「アントレプレナー」とは、起業家、興行主という意味です。事業や会社を起こすことで、これまでなかった新しい価値を社会に提供する人として、近年特に注目を浴びています。
ところで、近代以前、ユーラシア大陸の東西に位置するヨーロッパとアジアの間には、陸路と海路の2本の大動脈がありました。陸路は中央アジアの砂漠地帯を横断するオアシスの道(のちに「シルクロード」と呼ばれます)、海路はインド洋、ペルシア湾を経由する海の道です。前者の主要な商品は、中国の絹や陶磁器、また後者においてはインド・東南アジアの香料でした。
いずれにしても、この東西交易ルートにおいては、たとえばフランス人が直接中国まで行って陶磁器を買い付けていたわけではなく、ヨーロッパとアジアの商品はほとんどの場合、「仲買人」によって仲介取引されていました(なかには、ヴェネティアのマルコ・ポーロ親子のように直接中国まで行ってしまったヒトもいましたが)。
陸路ではらくだを駆ってオアシス間を往来するキャラバン隊商、海路では帆船を駆使した仲買人が大活躍しました。その多くは、ペルシア、トルコ、中央アジアのイスラム教徒でした。「千夜一夜物語(アラビアンナイト)」に登場するシンドバードもそのような仲買人の一人と言えるでしょう。彼らは一歩間違えば「冒険家」とも見まごうほどの危険と常に隣り合わせに置かれながらも、事業を成し遂げれば莫大な富を得ることができたのです。
(もっとも、シンドバードの場合は、「暇を持て余し」た挙げ句に航海に出て、暇つぶしどころか肝を冷やすような途方もない冒険をし、最後には金銀財宝をがっぽり得て故郷に戻るというパターンを7回も繰り返すという設定なので、必ずしも仲買人とか商売人というイメージではないかもしれません)
それはさておき、フランスでは、そのような仲買人を「仕事を請け負う、引き受ける、企てる」といった意味合いで“entreprendre”と呼びました。これが転じて“entrepreneur”アントレプレヌール、アントレプレナーとなったわけです。ヨーロッパ人にとっては、彼らなしではアジアの物産を手に入れることはできなかったわけですから、彼らの得る莫大な中間マージンにも目をつぶるしかありませんでした。
ところが、航海術の発達とともに、ヨーロッパ人は、イスラムの仲買人の手を経ないで直接アジアに行くルートを見つけます。ヴァスコ・ダ・ガマの喜望峰廻りのルートです。コロンブスの航海も、もともとは「地球が丸い」ことを前提とした西廻り航路を開拓しようとしたものでした。こうした「大航海者」たちもまたアントレプレナーと言えます。
19世紀末から20世紀初頭にかけては、科学技術や工業の分野でアントレプレナーたちが続出します。自動車の大量生産を始めたヘンリー・フォード、電球や映画など多くの発明を残したエジソン、飛行機を発明したライト兄弟、みんなアントレプレナーと言えます。
どの時代のアントレプレナーにも、共通して備わっていたのは、果敢なチャレンジ精神や実行力、探求心、創造性といった資質です。こうした精神や資質を「アントレプレナーシップ」と呼びます。
現在の日本では、1990年代半ば以降のベンチャーブームの中で、アントレプレナーとは「起業家」つまりベンチャービジネスを起こす人といった意味合いで使われますが、単に「会社を起こす」テクニックだけでなく、起業家にはアントレプレナーシップが求められます。そして、“ホリエモン”の事件を考えれば、アントレプレナーシップには、モラルとか社会的倫理観といった資質も必要なのかもしれません。
いや、アントレプレナーシップが求められるのは、何も起業を志す人だけとは限りません。会社の中でもアントレプレナーシップは大事だし、地域やNPOの活動でも同じです。新しいことにチャレンジしようとする精神とそれを実行に移すバイタリティ、そして何よりも豊かな創造性。どんな形であれ将来を担うことになる子どもたちにも、着実に身に付けさせたい資質です。
ただし、それを学校だけに期待するのはまちがいでしょう。親と学校と地域社会が一緒になって、つまり、子どもを取り巻くあらゆる大人が束になって取り組まなければ、アントレプレナーシップを育てることはできないのです。
