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カール・ルイスとルイス・キャロルの関係─人名に見る世界史(10)

2006-06-24 | └人名に見る世界史

現在の英国王室のチャールズ皇太子、ウィリアム王子、ヘンリー王子といった名前は、伝統的な名前として長い歴史を持ちます。これらの名前は、前回書いたような聖書や聖人の名前に由来するものではなく、もともとは北方ゲルマン系のノルマン人の名前でした。今回は、このようなゲルマン人に由来する名前をたどっていきます。

ゲルマン人は、4世紀末に「大移動」を始め、ローマ帝国領内に深く侵入します。そして最終的に到達した土地でそれぞれ国家を築いていきます。現在の英国(イングランド)、ドイツ、フランスはいずれもこうしたゲルマン人の子孫によってつくられた国ということになります。

英国が位置するブリテン島は古くからケルト人が支配する土地でしたが、ローマの支配を経て、6世紀頃から北方ゲルマン諸族の侵入をたびたび受けるようになります。最初にイングランドを支配したのはアングロサクソン人。彼らは7つの王国を築きますが、9世紀にそれらを統一したのがエグバート王。その孫にあたるアルフレッド大王とその息子のエドワード王は、デーン人をはじめとして、次々と侵入してくるヴァイキング(ノルマン人)をたびたび撃退しています。エドワードEdwardという名前は、以後の英国王として8世まで数えられるように、ポピュラーな名前として定着していきます。アングロサクソン人の王には、エドワードのほかにも、エドモントEdmond、エドレッドEdred、エドガーEdgarといったEd-がつく王が見られますが、これは「富」とか「財産」を意味する接頭詞だそうです。

さて、1066年、現在のフランス・ノルマンディ地方に公国を築いていたノルマン人がイングランドを征服し、初めての統一王朝を打ち立てます(ノルマン朝)。それとともに、イングランドに定住していたアングロサクソン人たちは、初代国王の名前でもあったウィリアムWilliam(「意志」の意味)をはじめ、ロバートRobert(「名誉」)、ヘンリーHenry(「家長」)、(「支配」「厳格な」)、ウォルターWalter(「軍隊」)といったノルマン風の名前を用いるようになりました。もともとノルマン人はゲルマン系ですから、たとえばドイツでもこれらの名前はよく使われ、ウィリアムはヴィルヘルム、ロバートはロベルト、ヘンリーはハインリヒ、リチャードはリヒャルト、ウォルターはヴァルターといった形で呼ばれます。ちなみにフランス語ではそれぞれ、ギョーム、ロベール、リシャール、アンリ、ゴーティエとなります。

ゲルマン人が現在のドイツ、フランスを中心とする地域に建国したのがフランク王国です。8世紀末にはカール大帝がローマ教皇からの戴冠を受けることによって統一国家として確立していきます。カールKarlとはもともと「男」「自由農民」を意味するドイツ語ですが、この名前が英国ではチャールズCharles、フランス語でシャルルCharle、スペイン語ではカルロスCarlosと呼ばれるのです。

英国でもフランスでも、この名前を持つ国王は多い。フランスにはシャルル○世という王がこれまで9人もいますし、英国では3人のチャールズ王を生んでいます。現在の英国皇太子の名はチャールズですから、彼がもし即位すれば「チャールズ4世」となります。チャールズの愛称の一つが、チャーリー・チャップリン、チャーリー・ブラウンの「チャーリー」です。

またカール大帝の死後、分裂したフランク王国のうちの東フランク(現在のドイツ)を支配した国王をルートヴィヒLudwigと言います。19世紀のバイエルン王ルートヴィヒ1世やベートーベンの名前(ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーベン)にも使われています。ルートヴィヒは、フランス語ではご存知ルイLouis。フランス革命で処刑されたルイ16世など、ルイと名の付くフランス王は18人もいます。英語ではルイスLewis。「不思議の国のアリス」のルイス・キャロルがいますが、現在ではむしろカール・ルイスのように、姓として使われているようです。むろん、カールCarlもキャロルCarrolも同語源なので、この二人は姓名を逆にした関係と言えます。

 


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