。こちらは奥穂。



 奥穂から涸沢岳、涸沢槍。



 涸沢小屋の向うは涸沢槍から北穂。



 マイテント越しに奥穂。20年以上前に買ったテント。残念ながら今回が最後になりそうだ。あちこち不具合がでている。



 それにしても素晴らしい景色だ。淹れたときは熱々だったコーヒーはあっという間に冷めてしまったのだけれども、その冷めたコーヒーを飲みながらしばらく見入ってしまった。



 下山は、パノラマコース。名前の通り、素晴らしい景色のなかを歩くコースのようで楽しみにしていた。



 で、実際これが素晴らしいコースだった。コースの入り口にあったように、所によっては前日の岩場以上に危険じゃないかと思った場所もあったのだけれども、景色も雰囲気もほんとうに素晴らしかった。



 まずは振り返った穂高方面。穂高の山々はもちろんだけれども、涸沢を穂高方面からとは別の角度で上から眺められるのが良かった。



 そして昨日は見ることができなかった槍ヶ岳。ここまで槍ヶ岳を見ずには帰るのはやっぱり残念だったので、見れて良かった。



 ただコースはちょっと難しい場所もある。たくさん人歩いていたけれど、天気悪い日は避けたほうがいいかもしれないし、雪のある時期は少なくとも僕には絶対無理だと思った。



 岩々した場所も悪くないけれど、こういう雰囲気のほうが好きかもしれない。



 槍をアップで。殺生ヒュッテ、肩の小屋もしっかり見えていた。こうして見ると殺生ヒュッテまでもかなり険しくてちょっとびっくり。



 贅沢なくっきりとした青空と、秋の終りを感じさせる葉の少なくなった木。



 自転車でも山歩きでも、次の景色への入り口ではいつもわくわくだ。どんな景色が飛び込んでくるのだろう、と。



 あぁ、こちらも好きな景色だ。



 青空に映えるナナカマドの実。



 振り返るとまだ見えている奥穂~涸沢岳~北穂。



 このあと下る道に金色の光が射し込んでいた。



 湧き出てきたガスもまたよし。



 さらなる展望を求めて屏風の耳に向かう。



 雲海。 



 屏風の耳は人がいっぱいだったので、人のいない小ピークまであとほんの少し歩いた。

 前穂~吊尾根~奥穂と歩いてきた場所が良く見えた。実感はあまりなかったけれど。





 最後しっかり目に焼き付けよう。



 分岐からは黄色い斜面の下り。



 まだ先は長いのに、すでに余韻に浸りはじめていた。





 だんだんと黄色から緑へ。





 もう少しで横尾からの道に合流。



 その手前で脇の森のなかでざわめきが。前を歩いていた女性の体が強張る。決して小さなざわめきではなかったので、僕も焦った。結局猿だったのだけれど、結構びびった。



 休まず行けるかなと思っていたのだけれども、疲れが出てきたので徳沢で休憩。サッポロ一番味噌ラーメンに餅を入れて食べたのだけれども、うまかったなぁ。食後は贅沢にコーヒー。僕はここのテン場の雰囲気が好きなのだ。



 補給後は、近づく終わりを残念に思いながら上高地まで歩いた。



 そんなふうに感じることってあまりないのだけれども、山旅が終わってしまうのがすごく残念だった。



 それだけ充実した山歩きだったからなのかもしれないな。



 考えていた場所が駄目で、直前に決めた穂高&涸沢だったけれど、心も体もものすごく満足できた。最近は軽装での山歩きばかりだっただけに、久し振りのテント泊も、当然荷物は重かったけれど、とても楽しかった。いい山登りができて良かった。

2015.08.04 真夏の丹沢で遊ぶ、その3 小川谷廊下

2015年08月04日 | 山・山スキーなど


 今日は一昨年緊張しながら訪れた小川谷廊下へ。今回は少し遅い歩き出しで、10時過ぎにカブを停めた場所を出発した。

 途中、林道脇から斜面を下り、こんな感じの場所を3カ所降りて、沢へ。そしてその沢を少し下って、小川谷に入った。



 最初の滝。右の少しオーバーハングした壁を登る。一昨年はじめて登ったときより、スムーズに登れた。



 二つめの滝。一昨年は足場がわりに置かれた倒木と残置シュリンゲを使って右側を登った。でも今年は左側を突っ張りでチャレンジするつもりだった。でも水流が強すぎて左側は全然無理だった。



