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カクレマショウ

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『日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人』

2011-09-13 | ■本
筆者の三輪康子さん、八戸市出身ということで、地元紙(デーリー東北)に書評が載っていたので、さっそく読んでみました。

三輪さんは、新宿・歌舞伎町にあるチェーンホテルの支配人。場所柄、暴力団関係者が我が物顔でのさばるホテルに着任した彼女は、強い意志と態度をもってヤクザたちと向き合う。彼女は、「暴力団関係者は泊めない」というルールに徹底的にこだわり、ヤクザの暴言や脅しにも決して屈しない。それは、「クレーマー」という範疇をとっくに超えた脅迫なのですが、彼女は、彼らの理不尽な脅しにも「普通の」クレーマーと同じように接する。

「怒りに対してはやさしさを」というのが、彼女の一貫したポリシー。どんなに怒りまくっている人も、こちらが「やさしさ」をもって接すれば、怒りも収まるのだという。「やさしさ」と言っても、卑屈になるということではありません。

日本刀を持って脅してきたヤクザに対しても、彼女は毅然とした態度で対峙する。「お客様に、私は殺せません!」と言い放つ彼女。それは、そのヤクザに対する最大級の「やさしさ」だと思う。「なんで、お前怖がらないんだよ…」と言わせた時点で、彼女の勝ちですね。

三輪さんは、それまでアパレル関係の仕事をしていたそうですが、支配人の公募で採用されたのだとか。ホテル業界で働くのは初めてだという。それまでどんなキャリアを積んできたのかは本書では詳細にはされていません。でも、どんな職業にしろ、専門的な知識や技術よりも、「人としてどう生きているか」ということのほうが大切なんだなあと改めて思いました。彼女がそれまでに積み上げてきた生き方、働き方、人への接し方が、ホテルの支配人という立場になって、いよいよ実を結んだということではないでしょうか。

彼女は決して「例外」を認めません。「正しい」と信じたことは必ずやり通します。そういう一貫した姿勢は、スタッフにやる気を取り戻させ、あるいは「超クレーマー」であるヤクザたちの態度も変えていく。チェーン内のホテルの業績が日本一になったというのは、当然の結果でしかないでしょう。

三輪さんのそういう資質の源泉が、繰り返し登場する「父親」にあったということも興味深い。八戸で開業医をしていた父は、「人生をかけて人助けをする」ような医者だったという。そういう父の背中を見て育った彼女が、別の道ではあるけれど、父と同じように「人の気持ちを救うこと」に自分の使命を感じて仕事をしている。これも当然の帰結のような気がします。

つまらないことでクレームを言い立てたり、面白くないことに怒鳴ったりする人は、心がすさんでいるのです。そういう心に、三輪さんはできるだけ近づこうとする。怒りに対して怒りをもって近づいても、反発するだけです。だからこそ、怒りに対してはやさしさを、なのですね。一つでも多くのやさしさで寄り添おうとする。すさんだ心は、やさしさには吸収されてしまうのです。ただし、見せかけのやさしさではなくて、本物の、強いやさしさには。

クレーマーに対する心得も、参考になります。まず、「クレーム処理」ではなく、「クレーム対応」をすることが大事。「処理」はお金やもので簡単に処理できてしまいますから。しかも、「クレーム対応」とは、クレームに対応することではなくて、「人への対応」だと言う。つまり、「全力で人の気持ちを理解すること」だと。そのポイントを、三輪さんは4つ挙げています。

1 第一声、「謝罪のスピード」がすべてを決める。
2 謝罪のスピードは、スタッフとの信頼関係にかかっている。
3 自分の心遣いすべてを投入! 「誰がどう見ても反省している」とわかる形で。
4 「お客様の傷ついた心」にだけ焦点を当てる。


詳しくは、本を読んでもらうとして、なるほどな、と思うことばかりです。とは言っても、なかなか実際にはそんなふうに対応できないところが、逆に三輪さんのすごいところでもあります。

この本、確かに感動的なエピソードがたくさん載っているし、「いかに生きるべきか」のお手本でもあるし、プラス、クレーム対応のマニュアルとしてもとてもためになる本なのですが、どうも、最後まで「鼻につく」ところが気になって…。「歌舞伎町のジャンヌ・ダルク」と呼ばれ、警察からも感謝状を送られて、スタッフからも信頼があつくて、云々と、「ご自分で」書いているところが…。そういうことは、他人から言われて価値のあることではないかと…。

いえ、もちろん、三輪さん本人が書くからリアリティがあるし、迫力もあるわけですが、ちょっと、私には少しだけ気になりました。蛇足でしたね。

『日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人』『』≫Amazon.co.jp

 

 

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