会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

ホンジュラスのチャーターシティ ポール・ローマー

2011-01-31 01:13:06 | マクロ経済
以前、チャータースクールについてご紹介したことがあったんですが、

ニューオリンズのチャータースクール ナオミ・クライン3

今度は、学校じゃなくて、都市についてです。

チャーターシティ。

まあ、自然に作られた都市は、自然に過去からの流れで出来上がったもんなんでしょうが、チャーターシティというのは、人口的に作られた、まあ、チャータースクールというぐらいなんで、チャーター、まあ、設立趣意書とでもいうんでしょうか、に基づく人工的な都市ってことになるんでしょうかね。

この動画、よくまとめられてます。

Paul Romer's radical idea: Charter cities


とってもプレゼンがうまいし、頭のカットや、シャベリ方からして、どっかの俳優か、と思いきや、ポール・ローマー。著名な経済学者なんだそうで。

アフリカのどっかの都市の、空港の近くで、若者たちが街灯の光の元で宿題をやっている。
電気さえないくらい貧しい。

いやちょっと待て、彼らは、ケータイ電話は持っている。
貧しくても、最新のテクノロジーの恩恵は受けられている。なのに、100年以上前のテクノロジーたる電灯が手に入らないのか。

ここからローマーの議論は出発するんですな。

いきなり飛んじゃって恐縮なんですが、このハナシ、本書にもでてきます。

国際協力専門員―技術と人々を結ぶファシリテータたちの軌跡
クリエーター情報なし
新評論


アフリカ、マラウィーの電化事業に協力するために日本から派遣された人のハナシがのってますが、マラウィでは電化が広がらない。なぜか。料金設定がうまく行っていない。

電化には非常にお金がかかるが、電気料金を払えるのはごく少数、しかも一般に電化の恩恵を拡げるとの建前から電気料金は安く設定されてて、結局、新しく電気を引く際に新規工事料金を取るしかない。これがバカ高くなってて、とても手が出せない価格。

本来は、既存の電気使用者からもっと高い料金を取るべきだが、政治的にできなくなっている、とかいうハナシが書いてあります。貧しい人にも電化をという建前が、逆に一部の特定の金持ちにしか電化が行きわたらない、という皮肉な結果になっている。電気料金を上げるという選択肢は、政治的にとれないんですね。

さて、ローマーの議論は、そっから進んで、だったらしがらみのない世界を別に作っちゃえ、ということなんですね。政治的に行き詰ってどうしようもないんなら、都市をいちから立ち上げて、既得権者に邪魔されない、チャーターに基づいて運営される都市を作り上げる。


まあ、かなりびっくりで、乱暴な議論のようでもありますが、しかし、シンガポールを見てよ、香港、深圳はどうよ、っなわけですね。

かれは、経済特区のようなものをイメージしているんですね。

中国は経済特区の市場化から始める漸進主義をとって成功。一方でロシアは一気に進めちゃったんで大失敗、みたいな議論もあるようですね。ローマーはそういう漸進主義の議論の流れでチャーターシティを考えているのではなさそうですがね。


本書164ページ。
開発経済学入門 第3版
渡辺 利夫
東洋経済新報社


正しいルールセットに基づいて、経済運営がなされれば、その都市は発展する、というんですが、どうなんでしょうか。アイディアはとっても面白いんですが。

今月に入り、CFRにも呼ばれてますが、

Romer at CFR: Developing Charter Cities


さっきの動画とはえらい違いで、学者ッポクなってますね。

ここで全体をチェックできます。

Charter Cities: New Options for the Bottom Billion (Video)


単なる夢物語じゃなくて、ホンジュラスで具体的な検討に入っているようでして、

Will the first Charter City be in Honduras?

A reader pointed us to the news that the Honduras is deliberating whether to pass legislation this month that would pave the way for the first “Charter City” to be created on Honduran soil by 2012.

2012年までに最初のチャーターシティに道を開く法案を今月通すべきかどうか、ホンジュラスで議論されている。


The radical brainchild of Stanford economist Paul Romer, the Charter Cities concept is based on the idea that good rules make good societies. Accordingly, poor countries should be able to galvanize their own development by building foreign-financed and foreign-run cities governed by a new, better set of rules.

