行政刷新会議による事業仕分けも週明けの今日から再開。昼休みにウェブサイトをのぞいてみたら、ちょうどキャリア教育に関する事業についての議論をしているところでした。画面は鮮明とはいえないけれど、音声だけははっきり聞こえます。
キャリア教育に関連する初等中等局、生涯学習政策局、それぞれの事業について一通り説明があったあと、いつものように仕分け人たちの一斉攻撃開始!
この第3グループの民間仕分け人には、例の藤原和博さんも入っていて、予想通り、彼がまず口火を切っていました。彼自身が校長時代に取り組んできたことだから、「キャリア教育」そのものはどんどんやるべきだと彼は言う。ただ、たとえば、生涯学習政策局が予算要求している「キャリア教育・職業教育」の推進事業について、それは「国」がやるべきなのかと主張していました。いや、正しく言えば、国がいくつかの都道府県に委託してモデル的にやるべきものなのか、と。
「委託事業」とはいわばヒモ付きの事業です。本来、国がやるべきことを都道府県に代わってやってもらう。国から委託された都道府県は、国の定めたスキームに従って、実行委員会なり協議会なりをつくって、国からお金をもらって事業を進めます。計画書や報告書は当然のこと、場合によっては中間報告も求められることもあります。地方財政がどこも厳しい昨今、ヒモ付きとはいえ、国のお金で事業ができるならと、青森県でも多くの委託事業を抱えています。
藤原氏は、本当にキャリア教育の仕組みをつくりたいなら、全都道府県に1,000万円でもいいから地方交付税措置すべきだと言います。ヒモ付きでないお金で、それぞれの地方に合った仕組みを考えてもらった方がいい結果が出ると。国は、たとえばウェブ上で進行管理をするだけでいい。そうすれば、国の手間もかからないし、万事うまくいく…。
また、別の委員(誰かは不明)は、これからの時代、キャリア教育が大事だということはとてもよくわかる、文科省が本当にキャリア教育を推進したいのなら、事業を組んで一部のモデルにカネをかけるより、学習指導要領に盛り込んで、あまねく取り組むようにしたらどうなのか、と主張していました。もっともなことです。ただ、学習指導要領の改訂はすごく時間がかかるし、改訂されてから実際に学校で施行されるまでも何年もかかりますから、「事業」として取り組んだ方が手っ取り早い、という現実もありますけどね。(ところで、この委員は、発言の中で「学習指導要領」を「学習指導要綱(要項)」と二度ほど間違えて言っていました。少なくともああいう場所で発言するのなら用語は正しく使って欲しいものです。)
蓮舫委員も、いつものごとく、国がカネを出してやるべきことなのか、という一点張り。文科省の人が、「一部のモデルから始まったものが、確実に広がっている例もある」と、中学生の職場体験活動の実施校の数字を挙げて反論すると、彼女は、「そういうのは、比較して初めて意味を持つ数値。そういうやり方をしない場合と比較したのか」と言う。これには文科省も、「別のやり方をする機会がなかったもので…」とすごすご引き下がるしかない。
この仕分けの議論は、噛み合っている部分を探すのが大変なくらいちぐはぐな質疑応答に終始しています。委員が「まったく答えてもらっていない」と愚痴を言いたくなるのもよくわかります。質問に答えていないばかりか、論点をすりかえるのも官僚の得意技。議長?に、回答は要点のみ、手短にしてくださいと釘を刺される始末です。
ただ、噛み合わないのもよくわかる。だって、仕分け人の質問は、国の官僚としてとても答えられない質問ばかりですから。官僚の皆さんも、決して何も考えていないわけではなく、なぜ国がその事業をやるのかということをさんざん省内で議論してきたはず。でなければ、財政当局を説得して予算を獲得してこられなかったでしょう。なのに、いざ「民間」の人から問われると、納得させる答えを彼らは持ち合わせていない。
それが甘い、と言われれば、そうかもしれません。だから公務員って甘いんだといわれれば、それも甘受しなくてはなりません。民間の会社では、「なんでおたくの会社ではそんなもの作っているの?」と聞かれたら、必ず答えは持っているはずだし、そもそもそんなこといちいち聞かれる筋合いはありません。「民間」ですからね。自由市場の資本主義社会ですから。
でも、質問に答えられない官僚たちも、見ていてかわいそうな気もします。まともに答えられないのは、「公務員」だから、としか言いようがないのかもしれませんね。
結局、1時間足らずの議論の末、キャリア教育関連の一連の事業は、地方自治体に委ねるという結論に至りました。ま、今日の噛み合わない議論を聞いていれば、当然の結末ですが、それにしても、なんでもかんでも地方自治体にとか民間にとか言われていますが、実際、それだけの受け皿がいったいどこにあるというのだろう? 企業やNPOがやれることなら、とっくに手を付けているのではないのでしょうか? 民間や地方ではできないことだから国がやってきた、という事業もけっこうあるような気がします。
じゃ、いったい国の役割は何なのだろう? 同様に、県の役割って? あるいは市町村がやるべきことって?
地方自治は「補完の原則」だと確かに言われますが、仕分け人の方々が口々におっしゃるように、キャリア教育は住民に一番近い基礎自治体が進めればいい、というのは、少なくとも今の段階では、決して現実的な話しではないと思います。
キャリア教育に関連する初等中等局、生涯学習政策局、それぞれの事業について一通り説明があったあと、いつものように仕分け人たちの一斉攻撃開始!