 そんなわけで、倒木ではなく鉄梯子が置かれた右側から登ったのだけれども、水の勢いがすごくて鉄梯子を使ってさえも登るのが結構大変だった。すでに全身ずぶ濡れだ~





 一昨年は陽射しが少なくて、丹沢一の美渓を堪能といった感じではなかった。楽しい沢ではあったけれど、美しさにたいする素直な感動はなかった。



 ただ今回は違った。光が射し込み、岩や水、苔、木々などの色がはっきりとした谷はまさに美渓で、素直に感動したし、こんな場所が丹沢にあることを心から嬉しく思った。



 なんてことはない、自然の造形のひとつひとつがどれもきれいに感じた。









 苦労した記憶はないのに、登るのが大変だった滝。滝の左の岩に取り付いたのだけれども、ルートを見つけられず岩のバンドから一度降りた。前回はどうやって登ったのだろうか?今日の水量では直登は無理だけれども、前回は突っ張ってなんてことはなく登れてしまったのかもしれない。結局もう一度バンドに登り、それらしいホールドを見つけて、左上方に向かって登って岩の上に出たのだけれども、エスケープしずらい沢だけに結構焦った。



 苦戦しただけに、滝の上に出て、このやろ的に一枚。登れて良かった。







 しかし、ほんとうに変化に富んだ沢だ。



 次々に変わる景色のおかげで、まったく飽きがこない。



 登る人がいるというのが信じられない滝。今回も一応チャレンジしたのだけれども、全然駄目だった。ここは巻き道も少し危険だったりするのだけど、今回はまったく怖さは感じることなく通過できた。



 ここは滝の下をくぐって、右側から岩を登った。



 上から見ると、今そこにいたはずなのに、まったく覚えのない幻想的と言えなくもない景色が広がっていた。



 つるつるの大岩と呼ばれる、巨大な一枚岩。



 一応チャレンジしてみたものの、やはりロープがなければ登れない。固定ロープがないときは、どうやって突破したらいいのだろう?案外裸足になれば登れたりするのだろうか?次回試してみようかな。







 大岩のあとは、ほんとうにここは丹沢か?的な景観の石棚のゴルジュのなかを歩く。



 足跡から何人かの先行者がいるなとは思っていたけれど、3人の先行者の姿がようやく目に入った。





 石棚のゴルジュを抜けると20mの大滝。2段目は直登は無理で、写真中央の岩場を登る。ここで3人に追いついた。ロープを出そうとしている3人に「お先にどうぞ」と言われて、岩に取り付いたらいきなり手が滑って岩から手が離れた。あぶね~と思いながら、グローブをつけたら今度は大丈夫だった。高さはあるけれど、ホールドも足場もしっかりしているので、そんなに怖さを感じずに登れるのがありがたい。



 澄んだ深い淵。一緒に巻いてしまうのだけれども、巻いてしまうのがもったいなく感じる魅力的な淵だ。でも、ここに入って万一流されたら大滝の上から叩き付けられるわけだから、やはり巻くのが正解だな。そもそもこの淵に降りるにしても、ロープを使うか飛び込むかしないと無理そうなわけだし。





 大滝を越えるとあと少し。



 少し曇ってきたけれど、最後まで飽きの来ない景観が続く。







 最後の少し難しい滝。水流に近づいてからが前回は大変だったけれど、今年は水流に近づくまでが大変だった。なんでだ?水流に近づいてからは、しっかりしたホールドを見つけることができて、前回の緊張が嘘のようにあっさりと滝の上に出れた。



 そしてゴールの壊れた堰提。いやぁ、やはり小川谷廊下は楽しい。それに今回は丹沢一の美渓と言われるその景観も存分に楽しめた。こんな場所が県内にあることをほんとうにありがたく、そして嬉しく感じた。



