産業能率大学の教授が、学生が講義の際に座る座席位置と成績、授業評価の相関を調べる調査をしたそうです(2007年5月5日付け朝日新聞)。
11回の講義の着席パターンを、前方(32人)、中央(81人)、後方(30人)の3グループに分けて、期末試験の成績と授業評価アンケートの結果とをクロスしてみたところ、成績が一番良かったのは、前方グループの51.2点。次いで、中央の43.9点。後方グループは30.9点と、明らかな差が出たと言う。自由に席を選べるとしたら、学習意欲の高い学生ほど前に座りたがるのは当たり前のことですから、この結果は予想通りと言えます。
面白いのは、成績の面で振るわない後方グループの学生ほど授業評価が厳しいという結果です。授業評価の項目、「配布資料の役立ち具合」、「教員の熱意」、「理解度」など10項目すべてにおいて、後方グループが前方より厳しい評価を下したのだとか。ごく単純に言えば、「自分のことを棚に上げて、人のせいにする」という気質?…。一方で、理解ができない→後ろの方に座る→授業に熱が入らない→成績もぱっとしない→ますます理解できない→…という悪循環も容易に想像できますけどね。
なお、授業評価が最も甘いのは、成績の良い前方グループと思いきや、中央グループなのだそうで。失礼ながら、「どっちでもいい」というか、あまり深く考えていない人たちがこのグループの特徴なのかもしれません。
この調査を実施した教授は、「(後ろに座るのは)自分が教員から見えづらいよう、少しでも長い距離を取りたいのかもしれない。でも、見え方は同じなんですがね」と話しているそうです。全くその通りで、教壇からは、どんなに広い教室でも、隅々まで見えてしまうのが不思議。目立たないようにしているようでも、そういう不審(!)な動きこそ逆に目立ってしまうということも、教壇に立ってみて初めてわかるというものです。
それはそうと、大学の授業に限らず、人の話を聴く時の座席の選び方はとても難しい。絶対に面白くてためになる話をしてくれるとわかっていても、私は進んで最前列に陣取ろうとは決して思わない。よく講演会などに行くと、「前の方から詰めておかけください」と言われますが、申し訳ないのですが、大きなお世話、と思ってしまいます。どの席で聴くか、それは聴衆にこそ選ぶ権利があります。主催者の都合で、あるいは講師に失礼だからと勝手に判断して、前の方に詰めて座らせるのは、主催者の奢りでしかありませんね。
講演会は、基本的に「一対多」の世界ですから、その「多」の側に属している限り、話者である「一」を「多」の一部が独り占めすることは不可能。ならば、いっそのこと「多」に紛れて、できるだけ後ろの方の席から自分以外の「多」の反応も一緒に眺めていたいと思う。その方が講演そのものも何倍も楽しめるといった種類の人間もいるわけですから。私のように。
この調査の「実験台」となって、「自分のことを棚に上げて、人のせいにする」なんてひどいレッテルを貼られてしまったかもしれない「後方グループ」の学生も、もしかしたらそんなニーズを秘めていたのかもしれませんね。
調査をした教授は、「分かりやすい講義をするため」に調査を始めたということですが、この調査の結果を「分かりやすい講義」にどう生かすのか気になるところです。今回のこの結果を見て、成績を上げるために今度から前の方の席に座る学生がいたとしても、成績が上がるとは思えませんけどね。問題なのは、最初から「やる気がある」かどうかですから。
先生としては、できるだけ近くで話を聞いてほしいのかもしれませんが、全員が「前方グループ」になる、てなわけにもいきませんし、誰かが「後方グループ」に属さなければならないのです。では、その後方グループの学生たちの授業評価を高めることが目的なのか?つまり、(やる気のあまり感じられない)後方グループの人たちにも、きちんと授業内容を理解してもらうために、たとえば、後方グループに意識的に声掛けをしたり、後方グループの人だけに特別レポートを課したり(!!)といった対策を講ずるということなのでしょうか。
今後、調査は継続するそうですので、その結果にも注目してみたいと思います。
