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『天使と悪魔』その9─ベルニーニの秘密

2006-08-30 | └『ダヴィンチ・コード』・『天使と悪魔』
悪魔の穴開くサンティの土の墓より
ローマに縦横に現れる神秘の元素
光の道が敷かれ、聖なる試練あり
気高き探求に天使の導きあらん


ガリレオ・ガリレイの暗号に導かれて、ラングドンとヴィットリアはローマ市内の教会を駆けめぐります。誘拐された4人の枢機卿を救うために…。

最初に向かったのは、「サンティ」つまりラファエロ(1483~1520)の墓のあるパンテオンでした。パンテオンとは、「万神殿」とも呼ばれる古代ローマの様々な神を祀る神殿です。現在残っている建物は、2世紀のもので、高さ・直径とも43mもの巨大なドームに覆われています。ローマ滅亡後には、キリスト教の教会として使われるようになりました。

二人は、しかし、パンテオンが目指す場所ではなかったことに気づきます。「サンティの土の墓」とは、ラファエロの墓ではなく、ラファエロの「建てた」墓だったのです。「ピラミッド」があるというキージ礼拝堂こそ「悪魔の穴開く」場所だと気づいた二人は、急いでその礼拝堂のあるマリア・デル・ポポロ教会に向かいます。教会の前のポポロ広場にはオベリスクがそびえ立っています。ラングドンは、その最頂部に「三角形に積みあげた石の上方で輝く星」を見つけます。ヴィットリアもそれが米国の国璽、1ドル紙幣に描かれたフリーメイソンのシンボルと同じものであることにすぐに気づく。不安を抱えたまま教会の中に足を踏み入れた二人は、キージ礼拝堂にたどり着くと…。

キージ礼拝堂は、ラファエロが建築したものでしたが、内装の美術品を手がけたのは、ベルニーニという彫刻家でした。

ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ(1598~1680)。「史上二番目に有名な彫刻家」であり、「その名声を凌駕するのはかのミケランジェロだたひとり」。代表作には、「プロセルピナの略奪」、「アポロンとダフネ」、「聖テレジアの法悦」…。どの作品も、柔らかな曲線が印象的で、大理石で作られているとは思えないなまめかしさを感じさせます。建築家としても、彼はサン・ピエトロ広場の設計をしたことで知られています。

彼はガリレオとほとんど同時代人ですが、ガリレオと違って、カトリック教会に愛された芸術家でした。ところが、ベルニーニもまた、ガリレオと同じようにイルミナティの会員だったのです! それどころか、『天使と悪魔』では、イルミナティの会員でさえその正体を知らなかったという「無名の巨匠」がまさにベルニーニだったと位置づけています。ベルニーニは、ヴァチカンに取り入りながら、ひそかに反カトリック的な作品を生み出していたのだと。確かに「聖テレジアの法悦」なんかは、人間の感情や欲望をありのままに写し出しており、司教たちが眉をひそめたくなるようななまめかしさがあります。キージ礼拝堂の内装、ピラミッドや十二宮の星座など、非キリスト教的なモチーフがすべてベルニーニの手になるものだとすれば、合点もいきます。

ベルニーニの名前が、日本ではミケランジェロほどには知られておらず、世界史の教科書にも出てこないというのも、こんな彼の「秘密」が関係しているのかもしれません。

サンタ・マリア・デル・ポポロ教会には、よく知られたベルニーニ作品も置かれています。「ハバククと天使」。その「天使」が指さす方向に、次の目的地があったのです…。

 

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