YS Journal アメリカからの雑感

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2011 一般教書演説

2011-01-26 00:26:00 | アメリカ政治
Flat!

が、今回のオバマ大統領一般教書演説を形容するのに最適であろう。

相変わらず長い演説であった。出だしから盛り上がらないので集中出来ず、雑用をしながら観た。今日は長距離ドライブの出張だったので、ずっとトークラジオを聞きっぱなしで、有る程度内容を知っていた事もあるが、これまでのオバマの演説のなかで、一番しょぼくれていた。2012年大統領選挙の開始演説であると身構えていたが、もしそんな意図があったのなら、思いっきり失敗であろう。(オーラが無くなったというより影が薄かった)中道路線への(見せかけの)変換だけでなく、落ち着いた演説スタイルへの脱却も狙っているのかしらん!?

内容的にも、昨年の「中身が伴わない空虚な一般教書演説」よりも薄くなっており、過去2年の実績を声高に訴える訳でも無く、だからといってこれからの道筋を力強く打ち出す訳でもなく、オバマとしては、本当に珍しく、最後まで低空飛行であった。

民主党ベッタリという偏った政策の発表も無く、民主党、共和党の議員が混ざって座っていたせいもあり、熱烈なスタンディングオベーションが全く見られなかった。

民主党と共和党議員がペアになって座る事については、デートナイトと揶揄されたりしていたが、ペアルックが登場するに及んでは、馬鹿丸出しであった。オバマもデートナイトを意識しており、中道路線を強調する意図もあり、"Sit together today, work together tomorrow" とのコメントをしていた。(個人的には、今回の演説で一番印象に残ったフレーズ)下らな過ぎる。

一方の共和党 Paul Ryan の対抗スピーチは、非常に短いものであった。憲法保守派、下院の予算委員会議長として、小さな連邦政府、歳出削減と財政規律を力強くシンプルに訴えていた。上手くまとまっている演説であったが、インパクトとしては弱く、彼の事を知らない人がいきなり理解する事は難しいと思われるので、ちょっと勿体ない。

さて、財政規律については、オバマは昨年暮れに諮問委員会を設置(報告書は出来たが承認されず、お蔵入りした)したりして一応ポーズだけはとっているが、雇用と景気の回復を、Investment(投資)で押し進めようと方針である。(Investment(投資)は Spending(ばら撒き)を言い換えただけ)一方で、共和党は、歳出削減と財政規律を柱にして、規制緩和と、増税の不安を取り除く事で、雇用と景気の回復を目指している。

財政規律のついては、今日は仲良く座った両党の議員が、直ぐにせめぎ合いを行わなければならない重要な案件がある。

現在、アメリカの国債発行残高の上限は、$14.3 trillion(約1,173兆円)であり、3月末にはこれを超える見通しである。このままでは政府がシャットダウンする。上限の引き上げには議会承認が必要なのだが、共和党の上院議員が、今後、財政赤字を出さない様にするために、歳出が歳入を超えない、歳出が GDP の20%を上回らないという条件付きで、上限の引き上げに応じる提案をしている。(The Hatch/Cornyn plan) 

現時点で、ホワイトハウスは、歳出を制限されることになるので、難色を示している。

クリントン政権の時にあった政府のシャットダウンでは、結局、対決した共和党議会の方がダメージが多く、その次の選挙で過半数を失っている。

昨年の中間選挙敗北以来、同じ様な状況から蘇ったクリントンと対比される事の多いオバマであるが、この局面どのように乗り切るのかが、今後の政局ばかりでなく、2012年の大統領選挙を占う格好の材料となるだろう。

今日の一般教書演説は、セレモニー的なものでもあるので、思った以上に(というか以下)退屈で空虚であったが、アメリカの財政的な将来を決定付けるといっても過言ではない山場が、直ぐそこに迫っているのである。