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市民に限りなく近い公共交通機関─富山ポートラム

2007-02-28 | ■社会/政治
今、日本で一番元気のある公共交通機関は、富山市内を走る「富山ライトレール」(愛称ポートラム)でしょう。2006年4月に開業した、富山駅北駅と岩瀬浜駅を結ぶ約7.6kmの路面電車です。

富山市といえば、先日、中心市街地活性化法に基づく地域認定第1号に、青森市とともに選ばれました。中心市街地活性化法とは、いわゆる「まちづくり3法」の一つで、中心市街地の空洞化に歯止めをかけるための法律です。認定を受けたことで、両市は国の支援を受けながら様々な取組ができることになりました。青森市のキャッチフレーズは「コンパクトシティ」ですが、富山市のまちづくりのシンボルとも言えるのが、このポートラムなのです。

実は、ポートラムの運行路線のうち、道路上を走る「路面電車」の部分はごく一部でしかありません。そのほとんどは旧JRの富山港線の線路を走っています。富山港線は、ご多分に漏れず、赤字路線で廃止が取りざたされていた路線です。利用者が少ない→運行本数が減るなどサービスが悪くなる→ますます利用者が減る、というお決まりの悪循環。

富山市は、中心市街地に人を呼び戻すために、公共交通を軸にしたコンパクトなまちづくりを考え、富山港線を路面電車としてよみがえらせる英断を下します。でもそのためには莫大なおカネがかかります。富山市は、徹底的な財政改革によって財源を確保します。

もちろん、お金があればすべてうまく機能するとは限りません。公共交通としての最低限のサービス、そして「プラスα」がポートラムの最大の魅力です。最低限のサービスとは何か。その1は、まず運行本数の多さでしょう。JR時代は1時間に1本だったのをいきなり15分に1本にしました。しかも朝夕のラッシュ時には10分に1本走らせています。その2として、駅を4駅も増やしてバス感覚で利用できるようにしたこと。その3は運賃の安さ。均一料金大人200円。しかも、開業から1年間は半額の100円! さらに、都会では今や当然のサービスになっているプリペイド式の料金システムを導入していること。しかも、suicaとの決定的な違いは、「passca」と呼ばれるプリペイドカードには1割ものプレミア付きだということ。しかもしかも、この4月からプレミアは2割になるというのだからすごい。

JRのsuicaは確かに便利ですが、たとえ5%でもいいから「おトク感」をつけるべきだと思います。そのへん、JRは民営化されて何年もたつのに、まだまだ殿様商売的な気質から抜け出せていないのかなとも思いますね。

ポートラムの放つ「プラスα」のサービスこそ、JRじゃ考えられないことかもしれません。たとえば、クリスマスにサンタクロースが乗ってくるとか、バレンタインデーにはバレンタイン仕様の電車を走らせるとか、そんな旺盛なサービス精神は、市民の利便性を第一に考え、考えるだけでなく実行できているポートラムならではと言えるでしょう。また、デザイン面でも、車体の色がバリエーションに富んでいます。いろんな色の電車が走っているのは見ていても楽しいですよね。電車と駅舎がトータルデザインというのもなかなかです。

ポートラムの利用者数は、JR時代に比べると平日で2倍以上、休日では5倍もの伸びを示しているそうです。100万人目の乗客を数えたのも、予想より3ヶ月も早かったのだとか。結局、「ソフト」の魅力が人を呼び寄せているのです。ただの輸送機関ではない、「プラスα」がこれからの公共交通機関には求められています。もちろん、単なる一時的な「客寄せパンダ」ではない、きちんとしたコンセプトのもとでの「ソフト」づくりが大切ですけどね。


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