この第3グループの民間仕分け人には、例の藤原和博さんも入っていて、予想通り、彼がまず口火を切っていました。彼自身が校長時代に取り組んできたことだから、「キャリア教育」そのものはどんどんやるべきだと彼は言う。ただ、たとえば、生涯学習政策局が予算要求している「キャリア教育・職業教育」の推進事業について、それは「国」がやるべきなのかと主張していました。いや、正しく言えば、国がいくつかの都道府県に委託してモデル的にやるべきものなのか、と。
「委託事業」とはいわばヒモ付きの事業です。本来、国がやるべきことを都道府県に代わってやってもらう。国から委託された都道府県は、国の定めたスキームに従って、実行委員会なり協議会なりをつくって、国からお金をもらって事業を進めます。計画書や報告書は当然のこと、場合によっては中間報告も求められることもあります。地方財政がどこも厳しい昨今、ヒモ付きとはいえ、国のお金で事業ができるならと、青森県でも多くの委託事業を抱えています。
藤原氏は、本当にキャリア教育の仕組みをつくりたいなら、全都道府県に1,000万円でもいいから地方交付税措置すべきだと言います。ヒモ付きでないお金で、それぞれの地方に合った仕組みを考えてもらった方がいい結果が出ると。国は、たとえばウェブ上で進行管理をするだけでいい。そうすれば、国の手間もかからないし、万事うまくいく…。
また、別の委員(誰かは不明)は、これからの時代、キャリア教育が大事だということはとてもよくわかる、文科省が本当にキャリア教育を推進したいのなら、事業を組んで一部のモデルにカネをかけるより、学習指導要領に盛り込んで、あまねく取り組むようにしたらどうなのか、と主張していました。もっともなことです。ただ、学習指導要領の改訂はすごく時間がかかるし、改訂されてから実際に学校で施行されるまでも何年もかかりますから、「事業」として取り組んだ方が手っ取り早い、という現実もありますけどね。(ところで、この委員は、発言の中で「学習指導要領」を「学習指導要綱(要項)」と二度ほど間違えて言っていました。少なくともああいう場所で発言するのなら用語は正しく使って欲しいものです。)
蓮舫委員も、いつものごとく、国がカネを出してやるべきことなのか、という一点張り。文科省の人が、「一部のモデルから始まったものが、確実に広がっている例もある」と、中学生の職場体験活動の実施校の数字を挙げて反論すると、彼女は、「そういうのは、比較して初めて意味を持つ数値。そういうやり方をしない場合と比較したのか」と言う。これには文科省も、「別のやり方をする機会がなかったもので…」とすごすご引き下がるしかない。
この仕分けの議論は、噛み合っている部分を探すのが大変なくらいちぐはぐな質疑応答に終始しています。委員が「まったく答えてもらっていない」と愚痴を言いたくなるのもよくわかります。質問に答えていないばかりか、論点をすりかえるのも官僚の得意技。議長?に、回答は要点のみ、手短にしてくださいと釘を刺される始末です。
ただ、噛み合わないのもよくわかる。だって、仕分け人の質問は、国の官僚としてとても答えられない質問ばかりですから。官僚の皆さんも、決して何も考えていないわけではなく、なぜ国がその事業をやるのかということをさんざん省内で議論してきたはず。でなければ、財政当局を説得して予算を獲得してこられなかったでしょう。なのに、いざ「民間」の人から問われると、納得させる答えを彼らは持ち合わせていない。
それが甘い、と言われれば、そうかもしれません。だから公務員って甘いんだといわれれば、それも甘受しなくてはなりません。民間の会社では、「なんでおたくの会社ではそんなもの作っているの?」と聞かれたら、必ず答えは持っているはずだし、そもそもそんなこといちいち聞かれる筋合いはありません。「民間」ですからね。自由市場の資本主義社会ですから。
でも、質問に答えられない官僚たちも、見ていてかわいそうな気もします。まともに答えられないのは、「公務員」だから、としか言いようがないのかもしれませんね。
結局、1時間足らずの議論の末、キャリア教育関連の一連の事業は、地方自治体に委ねるという結論に至りました。ま、今日の噛み合わない議論を聞いていれば、当然の結末ですが、それにしても、なんでもかんでも地方自治体にとか民間にとか言われていますが、実際、それだけの受け皿がいったいどこにあるというのだろう? 企業やNPOがやれることなら、とっくに手を付けているのではないのでしょうか? 民間や地方ではできないことだから国がやってきた、という事業もけっこうあるような気がします。
じゃ、いったい国の役割は何なのだろう? 同様に、県の役割って? あるいは市町村がやるべきことって?
地方自治は「補完の原則」だと確かに言われますが、仕分け人の方々が口々におっしゃるように、キャリア教育は住民に一番近い基礎自治体が進めればいい、というのは、少なくとも今の段階では、決して現実的な話しではないと思います。
大学や独立法人への天下りなど、したい放題をしています。日本社会の最大のガンは、文科省です。「『おバカ教育』の構造」という本を読んでごらんなさい。すべてが分かります。
無責任で不道徳な官僚には、何もさせるべきではありません。
キャリア教育の実践、本当にいつも感心しております。視線を常にずっと先に置くということ、現場ではなかなかできそうでできないものですから。
大和さんがおっしゃるように、文科省にもたくさんの非はあるとは思いますが、そう見えるのは、やはり「教育」という国民の多くが関心を持つ分野の担当省庁だからだと思います。
少なくとも、私は1冊の本を読んで「すべてが分かる」とは思ってはいません。
比較のしようがないものを比較しろというのは暴論でしょうね。
文科省の官僚でも、(キャリア教育ではないけれど)体験学習に休日にお忍びで参加する人もいて、そういう積み上げが様々な施策に結びついてもいます。