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やっぴBLOG

「V フォー・ヴェンデッタ」─近未来モノってやっぱりいい。

2007-02-27 | ■映画
週末、見逃していた映画をDVDで3本立て続けに見ました。その中で一番良かったのが「V フォー・ヴェンデッタ」。

タイトルは「VはVendetta (復讐)のV」という意味だそうです。こういうのは邦題にしにくいのかしらん。でも、私みたいにタイトルの印象だけで「ファンタスティック・フォー」と混同してたおバカもいるわけですから、何とかわかりやすい邦題にしてほしいもんです…。

原作は英国のコミックだそうで、これをもとに「マトリクス」のウォシャウスキー兄弟が脚本を書いています。主役の"V"を演じるのは、「マトリクス」でエージェント・スミスを演じたヒューゴ・ウィーヴィング。全編、マスクをつけての演技です。一度も顔を見せることはありません。

で、ヒロインのイヴィー役はナタリー・ポートマン。「レオン」の少女役で鮮烈な印象を残した彼女ももう25歳。「スターウォーズ」新三部作のアミダラ役もよかったですね。今回は、坊主刈りまでしちゃう体当たりの演技。彼女はハーバード大学で心理学を学んだ才媛ですが、頭のカタチまで素敵です。それはともかく、仮面の男"V"は、イヴィーに結局惚れちゃうわけで、こうなると「オペラ座の怪人」を思い出さずにはいられませんね。

さて、映画の冒頭で、17世紀初めのロンドンが登場します。1604年11月5日、ウェストミンスター宮殿内の議会に火薬を仕掛けて爆破しようとしたガイ・フォークス(1570~1606)という実在の男のエピソードです。陰謀は事前に発覚してフォークスは逮捕、処刑されます。この事件の背景には、時の国王ジェームズ1世(エリザベス1世の次の国王で、彼女のライバルだったメアリ・スチュアートの息子)の英国国教会優遇政策に対するカトリックの反感がありました。この陰謀事件に因み、今でも英国では毎年11月5日に「ガイ・フォークス・ナイト」という行事が各地で行われているのだそうです。

その「ガイ・フォークス」が近未来の英国でよみがえる。局地的な核戦争となった第三次世界大戦によって、それまでの秩序は覆され、英国は全体主義国家になっています。議長アダム・サトラー(「アドルフ・ヒトラー」をもじったのでしょうね)は、秘密警察ザ・フィンガーや国営放送を巧みに利用しつつ、独裁体制を敷いていました。そこに忽然と現れたのが、ガイ・フォークスのマスクをつけた謎の男"V"。彼の活動は、11月5日の深夜に始まりました。チャイコフスキーの「序曲1812年」を街頭スピーカーから流しながら、裁判所を爆破。さらに、放送局を乗っ取って、国民に「来年の11月5日には議事堂の前に集まろう」と呼びかけるのです。

国民は"V"にガイ・フォークスの反骨精神を見てとります。徹底した管理体制に嫌気のさしていた国民は"V"を支持しますが、サトラー議長はもちろん"V"を反逆者として秘密警察に捜索を命じます。

ひょんなことから"V"と知り合った放送局に勤めるイヴィーは、両親が国家反逆罪で死に至らされたという過去を持ちます。"V"もまた、かつて「収容所」で人体実験を受けるという屈辱を味わっているらしい。"V"とはいったい何者なのか? やはり母親を国家に奪われているフィンチ警視(スティーブン・レイ)は、"V"の謎に迫っていく…。

なんといっても、"V"があちこちで吐く台詞がいい。

「政治家は真実で嘘を語るが、作家は嘘で真実を語る」

「人民が政府を恐れるのではない、政府が人民を恐れるべきなのだ」

「この仮面の下にあるのは“理念”だ。理念は決して死なない」

時にはシェークスピアを引用しつつ、"V"は言葉の持つ一種の「魔力」で、市民を、そしてイヴィーを鼓舞していきます。"V"の目論見は成功するのか? 独裁は"V"によって本当に倒されるのか?

私が興味深かったのは、こうした全体主義国家では、いかにマスコミが利用されるかということ。市民が、家庭や酒場で、おそらくチャンネルは1つしかないのであろうテレビに見入っているシーンが何度も出てきます。ニュース番組でキャスターが伝える「ニュース」とは、独裁者に都合のいい情報でしかない。「国家」が犯した犯罪でも、テログループがやったように見せかける伝え方をすれば、市民はいとも簡単にそう信じてしまうのです。しかし、市民はそうした情報が「嘘」だということもうすうす勘づいている。その証拠に、反体制派のテレビプロデューサーが企画した、サトラー議長のそっくりさんが登場してきて思いっきりおちょくられる番組を見ては、大笑いをして溜飲を下げるのです。プロデューサーは秘密警察に拘束され、処刑されてしまうのですが。

こういった「近未来モノ」は、私は大好きです。「未来世紀ブラジル」、「時計じかけのオレンジ」。描かれるのは決まって「異常な社会」ですが、決して絵空事ではないよなーとついつい考えさせられてしまいます。「こんなハズじゃなかった」って、思いたくないですね。

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2 コメント

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はじめまして (shizumine)
2007-02-28 00:17:07
レストラン「バイキングスタイル」を調べていて、やっぴさんのHPにたどり着き、参考にさせて頂きました。そんな訳で、一応ご挨拶に伺いました。有難う御座いました。
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Unknown (やっぴ)
2007-03-03 00:31:52
shizumineさん
「やっぴらんど」ともども訪問いただきありがとうございます。映画「バイキング」も含め、昔々に書いたものは改訂していかなくてはと思いつつ、なかなか手をつけられずにいますが、参考になれば幸いです。

これからもよろしくお願いします。m(_ _)m 
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