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スペースシャトル引退─人間と宇宙空間の関わりは

2011-07-17 | ■環境/科学
旧ソ連のガガーリンが人類史上初めて宇宙を飛んだのは1961年。その8年後に、人類は初めて月に降り立ち、20年後の1981年には、地球と宇宙空間を往復する乗り物を手に入れました。その名も「スペースシャトル」。それまでの「ロケット型」ではない、真っ白で洗練されたフォルムは、SFの世界が実現したような気にさせられたものでした。

ガガーリンからちょうど50年目に当たる今年、宇宙開発の歴史に一つのピリオドが打たれました。スペースシャトルがその使命を終えたのです。30年間で、計135回も飛行し、日本人7人を含む350人以上を宇宙に送り込んだスペースシャトルはもともと5機ありました。コロンビア、チャレンジャー、ディスカバリー、アトランティス、エンデバー。このうち、チャレンジャー号が1986年に打ち上げ直後に爆発事故、2003年にはコロンビア号が大気圏再突入時に空中分解するという事故を起こしたため、最終的には3機しかなくなった。先日打ち上げられた、「最後のスペースシャトル」は、アトランティス号でしたね。



それにしても、米国が30年間も同じ宇宙計画を堅持してきたというのも考えてみればすごいことです。スペースシャトルには、宇宙開発計画においてそれだけの大きな意味があり、もちろん、実際に大きな功績も残しています。ただ、1回の飛行で数百億円と言われるコストの問題もあり、米国も新たな段階にギアチェンジする必要があったということでしょう。

では、米国の宇宙開発における新たな段階とは?

ブッシュ前大統領は、宇宙開発計画における米国の威信回復の切り札として、再び月に人類を送り込む計画を打ち出していました。しかし、オバマ大統領はそれを撤回し、新たに2030年代半ばに火星への有人飛行計画を達成するという計画を掲げました。しかし、この計画には新たな技術開発も含め、膨大な資金が必要なのは言うまでもなく、予算面で難航しそうな雲行きのようです。

一方、スペースシャトルが重要な役割を担ってきた国際宇宙ステーション(ISS)への物資や宇宙飛行士の輸送については、今後、基本的に民間企業任せとする方針。それにしても、民間企業が乗り出すとして、いったい採算が取れるのか、ちょっと疑問です。

ISSへの輸送は、当面の間、ロシアの宇宙船ソユーズに頼ることになりそうです。これまで3回スペースシャトルに乗った若田光一さんは、2013年末に今度はソユーズでISSに向かう予定。また、近々独自の宇宙ステーションを打ち上げる予定の中国も、宇宙開発計画をリードしそうな勢いです。日本は、「はやぶさ」のように、別の方向から宇宙の謎を解き明かそうと力を注いでいます。かつて、米ソ二大国が競った宇宙開発計画も、スペースシャトルの引退で、すっかり図式が書き換えられそうですね。

その「はやぶさ」の生みの親である川口淳一郎さんが、先日の新聞に「シャトル後の宇宙開発」について私見を述べられていました(2011年7月12日付け読売新聞)。

1903年にライト兄弟が人類初の動力飛行をした。その後の100年で、飛行機は物流、経済などにとてつもなく大きな影響を与えた。シャトル後の宇宙開発は、そんな新世界につながるような輸送機を目指すべきだ。
例えば、日本と米国を1~2時間で結ぶ輸送機。出発地から目的地まで宇宙空間を経由して、ものづごい速さで移動する。航空機とロケットを合わせたような乗り物だ。


これを読んで、つくづく、そうなんだよなーと思いました。かつて米ソはお互いの国を直接攻撃するための長距離ミサイルの製造に力を入れていました。大陸間弾道ミサイル(ICBM)です。尖端に核弾頭を搭載し、何千キロも飛行しながら、わずかな誤差で相手国の主要都市を攻撃できる。このミサイルの推進力はロケットエンジンなので、打ち上げられると、いったん大気圏外に出て宇宙空間を飛ぶのです。その開発の背景に、宇宙開発があったことは言うまでもありません。宇宙開発計画は、軍事的にも非常に重要だったのです。

ICBMは、相手国に墜落して自爆するだけですが、なぜそんな技術を人や物資を運ぶことに使えないのかなと思っていました。冷戦の終結で米国もソ連(ロシア)もICBMの削減を図ってきましたが、どうせ廃棄にするなら、そのロケットエンジンを輸送機に転用できないのかと。スペースシャトルが宇宙に行って帰ってくることができるなら、地球上の別の国との往復だって宇宙空間経由でできるんじゃないのでしょうか?

米国に限らず、世界中どこにでも「1~2時間」で行けるとなったら、確実に世界は狭くなる。そうなったら、日本人とか○○人である前に、私たちは「地球人」であるという意識も高まっていくことでしょう。

たぶん、コストとか技術とか国際法とか様々な制約があってこれまで実現できていないのでしょうが、川口さんがおっしゃるとおり、これからの宇宙開発計画には、私たちの「社会や経済を大きく変えていくような新しいもの」を創り出すことが求められるのはもちろん、「即物的利用」だけでなく、私たちの精神的な部分に与える影響も大きいことを考えるべきですね。

つまり、私たちが小さい頃にアポロ11号の月面着陸をわくわくしながらテレビで見て、人間ってすごいなと思ったように。あるいは、はやぶさの帰還を心から喜び、日本の技術力が成し遂げた快挙に喝采を送り、改めて宇宙に夢を馳せたように。このたび、2020年のオリンピックに再挑戦することを表明した石原慎太郎・東京都知事がよく使う「国の威信」とやらを賭けることも、宇宙開発計画には必要なことなのでしょうが、もっと大切なことが、「宇宙と人間との関わり」の中にあるのではないでしょうか。


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