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ObamaCare 廃案決議、下院で可決

2011-01-21 10:20:37 | アメリカ政治
アリゾナ州の銃撃事件で一週間遅れたが、共和党は中間選挙の公約通り、下院で ObamaCare の廃案決議を可決した。賛成票は245で、共和党の全議員と民主党3議員の合計である。10ヶ月前に、上院案を下院で可決したおりには、賛成票219票で、共和党が全員反対、民主党の反対も38票のあった。

今後、上院での採決という事になるが、上院の過半数を占める民主党リーダーは、議案として取り上げない意向を示している。しかし、リップサービスながら大統領も民主党の有力上院議員も、超党派でのより良いアイデアには賛成と表明しているので、上院で討議される事を避けると、大きな批判が出る事が考えられる。

上院は、昨年の中間選挙で約3分の一しか改選されておらず、民主党は、絶対過半数(60議席)は失ったものの、現在でも53議席(51+民主党よりの独立系2議員)を確保している。

2012年には、改選を控えている民主党議員が戦々恐々としており、廃案可決に回る可能性が高い民主党議員が複数いると推測されている。また、議会運営的には非常に難しいのであるが、共和党に乱れが無ければ、単純多数決での採決の可能性もあるとの事だ。但し、上院可決の可能性は極めて低い。

もし、奇跡の様な上院で廃案可決になっても、オバマ大統領が拒否権を発動すれば、万事休すである。

共和党の理想は、上院での可決、大統領の署名で廃案成立という事になるだろうが、オバマ大統領がサインをするはずがないので、作戦的には、上院での議論を活発に行いたいという事であろう。これは、政策全般に言える事で、ObamaCare だけで無く、これから下院で可決される法案、廃案、改定案、下院の上院での審議を全て拒む訳にいかないので、否応無しに民主党、究極的にはオバマ大統領の言動一致が試されていく事になるだろう。

今年に入って、ObamaCare のマイナーな部分の施行が始まっているが、既に、弊害があきらかになっている。会社が提供していた簡易的で安い医療保険が ObamaCare に適合してないので、従業員への提供が出来ない事が分かって、慌てて適用免除を認めたり、カリフォルニア州の医療保険が30%上がる事を例に挙げて、その抑制のために ObamaCare の必要性を訴えていたのに、法案が成立したら59%も医療費が上がったり、弁解のしようがない事態が次々と発生している。

フロリダ州が連邦裁判所に ObamaCare の違憲性を訴えている裁判も、当初の20州に6州が加わり、26州、つまり半分以上の州政府が違憲性を問うている。尚,バージニア州は独自の裁判を行って違憲判決を勝ち取っているので、計27州が ObamaCare に憲法違反という事で反対している。

オバマが大統領就任以来、最大の成果で有る ObamaCare がたった10ヶ月でこんな事になっているのは、非常に皮肉である。ちょうど、2012年の大統領選でのディベートでは、嘘八百を並べて擁護するしか無いし、選挙戦の真最中に最高裁判所の判断が出る予定になっているので、違憲ともなれば、オバマは、自分が一番だと思った手柄が逆噴射して、決定的に再選が不可能になる。

民主党の中間選挙での大敗北の影響で大人しくなり、昨年暮れのブッシュ減税の延長で中道よりの印象になってきたオバマであるが、本当の所はどうなのであろう。1月18日付けの WSJ に "Toward a 21st-Century Regulatory System" を寄稿したりして、親ビジネス的な雰囲気を醸し出そうとしている。

景気もやっと回復の兆しを見せていたのであるが、食料品やガソリン等が高騰しており、原油の値上げで関連の工業製品のインフレの気配もあり、景気の腰折れが心配になってきている。肝心の失業率も改善の兆しが見えたり、隠れたりで、なかなか景気の良い話にはならない。リーマンショック後に就任したアンラッキーはあるが、的外れな大型景気対策を行った事と大きな政府を指向してビジネス界が先行きを見通せない不安な状態にした罪も問われるだろう。

今後、オバマ大統領は、ObamaCare だけで無く、その他の策、無策もかなり強い真っ当な批判を受ける事であろう。特に、生活に直結するガソリン価格がこれから一層高騰すれば、メキシコ湾の原油流失事故の対応、それに続く根拠が無い深海採油の許可の不当な規制について、不満が噴出しそうだ。

さて来週の一般教書演説でオバマ大統領はどんな絵空事を言うのであろう。これまでの一般教書演説で表明して成し遂げた事は、軍の Don't tell, don't ask を撤廃した事くらいか?それでも上出来と思うべきであろう。これから2年間、変な事をするより、無駄な大統領選挙運動に集中してもらった方が、国としては幸せかもしれない。