ところで、近代以前、ユーラシア大陸の東西に位置するヨーロッパとアジアの間には、陸路と海路の2本の大動脈がありました。陸路は中央アジアの砂漠地帯を横断するオアシスの道(のちに「シルクロード」と呼ばれます)、海路はインド洋、ペルシア湾を経由する海の道です。前者の主要な商品は、中国の絹や陶磁器、また後者においてはインド・東南アジアの香料でした。
いずれにしても、この東西交易ルートにおいては、たとえばフランス人が直接中国まで行って陶磁器を買い付けていたわけではなく、ヨーロッパとアジアの商品はほとんどの場合、「仲買人」によって仲介取引されていました(なかには、ヴェネティアのマルコ・ポーロ親子のように直接中国まで行ってしまったヒトもいましたが)。
陸路ではらくだを駆ってオアシス間を往来するキャラバン隊商、海路では帆船を駆使した仲買人が大活躍しました。その多くは、ペルシア、トルコ、中央アジアのイスラム教徒でした。「千夜一夜物語(アラビアンナイト)」に登場するシンドバードもそのような仲買人の一人と言えるでしょう。彼らは一歩間違えば「冒険家」とも見まごうほどの危険と常に隣り合わせに置かれながらも、事業を成し遂げれば莫大な富を得ることができたのです。
(もっとも、シンドバードの場合は、「暇を持て余し」た挙げ句に航海に出て、暇つぶしどころか肝を冷やすような途方もない冒険をし、最後には金銀財宝をがっぽり得て故郷に戻るというパターンを7回も繰り返すという設定なので、必ずしも仲買人とか商売人というイメージではないかもしれません)
それはさておき、フランスでは、そのような仲買人を「仕事を請け負う、引き受ける、企てる」といった意味合いで“entreprendre”と呼びました。これが転じて“entrepreneur”アントレプレヌール、アントレプレナーとなったわけです。ヨーロッパ人にとっては、彼らなしではアジアの物産を手に入れることはできなかったわけですから、彼らの得る莫大な中間マージンにも目をつぶるしかありませんでした。
ところが、航海術の発達とともに、ヨーロッパ人は、イスラムの仲買人の手を経ないで直接アジアに行くルートを見つけます。ヴァスコ・ダ・ガマの喜望峰廻りのルートです。コロンブスの航海も、もともとは「地球が丸い」ことを前提とした西廻り航路を開拓しようとしたものでした。こうした「大航海者」たちもまたアントレプレナーと言えます。
19世紀末から20世紀初頭にかけては、科学技術や工業の分野でアントレプレナーたちが続出します。自動車の大量生産を始めたヘンリー・フォード、電球や映画など多くの発明を残したエジソン、飛行機を発明したライト兄弟、みんなアントレプレナーと言えます。
どの時代のアントレプレナーにも、共通して備わっていたのは、果敢なチャレンジ精神や実行力、探求心、創造性といった資質です。こうした精神や資質を「アントレプレナーシップ」と呼びます。
現在の日本では、1990年代半ば以降のベンチャーブームの中で、アントレプレナーとは「起業家」つまりベンチャービジネスを起こす人といった意味合いで使われますが、単に「会社を起こす」テクニックだけでなく、起業家にはアントレプレナーシップが求められます。そして、“ホリエモン”の事件を考えれば、アントレプレナーシップには、モラルとか社会的倫理観といった資質も必要なのかもしれません。
いや、アントレプレナーシップが求められるのは、何も起業を志す人だけとは限りません。会社の中でもアントレプレナーシップは大事だし、地域やNPOの活動でも同じです。新しいことにチャレンジしようとする精神とそれを実行に移すバイタリティ、そして何よりも豊かな創造性。どんな形であれ将来を担うことになる子どもたちにも、着実に身に付けさせたい資質です。
ただし、それを学校だけに期待するのはまちがいでしょう。親と学校と地域社会が一緒になって、つまり、子どもを取り巻くあらゆる大人が束になって取り組まなければ、アントレプレナーシップを育てることはできないのです。
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