会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

『デフレの正体』 その2 米国の先行者 Harry s.Dent

2010-10-31 23:25:26 | 平成10年問題
あまりに面白いんで、もう少し続けます。

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介
角川書店(角川グループパブリッシング)


著者の藻谷氏は、政策投資銀行で、コンサルティング業務を担当してて、あっちこっちに飛びまわっているそうなんですな。エキサイティングで、知的にも社会貢献という意味でもやりがいのある仕事だろうと思いますね。

この藻谷氏のほぼ同じ主張と仕事をやってる言わば先行者が米国にもおられまして、別に、著者が先行者のアイディアをパクッたと言ってるんじゃありません。まあ、人口と経済の分析は他にもあれこれあるんで。

その先行者なんですが、

昔、AOLでチャットにはまってたことがありまして、日本人がサインインしてると、アメリカの高校生あたりが、しきりに話しかけてくる。株の名人だという高校生が居て、なんかの番組でチャンピョンになったと自慢してくるので、私も米国株に興味があるわいな、と言ってみると、

本書を紹介してくれたんですな。

The Roaring 2000s: Building The Wealth And Lifestyle You Desire In The Greatest Boom In History
クリエーター情報なし
Simon & Schuster


せっかくだからとアマゾンで買ってみると、人口と株価の関係を分析してるみたいで、まあ、そんな悠長な、と思って読まずに本棚に突っ込んでたんですが、デフレの正体を読んでて思いだして、引っ張り出してちょいと読んでみると・・・、ガーン。目を疑ってしまった。

これ98年の出版なんですが、

chapter12 に今後の戦略としてフェーズ毎に投資アドバイスをしていて、そのフェーズというのが、

Phase 1 Late 1998 to Late2008 the roaring2000s
Phase2 Late 2008 to Late2020 or 2023:Next Depression

だって。これ、歴史の本じゃないんだよね、予測だよね、と確認してしまいました。
何年も前に買ったんで当たり前なんですがね。

2008年後半から不況。オー、マイゴッド、← 一応洋書なんで。
紹介してくれた、米国の高校生も実は怪物野郎だったってことですな。こんなの読んで投資戦略を練ってるなんて、今頃どうしてるんかな。

てっとり早くはこの動画がわかり良いですね。



ハーバードのビジネススクールを出て、コンサルタントになった。いろいろとマーケティングをやってた。マーケットは人口動態をみるのがてっとり早い。年寄りはポテトチップスは食べない。食べるのは何歳がピークなんで、その人口がどう動くかみてれば良い。クルマを買うのは何歳か、家を買うのは何歳か、という具合。ベビーブーマーの加齢でマーケットが変わってゆく。

ある時、いろんなチャートを並べて分析していると、人口動態と、SP500の動きが全くパラレルであることに気がついた。何十年かのタイムラグをもってぴったり重なる。ユーリカ。アーハッ。

で、コンサルタントをやめて、エコノミストになった。

人口動態の動きを見てて、日本のバブル崩壊も予測できたし、90年代、2000年代の米国の好調と、2008年からの大不況も予測した、ってことで。政府支出が激増してて、世間ではインフレが起きると言ってるが、そもそもベビーブーマーが引退して、需要が減ってるんでインフレにならない、基本デフレだ、と言ってて、この辺も藻谷ちゃんが日本について言ってるのと同じです。

日本と米国の経済が基本的には同調してて、たまに離れたりするってのは、人口動態がそうなってるからかいな。細かい分析で理屈つけてるのはアホかも。

ピーター・シフもすごいけど、こいつはもっとスゲーぜって感じです。

中国は一人っ子政策で、いずれやばくなる、という風にも言ってますが、これも藻谷ちゃんと同じですな。

彼は、最近また、新しい本を出してまして、

The Great Depression Ahead: How to Prosper in the Debt Crisis of 2010 - 2012
クリエーター情報なし
Free Press


これは是非読まねば。






『デフレの正体』 藻谷 浩介 その1

2010-10-31 09:01:45 | 平成10年問題

『デフレの正体』なる新書が売れているらしい、というのは耳にしていましたが、題名からしてもその辺のヘッポコ本の一種だろうと思って買わずにいたんですな。

相変わらず本屋に山積みになってるんで、改めて手にとって良くみると人口がどうのこうのと書いてある。ネットでの評判もなんとなく良いぞ、というわけで、買って読んでみました。


デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介
角川書店(角川グループパブリッシング)


