今年の渋峠は本当に素晴らしかったのだけれども、白根山のあたり、そして峠のあたりにいるときには実はちょっともやもやした気持ちがあった。
考えていた時間より少し遅めの出発になった時点で、できたら走れればと思っていた奥志賀林道も、それからこちらは今年はぜひとも行きたいと思っていた関田峠もちょっと無理だろうという気持ちになっていた。出走が遅くなったばかりか、右膝とアキレス腱の痛みがやはり心配だった。しかしそれ以外の条件は今年は本当に恵まれているのだ。荷物と自分の体重の軽量化が約7kg。雨の心配なんてまったくなさそうな素晴らしい天気。なのに思うように走れない。できたら2010年のときより、僕が考える完成度の高いコースに近づけたい。なのに時間的にも、コンディション的にも躊躇してしまう自分がいる。
関田峠に行けないかわりに、まだ登ったことのない草津白根山の山頂でも踏みに行くかと実は途中自転車から降りたりもした。渋峠では、今年は時間的な余裕が結構ありそうだから、急いで暑い下界におりずに涼しい峠でのんびりするかとも思った。でも結局すぐに走り出し、下り出した。現実的にほとんど関田峠は無理だと思っていたにもかかわらず。
とにかく今に集中しよう!
そう気持ちを切り換えて長野県に突入。
こちらも素晴らしい景色だ!
路面が完全にドライだったせいもあり、下りは本当に快適だった。それに加えて今日の僕は、自分比だが下りがきれている。ちょっときつめのコーナーも内腿でサドルを内側に小突いて膨らみを抑え、必要最小限のブレーキでやや自己陶酔気味にかなり良い感じに湯田中まで下っていった。
いつもひと息つく湯田中のセブンイレブンも今回は素通りした。下りながら残っている補給食を頭のなかで確認。おにぎり1個。ミニ羊羹1個。粉末のスポーツドリンクが2袋。種抜きの梅干が10個くらい。アミノバイタルの粒が5個くらいまだあるだろうか。湯田中のセブン以外にもこの先にはコンビニはある。さらに足をかばいながらの走行を続けていたこともあって、体力的なダメージはいつもより少ない感じだ。だったらしばらく休憩は控えて、このままもう少し行けるところまで行ってしまおう。
とそんなことを思ったのは、長い下りのおかげなのか正直理由はまったくわからないのだけれども、下っているあいだに膝とアキレス腱の痛みがかなりやわらいだからだ。緩斜面になって少し力を込めてペダルを踏んでも一応大丈夫そうだ。だったらとりあえず飯山街道が上越方面に進路をかえる分岐まで頑張って、そこで最終的な判断をしようと思った。
そこからはガーミンで確認しなければ下りとはわからないかもしれないようなゆるい下りを、姿勢を低くしてこれまでのいくつもの上り以上の心拍数で走った。そしてもう気持ちは決まっていたのだろう。分岐でも足をゆるめることなく、そのまま素通り。集合時間までの到着は多分無理だと思う。でも今回を逃せば、もしかしたら自分が思い描くコースを完走するチャンスはもうないかもしれない。自転車の神様もきっとこのチャンスを逃すなというつもりで足の痛みを一時的に緩和させてくれたのだろう。
ただそんな前のめりな気持ちで走っていたにもかかわらず、しっかりコースを把握していなかったせいもあり、関田峠までの上り口までで少しコースミス。まぁでも多めにみてもきっと時間的には10分程度。弱気にならずに前へ進んだ。
関田峠に向かう前に、ここらが最後かと思われるコンビニに寄って水分補給。生温かいボトルの水では全然体に染み入ってこない。その生温かい水も残りわずかだ。炭酸ではなく、しっかり冷たいスポーツドリンクを流し込んだ。そして、確かこのときだと思うけれどもSNSに「飯山街道のつもりでしたが、関田峠向かってます。時間的に相当厳しいかと思われます。解散に間に合いそうもないときは、書き込みの上、直接宴会会場に向かいます!」と書き込んだ。
千曲川沿いの道。関田峠への上り口まであとわずか。
15:03、関田峠に向かって上りはじめる。標高差約800m。確実にスピードは一桁台、それも7~8kmくらいでしか上れない。1時間で可能な獲得標高は頑張って500mくらいだろうか?とにかく頑張ろう!
