大阪府堺市は、「自転車のまち」。
堺市役所建設局には、「自転車まちづくり推進室」という部署まであるくらいで、堺市を代表する産業である自転車製造業を生かし、市を挙げて「自転車によるまちづくり」を進めています。
堺の自転車づくりのルーツは、「鉄砲鍛冶」の技術にあります。古くからの金属加工の技術が、自転車の部品製造に生かされているわけです。堺市には多くの自転車メーカーがありますが、国産自転車・部品製造の出荷額のシェアは約40%にものぼるのだとか。
中でも、(株)シマノの自転車部品は、世界的にもよく知られています。シマノのすごいところは、教育CSRの一環として、「自転車」を通した教育支援活動を行っていることです。
シマノが設立している「自転車博物館」のサイトには、学校向けのページに、こんなことが書かれています。
自転車は身近にありすぎてその存在を見落とされがちですが、今日の私たちの生活になくてはならないものの一つになっています。自転車は、子供たちが最初に手にすることのできる移動手段なわけですが、単なる移動手段としてだけでなく、夢や希望を叶える冒険の道具でもあるのです。また、昨今注目されているキーワードである「健康」・「安全」・「環境」にも深く関わっており、総合学習には格好の題材と思われます。
平成17年から始まった経済産業省のキャリア教育プロジェクト。堺市にあるNPO法人南大阪地域大学コンソーシアムが、シマノと組んで、「こんな自転車欲しかってん」というキャリア教育プログラムを企画しました。これを受けたのが、堺市立西陶器小学校。同校では、今でも毎年、6年生の「総合的な学習の時間」を使って、このプログラムを実施しています。子どもたちが、何時間もかけて地元・堺と自転車の関わりや「自転車のまちづくり」について学び、最終的に、グループごとに「自分たちの欲しい自転車」を企画して、プレゼンする。子どもたちの企画を、大人がちゃんと審査して、優秀作品には賞を与える。
このプログラムの中で、シマノの社員は、「自転車のプロ」として欠かせない存在です。自転車の仕組みや歴史を教えるのは、「学校の先生」ではなくて、その道の専門家。これは、子どもたちにとって、非常に大きな意味を持つでしょう。
先日、当初からずっとこのプログラムを担当している清水順子先生にお話を伺う機会がありました。最初は、ご自身もキャリア教育とかよくわからなかったけど、シマノの社員の方の熱意とそれによって引き出される子どもたちの輝く瞳に接するうちに、自分自身も、また周りの先生方も、どんどん意識が変わっていったとおっしゃいます。自転車を通した一連の学習が、子どもたちの将来にどれだけ大きな影響を与えることか。そのことを確信するようになったとおっしゃっていました。
学校の中や子どもたちの中だけでしか通用しない学びは、意味がない。学校で学ぶことは、すべて、実社会の中でもちゃんと役立たなければならない。キャリア教育って、そういうことだと思うのですが、「こんな自転車欲しかってん」という取組は、まさに、そのことを象徴的に示しています。
今回は、たまたま別の小学校(堺市立八下西<やしもにし>小学校)で、やはりシマノの社員が関わっている「レンタサイクルを生かした堺のまちづくり」というプログラムの最終審査会の様子を見学することができました。子どもたちが、使い勝手のいいレンタサイクルのシステムを企画して、プレゼンするものです。自転車博物館、「自転車のまちづくり推進室」、大学、教育委員会など、様々な大人が、子どもたちの発表を審査します。厳しいコメントもばんばん出てきます。子どもたちは、そのたびにしょぼんとしたり、逆にほめられると、本当にうれしそうな顔をする。
発表終了後、審査員が別室で審査している時間を利用して、シマノの社員が子どもたちを3つのグループに分けて「ふりかえり」をする。
プレゼンで大事なのは、相手に言いたいことが伝わったかどうかだよ。プレゼンで厳しいこと言われたグループもあったけど、あれは怒られているんじゃないんだよ。興味がなければあんなコメントはもらえないよ。もっといいプレゼンにしてもらうためのヒントなんだよ。
企画は、自分で考えて、決めて、準備して、行動することが大切だよ。だけど、そのためには、ほかの人の意見を聞くことも大事だね。
こんな話しを、シマノの皆さんが、真剣に、子どもたちの前で語る。もちろん、聞いている子どもたちの目も、語り手以上に真剣です。こういう体験をした子どもたちは、大人ってすごいな、早くあんなかっこいい大人になりたいなと思うにちがいありません。そして、かっこいい大人になるためにはどうしたらいいのか、そのことをゆっくりと考え始めることでしょう。
堺市は、たまたま「自転車」というツールを使っていますが、それぞれの地域でそれぞれが持つ資源を生かせばいいわけです。ツールは何でもいいけど、肝心なのは、大人たちの「熱意」だよなあと思いました。
それから、堺市の場合、学校と企業(シマノ)を結ぶつなぎ役として、NPO法人南大阪地域大学コンソーシアムの学生・院生がとても重要な意味を持っています。このことについては、また次回に触れます。