読んでみたところ、これはお値打ちモノですな。

経済学のシロートが、具体的に数字を読んで、ちまたのエコノミストや経済評論家の暴論に挑む、と図式では、三橋 貴明氏と同じ路線です。危機感をあおりまくりだけど、実際に調べてみたら、ハナシ違うじゃん、というやつで。

著者の主張は、

1.日本の産業の競争力自体は衰えていない
2.中国はお客様であって、経済からみれば脅威ではない。中国との緊張の高まりや中国自身の混乱は日本にマイナス。
3.日本の経済が弱いのは競争力の弱体化ではなく、人口動態で説明できる
4.ただし、全人口ではなく、生産年齢。現役世代が加齢で減ってしまい、引退したらお金を使わなくなるので内需が落ちている
5.輸出企業が儲けても現役引退と効率化で人件費率が低く、個人の給与所得が増えない
5.利益を出して配当しても受け取るのは年寄で、支出に回らずに内需が縮小してしまう
6.だから、生産性を向上させて日本の経済復活させろ、という主張は誤り。現役の給与所得が減って終わり
7.それよりも、現役世代の所得を増やすことを考えるべき
8.企業は、団塊の世代引退で浮く人件費を利益、配当に回さず、若い従業員も払ってやれ
9.また、効率化ばっかり考えずに、価値を上げることも考えろ
10.ブランド価値を上げれば、値下げ競争ばかりでなく、値上げができる。値下げ競争、人減らし競争から抜けられる
11.これからの日本はさらに悪化を続ける。団塊の世代の引退は数年で数百万人から一千万人規模
12.外国人移民を受け入れても全く間に合わない。少子化対策で今から子供を産んでも何年先のことやネン。
急に増えるもんでもないだろ
13.日本は女性の就業率が低く、これを活用して女性の所得を増やすべき。女は消費するんで彼女らに働いてもらおう
14.女性の経営者も増やそう。女性の消費力は圧倒的なのに、経営が男ばかりなのはおかしい。女に任せろ
15.金を持ってて使わない年寄りから若者への所得移転の方法を考えろ
16.外国人移民じゃなく、観光客を誘致して、金を使う外国人を呼んでこい。移民は稼いでも日本で使わず自国に送金する

って感じですかね。

実は地域間格差なんてないんだ、ということが冒頭で数字を使って説明されてて、実は地方が東京より大きく成長していたので、その反動も大きかった、で、こうした動きも人口動態で説明できる、ということなんですな。

本書は労作であって、実際のデータと、著者が仕事で全国を歩いて議論してきた実績を積み重ねて書かれてて、説得力もあります。ただ、面白く読ませることに力点が置かれてて、あれこれハナシが飛んで、ちょっとめんどくさい。面白いのは良いんですがね。

それと、著者が多分、頭にきているちまたのエコノミストや経済評論家の主張に一生懸命反論しているんですが、反論の仕方はグダグダです。多分相手に選んだエコノミストや評論家の暴論のレベルが低すぎて、反論が難しくなってしまっている。著者の分析を示したところで、すでに反論は終わってるんで、一刀両断で良いはずなんですがね。これ読んで納得できない人には何を言っても無駄でしょう。

で、ちょっと気になったところでは、

★生産性議論について

昔クルーグマンが、ITで盛り上がってた頃に、生産性が上がって経済が成長するというロジックを一刀両断しています。効率が上がると所得が減るんだという理屈でしたね。IT投資もそんなに大きくないんだって書いてたと思います。

人件費を削って生産性を上げることは個別の企業にとっては望ましいが、経済全体で見るとは状況を悪化させてしまう、というのは、ケインズの『合成の誤謬』と似てますな。まあ、マクロ経済的には、人件費が減って給与所得は減っても、その分、誰かの所得になるんで、全体の所得は減らない、として議論として無視されてしまいそうですが、著者は踏み込んで、給与所得が大事なんだ、という主張です。

★政治的側面

政治的には、ビンボー人に手厚く、というひだり系の主張と親和性があります。小金をもらったらビンボー人は支出する。金持ちの支出に影響しない。広く言えば、所得移転が必要だというハナシ。本書の場合は若モノ、お年寄り図式ですけどね。

★実数をみるということ

著者は、失業率や前年比という比率でモノを見ずに、実数でみろ、そうしないと全体がみえない、とも主張してます。米国でもオバマ大統領や民主党の幹部が、『失業率は9.6%と高いが、この9カ月プライベートセクターでは就労者が増え続けている』と政権の成果を主張してるんですな。