 来年もぜひまた来ようと思いながら、山のなかの作業道を歩き、出発地点まで戻った。

2015.08.01 真夏の丹沢で遊ぶ、その2 モロクボ沢~畦が丸

2015年08月01日 | 山・山スキーなど


 一向におさまらぬ猛暑、酷暑。日常生活はきついけれど、沢登りにはこの暑さはありがたい。より、快適なフィールドに感じられるのだから。

 寝不足気味で体調は今ひとつだったのだけれども、せっかくの暑くて天気の良い休日なのだからと、はじめてのモロクボ沢に向かった。





 初級者向け、つまりボク向きの小振りな沢ということで、実際歩きはじめは水の量も少なく、はじめての沢にもかかわらず、緊張感のようなものはほとんど感じることなく、のんびりした気持ちで歩くことができた。



 ただ少しずつ雰囲気がかわりはじめる。小振りながらも水の量と深さが増してきたのだ。



 これは暑い季節に来るのには最高な沢だなと思いながら、一応この沢の核心である35mの大滝に到着。少し離れた場所からも滝を落ちる水の音がすごい。



 この小振りな沢にこんな立派な滝があるなんてと、存在は知っていたにもかかわらず驚く。

 この滝はもちろん直登は無理で、左の岩場を登るのだけれども、ここはちょっと緊張していた。なにせ35mという高さがある。難しくなかったとしても、高所恐怖症の僕は高度感にやられてしまうかもしれないと思っていた。

 その岩場。難しさはそんなに感じなかったけれど、寝不足気味で少しバランスがおかしくて、かなり怖かった。体調に不安があるときは、沢登りは控えたほうがいいのかもと少し反省した。



 35m大滝の落ち口。安全地帯についても、まだ少し緊張感が残っていた。





 大滝のあとに現れた小さな滝。流れる水がとてもきれいに見えた。





 次々に現れる深い淵。



 素通りするのはもったいなくて、空身になって何度か飛び込んだ。





 ここも深かったし、







 ここもかなり深かった。







 さらに驚いたのは、魚影が濃かったこと。経験が少ないから比較の対象も少ないわけど、沢登りとして訪れた沢では今までで一番の魚影の濃さだった。

 途中、岩の下に逃げた多分山女と思われる魚の手掴みを試みたのだけれども、まったく捕まられず。一度だけ指先に触れたのだけれど、その感触に驚いてしまって捕まえるどころではなかった。非ワイルドで軟弱な自分にがっかりである。



 なんとなく自然に歩いている風な一枚。セルフタイマーで普通に立って写るつもりだったのだけれど、石ごろごろの沢底にバランスが定まらないあいだにシャッターが落ち、自然に見える写真になっていた。



 ここからはだんだんと水流が少なくなっていった。







 岩にへばりつくように咲いていた、指の爪くらいの小さな花に魅かれた。なんという花なんだろう?











 いよいよ、ここから沢の詰め。ふかふかした土の斜面が歩きにくい。でも沢の詰めとしては楽なほうだろう。



 きつくはあったけれど、そんなに大変な思いはせずに尾根に到達。ただここはただの尾根で、道ではない。しっかり登山道に合流するまで、やはり緊張は消えなかった。



 その後無事登山道に合流して、はじめての山頂である畦が丸にたった。



 そして、西丹沢自然教室へ下山。下りもなかなか楽しめる道だったけれど、体調のせいかちょっときつく感じた。帰宅後、ストレッチマットの上で体をほぐしながら、そのままうとうと。その後目覚めてからしばらくのあいだ、ひどい疲労感のために体を動かすことができなかった。自分が感じた以上に、体に負担がかかったのかもしれない。

2015.07.26 真夏の丹沢で遊ぶ、その1 檜洞沢

2015年07月26日 | 山・山スキーなど


 実際に開脚の突っ張りで滝を登っているときに撮っているのでやらせではないけれど、作為的ではある写真。「ファイト~、いっぱ~つ!」とは叫んでいません。



 梅雨明け後の爽やかな空気をほとんど感じることなく、いきなりの猛暑、酷暑。これは沢に行くしかないと、しばらく外遊びから遠ざかっていたので不安もあったけれど、去年一昨年と訪れている檜洞沢に今年も向かった。

 朝の林道。さすがに爽やかだ。一昨年去年はゆっくりではあったけれど、走った。でもここ最近はランニングじたいあまりしていないので、今年はのんびり歩いた。もちろん、それはそれで気持ち良いのだ。



