湘南発、六畳一間の自転車生活

自転車とともにある小さな日常

2006年06月16日 | 日常生活
今年は蛍を観に行こうと思う。

MTBで良く訪れる里山の水辺ではこの時期蛍が舞うらしい。そのことは数年前から知っていたのだけれども、日が暮れてから真っ暗な山道に入っていくのに抵抗があって、これまで足を運んだことがなかった。

自転車で走っているときに、一度だけ蛍の大乱舞に遭遇したことがある。とてつもなく暑い夏の日、友人たちとフル装備のランドナーで河口湖を目指していた。あまりの暑さに皆相当参りながら走っていたのだけれども、そのうち仲間のひとりがグッタリしはじめた。これはまずいと駿河小山の公民館みたいな建物の軒下に避難して、陽射しが弱まるのを待った。そしてしっかりと休息をとって、結局完全に日が落ちてから三国峠を目指した。

ひどい勾配の坂道に苦しめられながら三国峠にたったのはもう0時近くだったような気がする。とにかく疲れ果てた。僕は峠に寝そべって仲間を待った。標高を稼いできたわりには、あまり涼しさは感じられなかった。風がほとんどなく、やけに生暖かい空気が漂っていた。

そうやって少し時間がたったとき、暗闇のなかで何かの光が飛び交っているのに気づいた。最初は何の光かよくわからなかった。けれども、そのうちどんどん小さな光の数が増していった。それが蛍の光だということに気づいて、僕は立ち上がり、しばらくぼんやりと闇の中で揺れ動く無数の光にみとれていた。その光は西のほうからやってきて、丹沢のほうへ消えていった。そして蛍の光が消えて間もなく、闇の中から別の小さな光があらわれた。仲間のバッテリーランプの光だった。

蛍というと僕はこのときのことを思い出す。

蛍が一番盛んに飛び交うのは、風がなく蒸し暑い日の、日暮れから1時間後くらいの時間帯らしい。時間帯は全然違うけれども、風がなくてひどく蒸し暑かったというのはその通りだ。ただ三国峠のすぐ近くに蛍が生息するような水辺があったのかどうかがいまひとつ良くわからない。なので、今でもあれは本当に蛍の光だったのだろうかと思ったりすることがある。もっと別の、何か違う光だったのかもしれないと思ったりすることもある。それくらいあのときの光は幻想的だった。

なにはともあれ、今年はビールでも持って蛍のいる水辺を訪ねてみようと思う。梅雨には蛍とビール、夏には花火とビール、これが湘南における正しい季節の楽しみ方なのかもしれない。よく、わかりませんが。