「ウルトラミラクルラブストーリー」─私にはメッセージが伝わってきた、と思う。

2009年／日本／120分
【監督・脚本】　横浜聡子
【エンディングテーマ】100s 『そりゃそうだ』
【出演】　松山ケンイチ／水木陽人　麻生久美子／神泉町子　ノゾエ征爾／田中太　ARATA ／島田要　藤田弓子／三上のカミサマ　原田芳雄／三沢医師　渡辺美佐子／柴田もつ
[2009/05/30　青森アムゼ]
写真：(C)2009「ウルトラミラクルラブストーリー」製作委員会

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自主映画「ジャーマン＋雨」の横浜聡子監督のメジャーデビュー作品にして、今をときめく松山ケンイチ主演。で、この二人はいずれも青森県出身。映画の舞台も全編青森県内。ということで、県内各地で先行ロードショー。さっそく公開初日に見てきました。

上映が終わって出てくるときに、年配の男性が、「まんつ、おぢづきのねえやづだの」とぼそっと連れの方につぶやいていたとおり、松山ケンイチが今回演じるのは、あまりにも自分中心で「かちゃくちゃない」（うるさくてわけのわからない）青年、陽人（ようじん）。よく言えば「純粋」、ということになるのでしょうが、このキャラクターって、「ジャーマン＋雨」の「チョーわがままで自分勝手」な「林よし子」と重なります。そういえば、「よし子」役の野嵜好美が、この映画でも、幼稚園の先生役でチョイ出演しています。もちろん、「よし子」とは全然印象が違います。

この映画のテーマは、タイトルどおり「愛」。しかも掛け値なしの「純愛」。昨日書いた「アイデン＆ティティ24歳／27歳」で「愛しかない／それが世界を動かしている／愛そして愛だけだ／それは否定できない」というボブ・ディランの詞が出てきましたが、まさにこの映画は、そんな感じでした。「アイデン＆ティティ」といえば、映画の中で「彼女」を演じているのが、この映画で陽人が恋に落ちる「町子先生」役の麻生久美子。最近、自分の中で、この手の「シンクロ」がとても多い。いろんなことが自分でも気づかないうちにどんどんつながっていっています。

それはそうと、一目惚れした町子先生に対する陽人のアプローチの仕方といったら、オイオイ、というくらい不器用でストレート。普通なら引いてしまうところですが、町子先生も、過去を引きずってきている女性なので、そんなはちゃめちゃなアプローチが、逆に新鮮に映ったのかもしれません。夜の道を歩きながら、町子先生が、生きものの進化は「恐怖」によるのではないか、みたいなことを陽人に何気なく語る。いろいろな意味で、不思議と心に残るシーンなのですが、陽人にとっては、その一言が人生を変えることになるのです。

「キャベツ畑での気まぐれ」が招いたある出来事がきっかけで、陽人は、自分が「進化できる」ことに気づく。それもこれも、ただただ町子先生に好かれたい、という一心からなわけですが、恋ってほんとに「ウルトラミラクル」なのね…。

そんな一途な農業青年・陽人を、松山ケンイチがなり切って演じているのがとてもよかった。なりきりといえば、町子先生（と元彼）を除くすべての登場人物が津軽弁を話しているですが、松山ケンイチは下北出身なので、やっぱり下北弁になってます。それでも、地元の言葉を使って演じているのが、いかにも楽しげに見えました。麻生久美子演じる町子先生が、終始淡々としているのもいい。表情をあまり出さないけれど、町子先生は、きっと陽人をしっかり受け止めているんだなと感じました。

「ジャーマン＋雨」と同じように、突拍子もないストーリー。だけど、作り手が何かメッセージを送っているんだということがはっきりと感じられる映画です。それをどう受け止めるか、そもそも伝わっているのかどうかは、もちろん人それぞれで違う。でも、いくつかの印象深いシーン（きっと、横浜監督が秘かに込めた、深い、隠された意味があるのだろうと思わせるような）を含めて、見た人と、そんな話をしたくなる映画でした。ここでは書きませんが、私にはそのメッセージがとてもよく伝わってきた、と思う。