「グラン・ブルー」プロダクション・ノート

より深く、より遠くへ。光の届かない世界を求めて二人の男が競い合う─。この映画が描くのは、あまりにも非日常的な“グラン・ブルー”の世界です。

一般に「グラン・ブルー」と呼ばれるこの映画には、ちょっとややこしいのですが、ヴァージョンが3本あります。

1988年、リュック・ベッソン監督は、この映画の最初の編集の際、168分もの長尺となってしまったことから自ら再編集を決意し、132分の「オリジナル・ヴァージョン」を完成版としました。フランスではこれが大ヒットしたのですが、世界配給権を持つ20世紀フォックス社は、これをさらに120分に縮めた上で、英語版を国際版として配給しました。日本で最初に公開されたのもこのヴァージョンでした。全米で公開された時には、"The Big Blue"というタイトルで、しかも2分ほど短いものでした。

翌年、フランスではファンの要請で最初の編集版（ロング・ヴァージョン）が公開され、こちらも大ヒットとなりますが、1992年にはこれが日本でも「グレート・ブルー完全版」として公開されます。

公開10周年にあたる1998年、フランスでこれを記念して「オリジナル・ヴァージョン」のリバイバル公開が行われ、日本でもフランスに次いで封切られました。私が劇場（シネスイッチ銀座）で見たのは、このヴァージョンでした。ちなみに、その時買ったパンフレットは、ほぼ100ページにもわたる読み応えのある「本」になっていまして、オリジナル・ヴァージョンとロング・ヴァージョンの違いなど、詳細な記録が掲載されています。もう一つちなみに、私が持っているDVDはロング・ヴァージョンとなっています。

この作品は、リュック・ベンソン監督の出世作であると同時に、主演のジャン・レノを一躍有名にした作品でもあります。この二人のコンビが、のちにあの「レオン」（1993年）を作ることになるのは周知のとおり。

ジャン・レノが演じるエンゾ・モリナリは、実在のイタリア人ダイバー、エンツォ・マイヨルカをモデルとしています。本格的な映画初主演となるジャン・マルク・バール演じるジャック・マイヨールはもちろん、同名の世界最高のダイバーです。本物のマイヨールは、2001年12月23日、74歳の生涯を閉じます。自殺でした。マイヨールについては、改めて書きたいと思っています。ジョアンナ役のロザンナ・アークエットは、「トゥルーロマンス」のパトリシア・アークエットの姉にあたります。確かにイルカに似てます。ところで、TOTOに「ロザンナ」という曲がありますが、これは彼女の名前をとったものなんだって！映画とは関係ないことですが。

「グラン・ブルー」は、私の好きな映画ベスト10には必ず入るであろう大好きな映画です。この映画から感じたこと、学んだことはたくさんあります。何回かに分けて「グラン・ブルー」を取り上げていきたいと思います。

「グラン・ブルー」>>Amazon.co.jp