ウォール街流 米国景気予測の方法って本でも、も失業率は投資の指標としては見ないんですが、その理由を、遅行指標であるということ、それに、失業している人よりも、圧倒的に就労者の方が大きいんで、就労者の動きを見るべきだ、と説明しています。


とまあ、読んで面白いし、ヒントが一杯詰まっている感じの、とってもお買い得本です。

これ、ネタとして面白いんで、もう少し続けたいとおもいます。

デイリーショーにオバマ登場

2010-10-29 07:16:54 | 政治
10月30日の土曜日に、ワシントンで、ジョンスチャワートが大規模なラリーをやるって言うんで、結構メディアが注目しています。20万人を超える人達が、ワシントンに集まるっていうことなんですな。

FOXのグレン・ベックが保守派のラリーをやったんで、それへの対抗としてリベラルのラリーを、って感じです。





で、今週から、ジョンスチャワートのデイリーショーは、ワシントンにスタジオを移して放映されてます。いつもはニューヨークからなんですがね。

で、水曜日のゲストはオバマ大統領。

The TV Watch: Access and the Plight of the Political Comedian

オバマの勝ちって感じの評ですな。
デイリーショウには、大統領候補はゲストに呼んだことはあっても、現職は初めて。


とにかく、ワシントンでリベラルが盛り上がってる感じです。



さて、もうじき選挙ですが、民主党はどこまで盛り返せるんですかね。



世界透明度ランキング

2010-10-27 07:21:56 | 政治

The 8 worst countries on Transparency International's list

The 2010 Corruption Perceptions Index, released annually by Transparency International, shows northern Europe continues to be perceived as the world's least corrupt region, with six countries taking the top 10 spots. The island-state of Singapore climbed into first place this year with New Zealand and Denmark.
The United States fell behind Chile and into 22rd place, marking the first time it failed to rank in the to 20. Russia ranked worst among global powers, falling from 146th place to 154th place, tied with Cambodia.

北ヨーロッパが最も透明度が高く、上位に6カ国。シンガポールは一位に上昇。ニュージーランドとデンマークが同率で1位。米国は落ちてチリより低い22位。20位より下に落ちたのは初めて。ロシアは大国では最低。146位から154位へ。カンボジアと同率。

Transparency and Accountability are critical to restoring trust and turning back the tide of corruption


全体的に観て、東欧、アジア圏、アフリカ、南米は低いって感じでしょうか。シンガポール、日本は別ですがね。日本は、英国やドイツと同じくらいで、特にひどいってわけじゃなさそうです。

先進国では異様にイタリアが低いですな。

南米では鉱夫が救出されたチリは米国より上で、意外に健闘しています。

米国のランクが落ちているっていうのは気になりますな。

スミス氏 都へ行く

2010-10-26 06:39:39 | 政治

今度休暇をもらって、ワシントンDCに行こうと思って、ガイドブックをながめていると、観とくべき映画の筆頭にスミス都に行くが上がってまして、これは是非観なくてはというわけで、

ツタヤで借りるか、いや待てよ、
この映画は古いんで、ネットでタダでやってるかも、

で調べてみると、

あった。



フルバージョンはこちら

早速観てみると、やや、字幕が無い。これはつらい。

まあ、ハナシがシンプルだし、うまく撮ってるんで、映像だけ追ってても大体わかるようになっている。

ストーリーとしては、現職の上院議員が亡くなって、後任を決めるのにもめたあげく、全くのシロートがワシントンに行くことになる。いきなり法案を出すが、有力者の利権とぶつかって、つぶされかけるが・・・、ってな感じです。

最近の手の込んだスピーディーなヤツを見慣れている現代人からすると、シンプルで、突っ込みどころ満載の、オーバー演出の、ご都合主義のって感じなんですが、

スミスが田舎から初めてワシントンにやってきて、リンカーンメモリアルの前で感激しているシーンがあって、カメラは、リンカーン像の前でスミスと同じようにたたずむ老人や親子の姿を、じっと撮っていて、

米国の理想、というものが、米国人にとってどういう意味を持っているのか、ということが何となくわかるような感じなんですな。日本だとお寺に参った時に、同じように神妙になりますが、伊藤博文の像の前で、近代日本建国の理念に打たれるみたいなことは、一般国民ではありえない感じですね。戦後日本だったらマッカーサーですかね。ひだり系、あるいは大多数の国民は平和憲法を授けたマッカーサーを仰いでもおかしくない。

ってな感じで、日本だと国家理念とかいうハナシになると、ちょっと調子が出ない感じになるんですが、米国がどんな感じか、理念国家と言われるゆえん、みたいなモノを感じ取れるような気がするんですな。