チャーターシティのコンセプトは良いルールは良い社会をつくるということ。したがって、貧困国は、外国資本でファイナンスされ、外国人によって経営され、新しいずっと良いルールによって統治される都市をつくることによって、自身の発展を活性化できるということになる。

これ、植民地じゃないの、という指摘なり批判もあるようですな。

私は、ナオミクラインのショックドクトリンを思い出しちゃいました。フリードマンの時代は、米国は乱暴に、クーデターを起こさせて、言うコトを聞かないその国の大統領を排除し、コミュニストも一掃して、市場主義の導入実験をやった。

今は、そんな時代じゃないんで、合意の上で、市場の機能する都市を作りましょうよ、ってか、経営してやるから、こっちに場所を差し出せ、ってとこですかね。丸ごと政権をのっとるとか、拷問して殺しちゃうとか言うのよりは、はるかにマシですが。

かくして、米国のファイナンス資金や、投資が流れ込む。

エコノミックヒットマンの21世紀バージョンじゃ無ければ良いんですがね。

とか言いながら、私個人としては、自分自身もかかわりたいくらいの面白そうなプロジェクトなんですが。



エマニュエル前主席補佐官 シカゴ市長選のごたごた

2011-01-30 07:24:06 | 政治

シカゴ市長選に出ているエマニュエル前大統領補佐官なんですが、立候補資格に問題があって、選挙に出られなくなったってハナシがあったんですな。


Rahm Emanuel Seeks Expedited Appeal After Judges Boot Him From Chicago Ballot


つまり、市長選に出るには、シカゴに1年は住んでなきゃいけない。彼は、補佐官でワシントンに居たんで、その間シカゴに住んでいたことにならない、という判断を裁判所がしたというんですな。

国家のために働いていた期間は除外される、という規定をエマニュエル側は主張しているんですが、それって、選挙権のハナシで、被選挙権は別だ、という議論もあるとかで、

こいつはややこしい、って感じだったんですが、


Race for Chicago Mayor Enters Next Phase


Illinois Supreme Courtは、立候補資格あり、と結論を出して、元に戻ったそうで。

Appeals court が資格を否定する結論を出したのが1月24日
Supreme Court がそれを覆したのが1月27日。

結論がとても早い。

かくして選挙には影響が無くて済んだわけですが、

民主主義が徹底していると、裁判所手続きに時間がかかる、みたいな対応は通らないってことでしょうかね。


オバマ 一般教書演説

2011-01-28 11:04:05 | 政治
ちょいと前になりますが、オバマさんの一般教書演説。

The 2011 State of the Union Address


日本の菅さんがヤジの中で、ごちゃごちゃ、あれやこれや、演説ってか説明ってか各省庁の政策紹介をしているのと比べるとずっとシンプルな内容で、主張がはっきりしています。

それに、もっと大事な点は、議会が、しっかりと大統領を支えているのだという姿勢が見ていてよくわかりますよね。ポイントポイントでは、立ち上がって拍手する。ヤジなどもってのほか。ちょいと前に、大統領にうそつきとヤジって、謝罪に追い込まれた議員がいましたっけ。

それは、民主党であろうが、共和党であろうが、自分達の大統領なのだから、支持をする。
アリゾナスピーチでもそうでしたが、良い人、良いモノを讃える、という文化があるんですな。

良いものを讃えることが、自分を讃えることにもつながる、
有能な人が活躍することが、他の人にとっても利益になるのだ、

という確信のようなものが共有されているんでしょうな。


State of the Union 2011: Republicans reject spending

とか言いつつも、

Republicans have moved quickly to reject US President Barack Obama's call for new public spending on research, infrastructure and education.

オバマ大統領の、研究や、インフラ、教育投資への政府支出についての呼びかけについては、共和党は否定する方向で動いている。


'Catastrophic' debt
In their State of the Union responses, Republicans cited their gains in the November election as evidence Americans had rejected Mr Obama's approach.

11月の中間選挙で共和党が勝利したのは、オバマのアプローチが否定されたという証拠だ、と共和党。

But polling suggested Americans were receptive to Mr Obama's proposals.

しかし、世論調査では、米国民はオバマ提案を受け入れている。


A CBS News poll taken immediately after the president's address on Tuesday night suggested 91% of those who watched it approved, and only 9% disapproved.

演説直後のCBSニュースの調査は、視聴者の91%が支持。不支持は9%にすぎない。

Last year, 83% of Americans approved of Mr Obama's address, the poll's authors said.