11回の講義の着席パターンを、前方(32人)、中央(81人)、後方(30人)の3グループに分けて、期末試験の成績と授業評価アンケートの結果とをクロスしてみたところ、成績が一番良かったのは、前方グループの51.2点。次いで、中央の43.9点。後方グループは30.9点と、明らかな差が出たと言う。自由に席を選べるとしたら、学習意欲の高い学生ほど前に座りたがるのは当たり前のことですから、この結果は予想通りと言えます。
面白いのは、成績の面で振るわない後方グループの学生ほど授業評価が厳しいという結果です。授業評価の項目、「配布資料の役立ち具合」、「教員の熱意」、「理解度」など10項目すべてにおいて、後方グループが前方より厳しい評価を下したのだとか。ごく単純に言えば、「自分のことを棚に上げて、人のせいにする」という気質?…。一方で、理解ができない→後ろの方に座る→授業に熱が入らない→成績もぱっとしない→ますます理解できない→…という悪循環も容易に想像できますけどね。
なお、授業評価が最も甘いのは、成績の良い前方グループと思いきや、中央グループなのだそうで。失礼ながら、「どっちでもいい」というか、あまり深く考えていない人たちがこのグループの特徴なのかもしれません。
この調査を実施した教授は、「(後ろに座るのは)自分が教員から見えづらいよう、少しでも長い距離を取りたいのかもしれない。でも、見え方は同じなんですがね」と話しているそうです。全くその通りで、教壇からは、どんなに広い教室でも、隅々まで見えてしまうのが不思議。目立たないようにしているようでも、そういう不審(!)な動きこそ逆に目立ってしまうということも、教壇に立ってみて初めてわかるというものです。
それはそうと、大学の授業に限らず、人の話を聴く時の座席の選び方はとても難しい。絶対に面白くてためになる話をしてくれるとわかっていても、私は進んで最前列に陣取ろうとは決して思わない。よく講演会などに行くと、「前の方から詰めておかけください」と言われますが、申し訳ないのですが、大きなお世話、と思ってしまいます。どの席で聴くか、それは聴衆にこそ選ぶ権利があります。主催者の都合で、あるいは講師に失礼だからと勝手に判断して、前の方に詰めて座らせるのは、主催者の奢りでしかありませんね。
講演会は、基本的に「一対多」の世界ですから、その「多」の側に属している限り、話者である「一」を「多」の一部が独り占めすることは不可能。ならば、いっそのこと「多」に紛れて、できるだけ後ろの方の席から自分以外の「多」の反応も一緒に眺めていたいと思う。その方が講演そのものも何倍も楽しめるといった種類の人間もいるわけですから。私のように。
この調査の「実験台」となって、「自分のことを棚に上げて、人のせいにする」なんてひどいレッテルを貼られてしまったかもしれない「後方グループ」の学生も、もしかしたらそんなニーズを秘めていたのかもしれませんね。
調査をした教授は、「分かりやすい講義をするため」に調査を始めたということですが、この調査の結果を「分かりやすい講義」にどう生かすのか気になるところです。今回のこの結果を見て、成績を上げるために今度から前の方の席に座る学生がいたとしても、成績が上がるとは思えませんけどね。問題なのは、最初から「やる気がある」かどうかですから。
先生としては、できるだけ近くで話を聞いてほしいのかもしれませんが、全員が「前方グループ」になる、てなわけにもいきませんし、誰かが「後方グループ」に属さなければならないのです。では、その後方グループの学生たちの授業評価を高めることが目的なのか?つまり、(やる気のあまり感じられない)後方グループの人たちにも、きちんと授業内容を理解してもらうために、たとえば、後方グループに意識的に声掛けをしたり、後方グループの人だけに特別レポートを課したり(!!)といった対策を講ずるということなのでしょうか。
今後、調査は継続するそうですので、その結果にも注目してみたいと思います。
ありがとうございました。
その結果を、「分かりやすい講義」にどう生かせるのか、よかったらお知らせください。大変興味がありますので。