お昼頃に比べれば全然ましなのだろうが、それでも照りつける陽射しがきつい。
そしてだんだんと稜線に雲がかかる。う~ん、これは峠からの日本海の展望は無理かもしれないと思う。でもいい、ここまでずっと素晴らしい風景を堪能してきたのだ。これで最後の最後の関田峠からさえも素晴らしい展望を望むなんてそれは贅沢ってもんだ。ここまで来たらあの雲が雨雲であっても構わない。とにかく無事峠を越えて、船見公園まで走れればそれでいい。
ここらで目の前を小動物が横切った。一瞬リスかと思ったが、リスよりも細身で胴も長かった。そして野性味のある雰囲気だった。イタチ?この関田峠で2007年に埼玉のテツさんがチャウチャウ・・・ではなく
熊を目撃している。味わい深いわりには開放感のある道なので、もし熊に出会ったら逃げ場がないような気がして少しだけ不安な気持ちになった。
黙々と上りながらも途中で何度か後ろを振り返る。きついし、ゆっくりとしか上れないけれども、でも峠までは頑張れそうだ。というか、頑張る!
そして遂に16:34に関田峠着。やった!
やはり峠からの展望を楽しむことはできなかったけれども、ここに来れただけで充分だ。多分僕はこの関田山脈あたりの雰囲気がとても好きなのだと思う。
さぁ、ここから船見公園までだいたい35km。SNSに「関田峠着。ガスで展望なし。船見公園目指します(^_^;)」と新潟県入りの報告をしたのが16:37。多分18:45の解散までには間に合うだろう。でもせっかくだから皆と夕日も見たいし、できたら集合時間である18:00までに到着もしたいぞ。もしかしたらぎりぎり間に合うかもしれないような時間に峠に到着したので、そんな欲が出た。
さぁ、どうなるか。
急いではいたけれども、光ヶ原高原では自転車から降りた。やはりこのあたりの雰囲気は素晴らしい。ただこれ以降は2007年に気付かなかったいくつかの素敵な風景に出会ったにもかかわらず、写真のために自転車を止めることはしなかった。棚田の稲が傾いた陽射しを受けて黄金色に輝きながら揺れ動いていた。ここは、と思ったのだけれども、ちょうど勾配のきつめの場所だったこともあってあっという間に通り過ぎてしまった。
渋峠からの下りと同じように、気持ちの良いワインディングを積極的に下っていったのだけれども、一ヶ所コントロールに失敗して膨らみすぎた。どきっとしながらラインを修正し終えた直後に対向車がやってきた。ちょっと調子に乗りすぎた。それ以降は気持ちが萎縮して大胆なコントロールができなくなり、スピードを落として慎重に下った。
峠道を下り終えてから船見公園までは一番心拍数があがった区間だ。ただあと少しでゴールという昂揚感もあり、気持ち良く走れた。今年は日本海までの最後のストレートが向かい風だったらしいけれども、僕が走った時間はそんなにひどい向かい風は吹いていなかった気がする。
18号のバイパスに入る前に、駆け込むように自販機のある場所に止まって再び冷たいスポーツドリンクを補給。暑さがきつい場所では生ぬるいボトルの水では全然体が潤わない。半分量を飲み干し、ペットボトルを背中のポケットに突っ込んですぐにまた走り出した。そして何度か背中のポケットに手を伸ばしてちょうどすべてを飲み干したあたりで、
この場所へ到着。17:48のことだった。やった、なんとか集合時間にも間に合ったようだ・・・。よし!
船見公園に到着するとちょうど集合写真の撮影中だった。というより、これよりだいぶ前に集合写真を撮りはじめたのに、そのあとも僕のようにぱらぱらと到着する人がいるので、何枚も取り直していたようだ。いやいや、申しわけないです。
こうしてここまで走ってきて、今年も皆とこの船見公園で会えて本当に良かった!
そして周りの人と旅のことを話しながら日本海に沈む夕日を眺めることができたことが本当に嬉しかった!幹事のmasaさん、林檎さん、それから参加した皆さんに感謝!
それから・・・、僕もこの自転車も頑張った!
馬越峠からの下りのデータをとり損ねてしまったのだけれども、太平洋から日本海までこんな感じのコースを走った。全然長い距離を走っていなかったので、その点についても不安はあったのだけれども、たくさんの素晴らしい景色を楽しみながらなんとか走り通せた。それは僕にとってかなり嬉しいことだった。
2日目の走行距離194.81km。太平洋から日本海まで計442.82kmの旅だった。
走り終えたあとはしばらく自転車のことは考えたくなかったけれども、来年も走る!
んだろうな~(^^;