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カクレマショウ

やっぴBLOG

「辛酸なめ子」研究(1)

2011-11-22 | ■本
辛酸なめ子―。

まずこのふざけたペンネームである。「池松江美」という素敵な本名がありながら、なぜあえて、辛酸をなめる子なのか?

数年前、テレビのバラエティによく出ていた頃は、このインパクトある名前に、見事なサブカルへの傾倒ぶり、そして地味な見た目とは裏腹のぶっとび言動の数々に、なんだこの人は、とひそかに気になっていたものでした。週刊誌の連載も、目に入れば必ず読んで、おー、相変わらず我が道を行く、は健在。と、ひそかに(あくまでもひそかに!)見守ってきました。

最新作『辛酸なめ子の現代社会学』は、これまで雑誌に連載していた漫画をまとめて収録して、それぞれのテーマごとに新たにエッセイを書き下ろしたものです。古いものは2004年に描いた漫画もあるので、なつかしやーってのも中にはありました。純愛とか、オーラ、王子、KYなど、この10年足らずに間に、なんといろいろな「ブーム」が起こり、そして過ぎ去っていったことか。

それにしても、いつもながら、辛酸なめ子の漫画って、我がツボにばっちりはまります。おかしいったらありゃしない。何度も吹き出しながら読みました。

のっけから、「純愛プレイ」に大笑い。ひところの「純愛ブーム」にすっかりかぶれてしまった女性が、彼氏にも純愛を求めるという話。「また純愛が不足してきたわ。もっと日常にドラマがほしい…」だってさ。猿山に「本当の愛」を見出すというオチも、彼女ならではの毒。

  

ところで、今年の4月に、朝日の土曜版の「逆風満帆」シリーズで3回にわたって彼女が取り上げられ、彼女の過去と現在を改めて知ることができました。

それによると、彼女は厳格な家庭に育ち、高校は東京でも3本の指に入るカトリック系のお嬢様学校。両親の期待に立派にこたえたわけです。しかし、彼女は、裕福な家に育った聡明な学友たち」のひしめく女子校にあって、劣等感を募らせていきます。そして、「自分の存在価値を見失いかけていた」。

そんな時に、彼女は同志何人かで、「秘密結社のように謀議を重ねて」新聞をつくりはじめました。小さいころから、漫画や小説を書いては編集することが好きだった彼女は、「伝説の学級新聞」と言われた新聞をつくることに「居場所を見つけられた」のです。

日本テレビのアナウンサー、馬場典子が高校の同級生で、彼女たちの新聞を「心待ちにしていた」というのには驚きました。ちょっと、あまりにも対照的じゃないですか。陽と陰。太陽と月。馬場さんのほうも私はまあ、好きですけど。それはいいとして、馬場さんの当時の辛酸なめ子評が面白い。「彼女は、みんなが気づいていながらモヤモヤしたまま言い表せないでいる気分やイメージをヒョイとすくいあげて、形を与える達人でした。物静かでしたけど、いち目置かれる存在でしたね」。

さすが馬場さん。辛酸なめ子の本質をズバリ見抜いてますね。同じようなことは、彼女が美大時代にお世話になったという美術家・中ザワヒデキも言っています。「心の闇をIQの高さで商品化できることが彼女の魅力。自虐のセンスや虚実をないまぜにする表現力が秀逸でした」。あるいは、あるライターは、「辛酸なめ子の4要素」として、「自虐と毒舌、つつましさと自己顕示」を挙げています。なるほどなるほど。分かる分かる。

一見分かりにくいようで、実は「辛酸なめ子」は極めて分かりやすいタイプなのかもしれません。高校時代から、自分の方向性を絶対に曲げない強さはあったのです。きっと。

実は、辛酸なめ子という奇天烈な名前は、高校時代の新聞の発行人としてのペンネームだったという。「「辛酸をなめる」という慣用句を、見た目が薄幸そうな自分にお似合いだと気に入っていた」のだそうです。高校時代のペンネームを今もそのまま使っているなんて! 高校時代から彼女は既に、自分の歩むべき道を、自分の持っている「宝物」を見出していた一人なのかもしれません。(続く…)

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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はじめまして (caraway)
2011-11-23 21:46:52
以前、偶然訪れて、惹かれるものを感じて読ませていただいています。

辛酸なめ子さん、妙に気になる方でしたが、高校時代に既に進む方向が見えていたとは、やはり天才かと・・・
研究の続編を楽しみにしています。
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Unknown (やっぴ)
2011-11-23 23:58:39
carawayさん

ありがとうございます(^_^;)

「研究」と言えるほど、彼女について詳細な調査しているわけじゃないのですが、とりあえず、続きをUPしておきましたので、読んでいただければ幸いです。

やっぱりつかみどころのない人なのかもしれませんね。
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