去年は支持は83%だった。


米国民は、超党派で問題に取り組むことを望んでいるってとこでしょうかね。

大統領は下院多数派を共和党におさえられている以上、そうせざるを得ないし、

共和党も、選挙で勝ちはしたものの、ティーパーティが現職を破ったりしてて、おんなじようにやってたんでは国民の支持が得られないこともあって、そういう動きにはなって行くんでしょうがね。

演説を聞いてる皆サンも、席は、左派右派バラバラに座ったんだそうですな。

支出削減について、うだうだ文句を言っても、大きな対決、というようなことにはならないんでしょうな。

オバマケアを否定する法案も、本気でやってるわけじゃないんでしょうし。


もともと共和党も、オバマケアは本音では大賛成なんでした←スポンサーの保険会社が得するんで。
オバマ vs 保険会社

クルーグマン 脱「国境」の経済学―産業立地と貿易の新理論

2011-01-26 07:15:01 | マクロ経済
どうも、産業集積について調べていると、それが、都市経済学だとか、経済地理学とか呼ばれている分野らしくて、いろいろと本を探してみたんですが、

それで、ヒットしたのがこの本で、


脱「国境」の経済学―産業立地と貿易の新理論
ポール・ クルーグマン
東洋経済新報社


クルーグマンなんですな。
ノーベル賞をとって、日本についてしょっちゅう提言していて、ABCのTHIS WEEKのラウンドテーブルにも出てて、ジョージウィルなんかにやりこめられたりしてたりするんですが、

本書、メシを食いながらながめてると、

『収穫逓増』概念が、何度も何度も出てくる。

これ、どっかで見たことあるなあ、思っていると、

複雑系科学なんですな。

複雑系―科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち (新潮文庫)
M.ミッチェル ワールドロップ,Mitchell M. Waldrop,田中 三彦,遠山 峻征
新潮社


経済学者もトライしてて、伝統的な経済学を変えてゆく、みたいなハナシもあったはずですが、その後どうなったんだろうとずっと気になってたんですが、

クルーグマンが、その分野を切り開いた人だったんですね。

複雑系についての本書は、ちょいと古い本なんですが、お勧めです。



マイクロソフト 絶好調

グーグル トップ交代 ロンドンエコノミスト

2011-01-22 20:26:12 | ロンドンエコノミスト

アップルのスティーブジョブズが,退任するとかしないとかで騒ぎになっていますが,グーグルでもトップが交代するそうですな。





エコノミスト誌のブログなんですが,

Google turns a new Page

Then on January 20th Google said that Eric Schmidt, the firm’s chief executive, would hand over that role in April to Larry Page, one of the firm’s two co-founders. Mr Schmidt will become executive chairman, focusing on areas such as acquisitions and government relations, while remaining an advisor to Mr Page and Sergey Brin, Google’s other co-founder, who is going to concentrate on certain strategic projects. (Messrs Schmidt, Page and Brin, from left to right, are pictured above with one of their experimental self-driving cars).


CEOのエリックシュミットは,4月に,ラリーページにその地位を引き継ぐ。シュミットは会長になって買収や政府関係に集中し,ページやブリンへのアドバイザーとなる。ブリンは特定の戦略部門に集中。

The change makes sense, though arguably it should have happened sooner. As Google has grown from a start-up into a global powerhouse with 24,000 employees, some of its original entrepreneurial spirit has been crushed by a burgeoning bureaucracy. Several prominent Xooglers, as former employees of the company are known, have complained that it has become difficult to get things done at the firm. And rivals such as Twitter and Facebook have exploited this growing sense of frustration by pinching talented executives from Google’s ranks.

これは理にかなった変化だ。間違いなくもっと早くに実行されなければならなかったとしてもだ。グーグルがスタートしてから,24千人の従業員を抱える世界的企業に成長して,当初の企業家精神が,増殖しつつある官僚制に破壊させられつつある。Xooglersとして知られる何人かの傑出した元グーグルの従業員は,物事を実行するのが難しくなってきたと苦情を言っている。

ライバルのツイッターやフェイスブックはこの膨らむ不満を利用して,才能のある幹部をグーグルから引き抜いた。


The current set-up at the top of the firm is partly to blame for this state of affairs. Mr Schmidt, a former head of Novell and chief technology officer of Sun Microsystems, was initially appointed in 2001 to provide some experienced leadership at a company whose co-founders were inexperienced. And under his guidance, Google blossomed. But now Mr Page is clearly ready and eager to run the show again. (He had stepped down as CEO when Mr Schmidt arrived.) Moreover, the triumvirate has shown its limits. Mr Schmidt has been careful to consult Google’s co-founders on all important issues. That is why the unconventional arrangement has lasted so long. But this consensus-style approach to decision-making has become a bottleneck that the company can ill-afford at a time when it is facing several significant challenges.

