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カクレマショウ

やっぴBLOG

「未来世紀ブラジル」─狂気と正気のボーダーライン

2005-08-03 | ■映画
映画「未来世紀ブラジル」(1986年)に付せられる形容詞を拾ってみました。

モンティ・パイソン出身のテリー・ギリアム監督が不条理な近未来社会を描く…。
ブラックなイマジネーションに満ち溢れた壮大なSF…。
未来なんだかレトロなんだかわからない異様な世界で究極の管理社会を風刺するブラックユーモアSFの傑作…。
「ブレードランナー」の対極にあるSF映画…。

タイトルに「ブラジル」とありますが、ブラジルの近未来を描いているわけでは決してなくて、テーマソングがアリイ・バロッソ作曲の「ブラジル」なのです。だれでも一度は耳にしたことがあるあの軽快なラテンのメロディが実に効果的に使われています。決してラテンの明るいノリの映画ではないのに、絶妙に映像とマッチしている。この映画はやっぱり「ブラジル」なのです。

近未来のどこかの国。「情報省」というのがあって、個人情報はすべてそこで管理されています。情報省記録局に務めるサム(ジョナサン・プライス)は、夜な夜な自分が翼をつけた勇者となっている夢を見るようになっていました。夢にはいつも不思議な微笑をたたえた美女が現れるのです。

一方、情報省の中でももっとも権限の強い「剥奪局」では、ある容疑者の名前をタイプライターが打ち出していました。ところが、部屋に入り込んだ1匹のハエを官吏が叩き殺したことから悲劇が始まります。タイプライターの上にハエが落ちてしまい、"Tuttle"という容疑者の名前が"Buttle"に変わってしまったのです。

徹底した情報社会でありながら、なぜか「書類」と「手書きのサイン」が絶対的な効力を持つその世界(こればかりでなく、この映画では未来なのになぜかローテク・アナログなのがおもしろい)では、一度作成された書類は絶対でした。家族とともに平凡な生活を送っていた「バトル」氏は、突然やってきた剥奪局の役人たちによって身柄を拘束されてしまいます。サムはミスに気づいた上司の命令で「バトル」氏の自宅を訪れ、バトル氏の妻に補償金を渡そうとします。ところが、その時現れたバトル氏の上階に住む女性が、なんと夢に出てくる美女ではありませんか!必死に彼女(ジル=キム・グライスト)を追いかけるサム…。

いったいどこから夢でどこから現実なのか。そして、どこから狂気でどこからが正気なのか。サムの正気は周りから見れば狂気で、サムの母親の「若返りへのこだわり」は彼女自身にはもちろん正気、サムにとっては狂気、そして世間にとっては正気。しだいにサム自身、自分が狂気なのか正気なのかわからなくなっていきます。ヒーローとして怪物と戦う自分、ジルの操る大型トラックに必死にしがみつく自分、念願かなってジルと愛し合う自分。サムは狂気と正気のはざまで本当の自分を見失っていきます。たぶん、そういう人物は「未来世紀ブラジル」の世界では超危険人物なのです。

この映画に出てくる珍妙なキャラクターの中でも、群を抜いて楽しいのが、ロバート・デ・ニーロ演ずるタトルでしょう。職業はヤミの暖房修理屋。そう、情報省剥奪局が容疑者として追っていたタトルです。やってることは妙ですが、彼こそまぎれもない「正気」なのでしょう。彼はサムを「正規の」暖房修理屋の手から救います。そして最後にも…。

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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (RX5)
2005-09-11 15:19:59
この映画に関するBlogの中で、特に、目にとまたこちらにトラックバックさせて頂きました。
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