堺市役所建設局には、「自転車まちづくり推進室」という部署まであるくらいで、堺市を代表する産業である自転車製造業を生かし、市を挙げて「自転車によるまちづくり」を進めています。
堺の自転車づくりのルーツは、「鉄砲鍛冶」の技術にあります。古くからの金属加工の技術が、自転車の部品製造に生かされているわけです。堺市には多くの自転車メーカーがありますが、国産自転車・部品製造の出荷額のシェアは約40%にものぼるのだとか。
中でも、(株)シマノの自転車部品は、世界的にもよく知られています。シマノのすごいところは、教育CSRの一環として、「自転車」を通した教育支援活動を行っていることです。
シマノが設立している「自転車博物館」のサイトには、学校向けのページに、こんなことが書かれています。
自転車は身近にありすぎてその存在を見落とされがちですが、今日の私たちの生活になくてはならないものの一つになっています。自転車は、子供たちが最初に手にすることのできる移動手段なわけですが、単なる移動手段としてだけでなく、夢や希望を叶える冒険の道具でもあるのです。また、昨今注目されているキーワードである「健康」・「安全」・「環境」にも深く関わっており、総合学習には格好の題材と思われます。
平成17年から始まった経済産業省のキャリア教育プロジェクト。堺市にあるNPO法人南大阪地域大学コンソーシアムが、シマノと組んで、「こんな自転車欲しかってん」というキャリア教育プログラムを企画しました。これを受けたのが、堺市立西陶器小学校。同校では、今でも毎年、6年生の「総合的な学習の時間」を使って、このプログラムを実施しています。子どもたちが、何時間もかけて地元・堺と自転車の関わりや「自転車のまちづくり」について学び、最終的に、グループごとに「自分たちの欲しい自転車」を企画して、プレゼンする。子どもたちの企画を、大人がちゃんと審査して、優秀作品には賞を与える。
このプログラムの中で、シマノの社員は、「自転車のプロ」として欠かせない存在です。自転車の仕組みや歴史を教えるのは、「学校の先生」ではなくて、その道の専門家。これは、子どもたちにとって、非常に大きな意味を持つでしょう。
先日、当初からずっとこのプログラムを担当している清水順子先生にお話を伺う機会がありました。最初は、ご自身もキャリア教育とかよくわからなかったけど、シマノの社員の方の熱意とそれによって引き出される子どもたちの輝く瞳に接するうちに、自分自身も、また周りの先生方も、どんどん意識が変わっていったとおっしゃいます。自転車を通した一連の学習が、子どもたちの将来にどれだけ大きな影響を与えることか。そのことを確信するようになったとおっしゃっていました。
学校の中や子どもたちの中だけでしか通用しない学びは、意味がない。学校で学ぶことは、すべて、実社会の中でもちゃんと役立たなければならない。キャリア教育って、そういうことだと思うのですが、「こんな自転車欲しかってん」という取組は、まさに、そのことを象徴的に示しています。
今回は、たまたま別の小学校(堺市立八下西<やしもにし>小学校)で、やはりシマノの社員が関わっている「レンタサイクルを生かした堺のまちづくり」というプログラムの最終審査会の様子を見学することができました。子どもたちが、使い勝手のいいレンタサイクルのシステムを企画して、プレゼンするものです。自転車博物館、「自転車のまちづくり推進室」、大学、教育委員会など、様々な大人が、子どもたちの発表を審査します。厳しいコメントもばんばん出てきます。子どもたちは、そのたびにしょぼんとしたり、逆にほめられると、本当にうれしそうな顔をする。
発表終了後、審査員が別室で審査している時間を利用して、シマノの社員が子どもたちを3つのグループに分けて「ふりかえり」をする。
プレゼンで大事なのは、相手に言いたいことが伝わったかどうかだよ。プレゼンで厳しいこと言われたグループもあったけど、あれは怒られているんじゃないんだよ。興味がなければあんなコメントはもらえないよ。もっといいプレゼンにしてもらうためのヒントなんだよ。
企画は、自分で考えて、決めて、準備して、行動することが大切だよ。だけど、そのためには、ほかの人の意見を聞くことも大事だね。
こんな話しを、シマノの皆さんが、真剣に、子どもたちの前で語る。もちろん、聞いている子どもたちの目も、語り手以上に真剣です。こういう体験をした子どもたちは、大人ってすごいな、早くあんなかっこいい大人になりたいなと思うにちがいありません。そして、かっこいい大人になるためにはどうしたらいいのか、そのことをゆっくりと考え始めることでしょう。
堺市は、たまたま「自転車」というツールを使っていますが、それぞれの地域でそれぞれが持つ資源を生かせばいいわけです。ツールは何でもいいけど、肝心なのは、大人たちの「熱意」だよなあと思いました。
それから、堺市の場合、学校と企業(シマノ)を結ぶつなぎ役として、NPO法人南大阪地域大学コンソーシアムの学生・院生がとても重要な意味を持っています。このことについては、また次回に触れます。
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