会社のトップがこんな風になってしまったのは,こういうわけだ。シュミットは,ノベルのトップで,サンマイクロのCTOだったが,グーグルの創業者の経験のなさを補うべく,01年に任命された。彼の指導のもとで,グーグルは花開いた。

しかし,いまやペイジは自分でやる覚悟ができ,自分でやりたがっている。

それに加えて,三頭支配には限界があった。シュミットは,すべての重要案件について創業者達と相談するよう気をつけていた。これが,その異例な体制が長続きした理由だ。

このコンセンサススタイルのアプローチはボトルネックになりつつあり,このいくつかの厳しい挑戦をうけている環境下,もはや許されなくなっている。


とまあ,創業者も成長して,そろそろ,保護者の手を離れて,自分で経営してみるかってことですかね。

フェイスブックや,ツイッターなんて,ついこないだまで,一体それなんでっかって感じでしたが,はや,グーグルへの強力な挑戦者,っていうんですから驚きですな。

コンセンサススタイルじゃ間に合わない,って,

この程度のコンセンサススタイルでもだめってことは,日本企業では・・・、ハハ。


ビル・クリントン エマニュエル応援演説

2011-01-20 07:54:21 | 政治
ホワイトハウスの主席補佐官だった、エマニュエルがシカゴ市長選に出てるわけですが、ビルクリントンが応援演説しています。

Bill Clinton stumps for Rahm Emanuel


クリントン政権時代のシニアアドバイザーでもあったんですね。その後、下院議員になって、ホワイトハウス入り、今度は、シカゴ市長。

Bill Clinton Campaigns for Rahm Emanuel for Mayor of Chicago


Though Clinton focused on Emanuel's role in his administration's many policy battles, he could not resist an apparent reference to a current controversy generated by the Tucson massacre. Recalling a visit to Chicago to defend the assault weapons ban he pushed through Congress in 1994, Clinton said, "I still think it's wrong to be able to carry a gun around that will fire 30 bullets in no time."

クリントンは、政権時代の多くの政策闘争におけるエマニュエルの活躍に焦点を置いたが、アリゾナ州ツサンでの虐殺事件に関する論争に言及せずにはおけなかった。彼が94年に議会に議決させた攻撃用武器の規制を守るためにシカゴに訪れたことを思い出して、『私は、今でも一瞬で30発もの弾丸を発射できる銃を持てるようになっていることは、良くないと考えている』と述べた。

94年に通した規制というのは、ブレイディー法のことですな。クリントン政権時代に銃規制をやった。

ところが、ブッシュ時代になって、更新されずに元にもどってしまった、ってことで、
今回の犯人は、精神的に異常があったんじゃないか、とか、軍に志願したが薬物使用で拒絶された経歴があった、とかで、なんでそんなヤツが銃を買えたんだ、みたいな議論があるようですな。

まあ、いつもの議論という感じですが、それでも止められない、というのが、米国の政治的現実ということのようで。

オバマ アリゾナスピーチ 

2011-01-18 04:37:32 | 政治

アリゾナで、民主党の女性下院議員が頭を撃たれて、他にも死者が出た事件があって、オバマさんがアリゾナまで出かけて行ってスピーチをしたんですが、結構評判が良いみたいですな。


President Obama Speech at Tucson, AZ Memorial Service


党派対立を超えて話あおう、みたいな感じですかねえ、まあ、それは良いとして、

このスピーチの中で、オバマさんは、銃撃の中で、奥さんをかばって撃たれて死んだご主人のことや、犯人を取り押さえた人、けが人を救った人なんかを具体名を上げて、ヒーローだと、讃えています。

日本だとどんな感じになりますかね。

『犯人を許すことはできません』という恨みに流れるか、ひたすらお悔やみって感じですかね。いずれにせよ、耐え忍ぶ、という感じが基調になるんでしょうな。

普通の人が勇敢な振る舞いをした、アメリカ人は普通に勇敢だ、やっぱりアメリカだ、というか、自分達は、立派な国に住んでいて、住民も立派だぞ、ということを確認していくるというんでしょうか。