 いつも少し違う色。でもいつも良い色。



 ここから沢に入る。毎回ちょっと迷って到着する。来年はスムーズに来れるはず。



 最初の滝。いきなり濡れたくないので、右側をへつるのだけれども、これが結構難しくて、確か去年はドボンしたはず。今年はなんとかドボンせずにへつって、登れました。



 澄んだ水の廊下。



 今回で3回目だけれども、全然飽きを感じない。まぁ年に1回であれば当たり前なのかもしれないけれど、毎年1回は来たい沢である。去年もこの沢にだけは来たんだよな。







 この滝は登れなくて多分左を巻いたはず。でも泳ぎ覚悟で滝に近づいたら、左側を登れそうな気も、と今写真を見ながら思ったりしてる。来年は試してみようかな。



 このあとは普通に登れる小さな滝ばかり。



 どこまで行ってもきれいな水に感動。





 通称、テーブル岩。





 いつからあるのだろうと思うような大きな岩がいくつか。





 登れない滝がもうひとつあったはずと思いながら、終盤近くのこの滝までやってきてしまった。登れない滝は、この4つ連続する最後の滝だった。

 一昨年は左から登ろうとしたのだけれども途中で諦め、右から巻いた。去年は最初から巻いたのだけれども、どちらから巻いたか忘れていて左から巻こうとして悪戦苦闘のあげく失敗。その後、右からあっさり巻いて、こちらからが正解だったことを思い出したのだった。

 去年の記憶は結構しっかり残っていて、今年はしっかり右から巻くつもりだったのだけど、滝下から見上げると、開脚では無理だけれど、両手両足で、それぞれ壁の両端を突っ張れば登れそうな気がしてチャレンジしてみた。そうしたら、足を動かすとき水流に負けそうになったりして、緊張感は強かったものの、なんと直登できてしまった。直登は無理な滝だと思っていたので、結構嬉しかったのだけれども、冷静になって考えると、単独なのだからしっかり巻くのが正解だったのかもしれない。



 沢も細くなり、そろそろあまり楽しくない詰めのはじまり。



 沢のなかは倒木がひどく歩きにくく、



 沢を離れてからは群生するアザミの棘に苦しめられるのだ。もしかしたら、もっと効率的に登山道に合流する方法があるのかもしれないけれど、あまりうまくいかない。一昨年が一番ひどくて、去年は思ったより早く登山道に合流できたのだけれども、そのかわりアザミの密集度合が一昨年よりひどかった。



 今年はその真ん中くらいな感じで登山道に合流てきたのはよしとするのだけれども、時期的なものなのかブヨがすごかった。顔を含めて、全身10カ所くらいを刺されて3日くらい痒みがひかなかった。



 夏の空が気持ち良いのだけれども、沢を離れてからは暑さで汗だく。気持ちわる。展望のない山頂も爽やかな空気とは程遠かった。



 山頂を少し下ったところで富士山。今日は無理かと思ったけれど、見えた。やっぱりちょっとでも富士山が見えると嬉しい。



 登りはひどく暑く感じたのだけれども、下りはそんなにひどい暑さを感じることはなかった。



 このあたり、去年に比べてだいぶ登山道が整備された感じだ。それはいいのだけれども、おかげでミスコースしたのではと不安になり、少し登山道を戻ってまた大汗。最初の年に分岐を見過ごしたので、ちょっと神経質になっていたのだ。



 でももちろん、間違っていなかったようで無駄に体力を使い、無駄に汗をかいてしまった。





 一昨年分岐を見逃した場所にも、しっかりとした道標ができていた。ここからはマイナーコースでかなり道が悪い。下りも大変だし、登るのもできたら勘弁して欲しい感じの悪い道だ。来年は違う道で下ってみようかな。結構消耗するのだ。



 そんな感じでようやく林道に降りて来たら落石で道が遮断されていた。歩きだから何の問題もなかったけれど、ちょっと驚いた。



 途中、道から水が湧き出て川のようになっていたのけれど、この水が冷たくて驚いた。沢の水より全然冷たい。痛いくらいに足が冷えた。



 最後、出発地点に戻る前に、その冷たい水を利用して汚れたシューズをきれいにした。最後どこかで洗いたいなと思っていたので、ちょうど良かった。水がたまっている場所でついでに首筋を冷やし、顔も洗ったのだけれども、これがまた冷たくて気持ち良かったりしたのだった。