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やっぴBLOG

“日本一 空に遠い場所”─八戸キャニオン

2007-02-25 | ■青森県
八戸市には意外な「日本一」があります。キャッチフレーズは「日本一 空に遠い場所」。「日本一 空に近い場所」はもちろん富士山の頂上ですが、ということは…。そう、空が見える最も深い地底、ということです。

その場所とは、八戸市の郊外にある八戸石灰鉱山。セメントの原料となる石灰岩の露天掘り鉱山です。このあたり一帯は江戸時代から石灰岩の産地として知られており、大正時代から本格的な採掘が始まったのだとか。現在は住金鉱業という会社が採掘にあたっているようです。どんどん掘り進められた結果、現在、一番深いところで、海抜下150m。2050年までにはさらに60m深く掘り下げられる予定なのだそうです。

海抜下150mから空が見えるなんてどんな感じなのだろう…と、出かけてみました。

真っ白い石灰が舞う工場の敷地内を抜け、「展望台」という標識に従って車を走らせていきます。少し上ったあたりで、右手に巨大な「穴」が見えてきます。というより、南北1.4km、東西1kmという巨大な「穴」の長い方の側面が見えてきます。「八戸キャニオン」と呼ばれるわけがわかりました。見たこともないような光景にあっけにとられるまもなく、「展望台」に到着。ここは標高90m。下界は快晴だったのに、冷たい風が吹き荒れ、雪も舞っています。



寒さに震えながら、巨大な「穴」を眺める。穴の側面に、斜めに何本もの道路が作られていて、トラックが走っています。地底から掘り出した石灰岩を運び上げるトラックでしょうか。展望台には、その90tダンプトラックの馬鹿でかいタイヤが展示してありました。直径2m67cm幅76cm。帰り道でたまたますれ違ったのですが、SF映画に出てくるような、見上げるようなトラックでした。そのトラックが、まるで豆粒みたいに見えるのですから、「穴」自体がいかに大きいかということがわかります。遠近感の喪失。物の大小の分別がつかないといった錯覚。かつて、シルクロードで感じた感覚とそれはとてもよく似ていました。

よく目を凝らすと、側面の道路の脇に「0m」という表示が見えます。トラックの高さの2倍くらいの大きさの字です。そこが海抜0mを示しているのだそうです。そこからずーっと下の方に「地底」が見えますが、残念ながら展望台からは「最低地点」は見ることができません。展望台は確かに巨大な穴全体のパノラマを「展望」できるのですが、想像していたような「のぞき込む」という感じではありません。展望台をもうちょい穴の縁の近くに作ってもらえれば…とも思いましたが、毎日発破のかけられる時間には展望台も立入禁止になるくらいですから贅沢は言えませんね。

「最低地点」は、それこそ採掘の最前線の現場ですから、実は一般人はそこまで降りていくことができないのです。「日本一 空に遠い場所」に立つことができるのは、採掘に携わる人に限られるのです。残念。ただ、展望台からの帰り道、道炉端からその「地点」を見下ろすことができました。地底から湧き出た青緑色の池がありました。建物が建っていて、ベルトコンベアが延びています。かつてはトロッコで運び出されていた石灰岩ですが、今は地下に作られた総延長10kmにも及ぶベルトコンベアで、八戸港やセメント工場に運搬されているのだそうです。



新産業都市・八戸を支えた産業の一つがセメント生産、そして石灰岩の採掘です。八戸の子どもたちはぜひこの場所を一度は訪れて、ふるさとの産業の歴史を肌で感じてほしいものですね。



 



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