外部から見てると、変な感じもしますが、讃えあうカルチャーというのも良いもんですな。

ABCのThisWeekで、事件の関係者を集めて議論しています。
大統領にヒーローだといわれた人達も舞台に座ってて、その時あなたは、みたいな感じです。

An American Conversation Continued


確かに一般人なんですが、皆立派ですな。ハナシもうまい。
それから、番組では、舞台側だけでなく、会場側の人達にもインタビューして回ってますっ、てか、事前の段取りに従っているんでしょうが、見ているだけで、アリゾナでこの事件がどんな具合になっているのか、かなりわかるようにできてます。


やはり被害者で、会場に来ていた人が、逮捕される一幕まであったりして。

"You're Dead": Tucson Survivor Eric Fuller Tells Tea Partier Trent Humphries On ABC This Week


Teapartyのメンバーに、you are deadと言っちゃった。
左翼の活動家ってことですが、立派な人も沢山居る一方で、こういう極端な人も居るんですな。

しかし、これだけで、全米に名前が出ちゃうんですな。
一気に有名人になってしまって・・・。

日本特集  未知の領域に踏み込む日本 ロンドンエコノミスト

2011-01-16 14:12:59 | ロンドンエコノミスト


『デフレの正体』で、日本の生産年齢の減少が日本の内需低迷を招いている→デフレの解決にはこの問題に対処しなければ,なんの解決にもならない,とかいうハナシがあったわけですが,実は,同じような問題意識で,エコノミスト誌が11月に日本特集を組んでいたんですな。

HSデントの新著が翻訳されたり,デフレの正体が出たり,エコノミスト誌が特集を組んだり,と去年は,人口問題に焦点があたった年だといえますが,この問題,今後ひどくなる一方なんで,人口問題の一般認知元年だったということになるかも知れませんね。

JBPRESSというサイトはEconomistの主だった記事の訳を載せてくれるんでお勧めなんですが,この特集も全記事訳されてて,無料で読めます←会員登録は必要のようですな。

未知の領域に踏み込む日本

Economist誌は,バランスが取れてて,必要な論点を適切に説明しているように見えますな。とってもスッキリとまとまってて,各論点が,良い具合に織り込まれています。こういうまとめは,他に探してもどこにも無いんで。読者コメントで,新鮮味が無い,などとケチを付けられていますが,問題は新味なのではなく,

論点を,漏れなく,的確に,適切に位置づけて,適当な分量で報じている

ということなんで。個別の新事実を掘り出すことも大事ですが,それってつまりどういうことなの,ということを,ちょっとした時間で読めるようになっている,ということは,並大抵の力量ではできません。この記事を読めば,日本の人口減少問題が,どの程度の深度と広がりを持っているのか,まったく予備知識のない,海外のエリートにもわかるようになっている。

日本の新聞,雑誌を,漏れなく読み込んだ日本人と,この記事を数十分かけて読んだ外人のエライさんと,どっちが,適切に日本の人口問題について理解したことになるだろうか,ってことですな。

ウォルフレン氏に,講演会で,日本のジャーナリストはもっともっと勉強しろ,とゲキをとばされていましたが,こういう記事を読むと,ジャーナリストの力量,というものが,どういうことなのか,ということが,何となく想像できるんですな。経済学や政治学の基礎知識から,専門分野を含む関連の文献の把握,キーパーソンのフォロー,など膨大なインプットを前提としなければ,こういうものは書けないでしょうな。


『デフレの正体』とこの記事を比べて見ても良いですな。デフレの正体で,人口減少社会がどういうものか,を理解したことになるか,といわれれば,かなり不足です。まあ、そもそも包括的に論じようとした本ではないんで,当然ですが,書きぶりや,論の進め方に,読んでて不安になりますね。

『デフレの正体』には,各地域のデータや,小売売り上げ分析があるんで,独自の価値がかなりあると思いますが、そういう点では,『新味がある』ことはあるんですね。

さて,その記事ですが,冒頭,生産年齢人口の減少と,発生している問題についてざっと説明したあと,こんな風に,序章を締めくくっています。

本誌(英エコノミスト)は今回の特集記事で、日本は真っ向からこの問題に立ち向かうべきだと主張する。日本には、人口高齢化に対処する壮大なプランが必要だ。

 日本ゼネラル・エレクトリック(GE)の社長兼CEO(最高経営者)を務める藤森義明氏は、「ビジネスの視点から見ると、(高齢化の)脅威は今、機会を圧倒している」と述べる。「大部分の人はそれに気づいているが、対処する方法が分かっていない」

