goo blog サービス終了のお知らせ 

カクレマショウ

やっぴBLOG

『ファントム』その2

2005-06-04 | └『ファントム』
『ファントム』の目次は次のようになっています。

マドレーヌ 1831-1840年
エリック 1840-1843年
ジョヴァンニ 1844-1846年
ナーディル 1850-1853年
エリック 1856-1881年
エリックとクリスティーヌのフーガ 1881年
ラウール 1897年

節のタイトルとなっている人物が、それぞれの節の語り手、つまり「私」となるという趣向です。

前回、「マドレーヌ」(=エリックの母)との出会いと別れの部分について書きましたが、今日は、「エリック」が「僕」として記されている部分から始めます。

9歳で家を出た(母を捨てた)エリックは、ジプシーに拾われます。そして、ジャヴェールという男のもとに囚われ、「化け物ショー」の格好の見せ物とされます。檻に入れられ、仮面を取って群衆の前で素顔をさらけ出すことは、プライド高いエリックにとっては耐えられないことでした。しかし、エリックは持ち前の才能をフルに発揮して、「もっと儲けたい」と考えるジャヴェールと取引をし、少しずつ「自由」を取り戻していくのです。そして、しだいにジプシーの独特の生活様式にも慣れ、例えば薬草の調合の仕方、タロットカードによる占いなど、ジプシー秘伝の「技」も習得していきます。

ある夜、ジャヴェールが襲いかかって来た時、とっさに彼の体にナイフを突き立ててしまいます。それは彼が犯した最初の殺人でした。その瞬間、彼は「無邪気なときは終わったのだ」と考えます。「子供の時代は終わり、世界は僕の類いまれな才能を手招きしている。…古今東西のあらゆる音楽を勉強し、世界中の知識を吸収し、人類が経験したことのない独自の芸術を修めるのだ」と。

まず手始めに彼はローマに向かいます。古代から中世にかけての、人類の英知の結晶とも言える無数の建築物や美術品が待つローマへ。その建築現場で、彼は一人の元マスターメイソン(石工)と出会います。彼、ジョヴァンニのもとで建築家としての才能を引き出されるエリック。それは紛れもなく、彼の知らない「父」の血筋によるものにちがいありません。ジョヴァンニは彼の才能を深く愛し、ゆくゆくは後継者として考えるようにさえなっていきます。

ところが、そんな二人の平和な生活は、ジョヴァンニの娘ルチアーナによって断ち切られてしまいます。ルチアーナは、ミラノの寄宿舎に入っていましたが、夏休みの帰省で突如エリックの前に現れます。彼女はエリックに興味を示しますが、ジョヴァンニはそれを許そうとしません。ついに見つけた自分の「跡継ぎ」の繊細な感覚が、節操のない娘の言動によって乱されることを恐れたのです。

しかし、3人の生活は、ジョヴァンニが危惧したとおり、ある一つの事件をもって終焉を迎えます。

いろいろな人を傷つけ、不幸にしながら、エリックはそれでもその才能を抱き続け、その顔で生きていくしかないのでした。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。