YS Journal アメリカからの雑感

政治、経済、手当たり次第、そしてゴルフ

Meredith Whitney

2011-01-28 04:36:14 | アメリカ経済
ペンシルベニア州の州都 Harrisburg の財政危機については、昨年、9月9日9月15日に続けてエントリーし、その後も地方自治体の財政危機のシンボルとして、注目している。

昨年11月には、将来の破産申請に備えての準備を,pro bono (無報酬での活動)でやると申し出てたニューヨークの有名な法律事務所 ( Cravath, Swaine & Moore LLP )に任す事を決定した事などを、つらつらと追っかけている。

市、郡、州、地方自治体だけでなく学校区や特定のプロジェクトまで、地方自治債は、$2.9 trillion (約240兆円)の発行残高がある。

連邦レベルでも、$14 .1 trillion (約1,150兆円)の残高があり、財政再建が大きな課題になっているのだが、地方レベルでも税収の減少で、急速に危なくなってきているところがある。

昨年の中間選挙における民主党の大敗北は、連邦、地方レベルで財源の裏づけもないまま歳出だけを拡大させた事も大きな要因である。(共和党も歳出拡大では同罪であるが、現在は歳出削減の公約を強く押し出している)

昨年一年で、地方自治体の債券は $8.2 billion (約6,700億円)の不履行がある。さて、今後、不履行が増えていくかどうかが、大きな焦点になっている。

そこで登場するのが、2007年に CitiCorp が配当を減らすと言うレポートを出し、結果的に2008年のリーマンショックを当てた感じになっている「悲観論の女王(?)」Meredith Whitney である。(彼女の会社のホームページはこちら)彼女は、多ければ100の地方自治債がディフォルトし、その金額は $100 billion (約8.2兆円)を超えるとしている。

一方で、地方自治体は、歳入をコントロール、つまり税金を上げることが出来るので、歳出削減と併せて、そこまでディフォルトすることはないであろうと言うのが、大勢の意見である。良い例(住んでいる人は御愁傷だが)が、州の中でも財政が一番厳しいイリノイ州は、歳入拡大のために州所得税の66%アップ(!)を決めたばかりである。(歳出削減はどうなっているのだろう)

懸念を示しながらも、投資対象として面白いと考えている人たちもいる。代表的になのは、絶妙のリスク管理でリーマンショックを軽微の損害で終わらした JPMorgan Chase CEO Jamie Dimon、世界最大のミューチュアルファンド "Total Return" (社債等が中心のポートフォリオ)を管理する PIMCO Bill Gross であろう。

2008年以降、発行自治体により金利(債券の価格)に違いが出てきたりしており、マーケット本来の機能が効いてきている。(逆を言えば、苦しいところはより苦しくなるのだが)今後は、安易な発行が難しくて、自然と財政規律が出来るようになりそうだ。

州債については、金利収入に対して収税の控除があったりして、国債より金利が高い上に、住んでいる州の財政が健全であれば、(税率にもよるが)30年物だと8%を越えるリターンが期待できる。チャンスと見ている人も多いようだ。

さて、Meredith Whitney だが、地道にアナリストとしてやってきたのであるが、CitiCorp の的中で有名になり、それなりにお綺麗なので、テレビのコメンテーターとして引っ張りだこである。本人もやや舞い上がったのか、独立したりしている。基本的に株専門のアナリストであり、債券は素人というのが業界の共通認識のようで、地方自治債の予想については、業界ではあまり相手にされてない。

地方自治体の財政危機は引き続き注目なのだが、彼女の予想が当たるかどうかも、注目しない訳にいかないだろう。

債券の素人ということでの批判は理解出来のだが、有名税なのであろう、旦那が元プロレスラーであると言う事で、不当な評価を、特に、女性からされている気がする。(男性も面白がって持ち上げているのかもしれない。私も同罪です)