 労働力減少の影響を打ち消すために生産性を高めることは、特に企業の世界では文化的な革命を必要とするだろう。アジアに広がる新市場に入り込むことは、150年間にわたるアジアの不信(それに見合うだけの日本の不信がある)を克服することを意味する。

 しかし、慎重な楽観論を抱く理由は2つある。1つは、多くの先進国と異なり、日本は産業の遺産を捨ててはいない。日本には団結した労働力があり、革新的な製品を今でも生み出せる。

 期待できるもう1つの理由は、政治にある。日本は昨年、実質的に1955年以来維持されてきた一党支配に終止符を打ち、斬新な考え方に大きく賭けた。2009年の選挙で勝利し、現在菅直人氏が率いる民主党は、政権の座に就いた最初の年にたくさんの失敗をしたが、民主党の勝利だけをもってしても、従来の政治に対する有権者の不満が膨れ上がっていたことをはっきりと示すものだ。

 今、民主党は成果を上げられることを示す必要がある。



最初に序章でどでかい課題を設定して,後半でいろいろな側面からこの問題を論じるわけですが,随分意欲的というかチャレンジングです。

普通ならこんなテーマ設定はしり込みしますわな。

ちょっと長いんで,中身をここで読んでいくことはやめますが,概要については,次で少しだけ見ていくことにします。

iPhone がついに Verizon に登場

2011-01-13 00:57:02 | 通信
私も、最近アンドロイドケータイに乗り換えたばかりなんで、アンドロイドの肩をもちたいわけですが、それでも、iPhoneのことはちょいと気になるわけですな。

Appleのファンが私の回りにも居ますが、
ホントに、好き、て感じがにじみ出てたりして。

で、アメリカでは、iPhone はAT&Tだけだったんですが、ついに、Verizonにも登場することになったってことで、


iPhone (Finally) Coming to Verizon This Week?


まあ、結構な反響、って感じで、あちこちで取り上げられてます。


Verizon to push Apple's iPhone with major 'marketing muscle' - report


When the iPhone was not on Verizon, the carrier ran a number of campaigns that instead pushed Android as part of the company's "Droid" lineup, including one commercial that portrayed the iPhone as feminine. The series of commercials said that what the iPhone couldn't do, "Droid Does."

Verizonはこれまで、コマーシャルではiPhoneは女々しいが、ドロイドフォンならiPhoneにできないことができる、とキャンペーンをしてたそうですな。

それが、今やiPhoneで強力なプロモーションをかけているそうなんですが、

Now, with a partnership between Apple and Verizon, Android will face its "first true test," Wu believes. He said while many are interested in seeing how many customers move from AT&T to Verizon, he believes the better question is how many Android users on Verizon decide to switch to an iPhone.

iPhone効果で、AT&TからどれだけVerizonに顧客が移るかというよりも、Verizonのアンドロイドユーザーが、どれだけiPhoneにシフトするかが見もの。

私もそう思いますな。キャリアを変わるのは結構大変なんで。機種変更ならあり得ますかね。

スマートホン、一騎討ちってとこですが、どっちが勝ちますかね。
いずれにせよ、iPhoneが大きく伸びるであろうことは間違いないんでしょうな。


日本でもドコモがアンドロイドケータイを出したりしてますが、これが、無視できないくらい大きくなってきたら、日本でもAppleが対抗策としてソフトバンクだけじゃなくドコモでも、みたいな戦略に打って出たりして。

まあ、ソフトバンクとの契約がどうなってるのか知りませんがね。

イーモバイルでは、どんなことがあっても、iPhone

無いわなあ。




誰が電気自動車を殺したか 隠された歴史

2011-01-11 01:06:01 | 政治
去年ワシントンに行った時に、世界銀行ビルの1Fの本屋で、店の外の棚で超安売りされてて3ドルで買った本なのですが、



What Every American Should Know About Who's Really Running America
クリエーター情報なし
Plume


これが結構掘り出しモノで、オモシロネタ満載です。まあ、ブッシュ時代と共和党のトンデモ話が中心なんで、オバマ政権に変わってちょいと値打ちが下がったって感じかも知れませんが、

それでも、オモシロ過ぎる。

本書の第5章なんですが、電気自動車についてちょいと書かれているんですな。

電気自動車って、オバマ政権になってから、しきりに話題になって急に盛り上がり始めたんですが、そもそも今頃なんでやネン、との突っ込みは意外に少なかったんですね。

なんでハイブリッドの後に電気自動車やネン、とか、ハイブリッドの後は燃料電池車じゃ無かったのか、とか。
素人が考えても、電気自動車よりハイブリッドの方が技術的に、はるかに難かしそうですけどね。

どっかで誰かが説明しているんでしょうかね。全く、わけわからん。

トヨタに買収されたテスラも話題になったりしてますがね。電気だけで大丈夫かいな、って感じですが、実はとっても乗り心地が良くて、パワフル、スポーティ。電気でも結構走りも行けるかも、とか。

実はそんなハナシじゃない。

『結構走りも行けるかも』ではなくて、『走りが素晴らしいから電気自動車が良い』、ってハナシがかつてあったんだそうで。

実は、今から、10年以上前に、GMはEV1とかいうプラグインの電気自動車をコマーシャルベースで作っていて、販売部隊も組織して、カルフォルニアで結構人気が出てた、と言うんですな。10年以上も前のハナシです。

本書では、この映画のことが紹介されています。

Who killed the electric car? (1of10)


まず、電気自動車に対するファンの思い入れがどんだけ強いか、ということが、映像を通じて伝わったきますな。
この映画のポイントをざっと上げると、

・電気自動車はすでに96年の段階で実用段階に入っていた。
・カルフォルニアの規制もあって、自動車メーカーは電気自動車開発、販売に積極的に打って出たが、後につぶしにかかった。
・国と組んで、カルフォルニアの規制を骨抜きにして、
・ニセの草の根運動を組織して、反対運動を行わせた
・草の根運動には、なんと、石油会社から資金が出ていた。
・草の根で電気自動車インフラ整備は税金の無駄遣い、電気自動車は環境を改善しないとの運動が起こり、
・電気が、仮に石炭によって作られていたとしても電気自動車の効率は高い、との説明は無視された。
・開発して実際に売られた電気自動車はユーザーが買い取るコトを希望してもリース満了で引き上げられて廃車にされた
・電気自動車には技術的な弱点がある。バッテリーが実用でない、というのはウソ。すでに十分なバッテリーが開発されていた
・燃料電池車が華々しく開発を打ち出されているが、技術的には実用段階に至っていない。
・電気自動車つぶしのために使われた可能性がある
・電気自動車の時代がやってくると、これまでの内燃機関でつちかわれた技術はムダに。
・オイル交換等の関連産業もだめになる。石油は売れなくなる。でつぶされた(に違いない)
・結局、電気自動車はつぶされ、自動車会社は、ハマーのような巨大SUVの製造に走った
・国に働きかけてってかグルになって、巨額の税務控除を認めた。2002年にはSUVに10万ドルのtax credits.
・一方でハイブリッドには3千4百ドルしか認められなかった
・ハイブリッド開発にはクリントン時代に国から開発予算がでたが、
・皮肉なことに、まじめに開発に取り組んで成果を出したのは日本メーカー。


とまあ、アメリカのコーポラティズムというか、大企業主義というか、政府がビジネスに乗っ取られているというか、いろんな観点でそれが、どういう意味なのか、よくわかりますね。まあ、これインボー説ってか、実際に共謀して電気自動車をつぶしたんでそう読んで良いんかもしれませんけど、

あまりに、あからさまで、そのまんまストレート過ぎて、ちょっとお笑いっぽくなっちゃってますね。この映画には出てきませんが、GMは結局破綻したというオチまでついたわけで。ブッシュ政権がメチャ振り過ぎてハナシがアホっぽくなってるわけですが、基本的に米国とはこんな感じの国にナッチゃってるかもですね。それはオバマさんが大統領になっても急には変われないはずで。

我々も、アメリカさんから伝わってくること、が世界の流れだ、と無条件に受け入れるわけにはいかないんで。


なんで今頃電気自動車やネン、燃料電池車はどこ行った、と文句を言うといいですな。



フルバージョンはこちらからどうぞ。

Who Killed The Electric Car - Nederlands Ondertiteld