映画では、このリンカーン像にスミス氏の純粋な理想主義を象徴させて、腐敗したワシントン政治と対比させて撮っていますが、中央の腐敗に、シロートが挑む、という図式は昔から米国人はスキなんですな。

この映画はその原型ってトコですかね。













米国は尖閣を守るのか

2010-10-24 12:21:52 | 政治

中国漁船の船長を逮捕したんで、あれやこれや議論が出てきて、いろんな人が発言していたわけですが、ここでは、孫崎氏のインタビューをご紹介したんでした。

孫崎 享インタビュー

管政権になって、米国よりの政策をとるようになって、本来であれば逮捕せずに強制送還で対応するはずが、逮捕してしまった。外務省の情勢判断力が衰えており、逮捕による中国の予想される反応を見誤った、とかで。

で、今回の騒ぎで、特をしたのは中国と、米国で、日本は得るところが無かった、逆に損をした、ってなハナシでございました。

米国は、今回、日本に漁船船長を逮捕させ、中国の強気の反応を引き出すことで、日本国内の危機感があおられて、日米関係強化の動きを正当化させることにつながる、とかかんとか。

ふむふむ、今後どんな動きが出てくるんだろう、と思っていたら、

もう出てもうとるヤンケ。

日米同盟強化へ防衛費増を CSISシンポ、提言相次ぐ 2010/10/19

日本経済新聞社と米戦略国際問題研究所(CSIS)は19日、共催の第7回シンポジウム「安保改定50周年、どうなる日米関係」を東京・大手町の日経ホールで開いた。中国の台頭や北朝鮮情勢などに懸念が広がる中、日米双方の出席者が有事をにらんだ防衛協力などの必要性を指摘。日米同盟を中長期的に強化すべきだとの提案が相次いだ。


まあ、露骨というか、分かりやすいというか、びっくらこきました。
民主党に政権交代した時に、米国との関係はどうなるんだ、と米国内でもあれこれメディアが報じていて、ここでも紹介しましたが、もうすっかり問題解決。孫崎さんのハナシを聞いてると、自民党時代より悪化している可能性もあったりして。

このシンポジウム、肝心のキャンベル国務次官補は欠席みたいで、まあ、当局者の発言ではないんですがね。

日経CSISシンポジウム

※「特別講演1」は、カート・キャンベル氏(米国務次官補)に代わり、ジョン・ハムレ氏(米戦略国際問題研究所(CSIS)所長 兼 CEO)が講演いたします。
※「特別講演2」は、講師が、カート・キャンベル氏から前原誠司氏(外務大臣)に変更となりました。


この地域の実質責任者たる次官補が出席するかしないかでは、シンポジウムの重みに大きな違いがあるんでしょうな。
主催者の日経の記事も中途半端な感じが良く出てます。

ブレア氏は5月までオバマ政権の情報当局トップを務め、ナイ氏らも民主党に近い。提言は同政権の日米同盟への考え方を反映しているとみられる。

ブレア氏はオバマ大統領に解任された、とかは当然書いてない書いてない。


まあ、それは良いとして、その肝心のキャンベル氏がどんな発言をしているかということなんですが、


South China Sea: A Key Indicator for Asian Security Cooperation for the 21st Century


CBSのボブ・シーファーがモデレーターをやってます。

21分あたりからですが、

1、米国は究極の主権問題についてはポジションをとらない
2、しかしながら72年に沖縄を日本に返還した際に、この諸島も一緒に返還した経緯があって、
3、クリントン長官も発言したように米国の、この諸島に関連するの安全保障に関する米国の責任は明らかだ

まあ、具体的にどう責任を全うするのかはよくわからないし、孫崎さんのおっしゃる通り、軍が動くことは難しいんでしょうがね。まあ、こう発言しているわけですな。

尖閣も日米安保条約の対象になるって、クリントンさん、ホンマに言ったんかいな。

日本の人身売買 アメリカ様にチクッたのは誰か? その3

2010-10-23 12:03:26 | 政治
で、前回の続きなんですが、なんで、米国の国務省が、日本での人身売買に目をつけたのかについてですな。

著者が本書で書いているんですが、

Tokyo Vice: An American Reporter on the Police Beat in Japan
クリエーター情報なし
Pantheon


著者は、米国出身のユダヤ人、元読売新聞記者、ジェイク・エーデルスタイン氏で、読売を辞めた後ですが、後藤組の元組長がロサンゼルスで肝臓移植を受けたことをすっぱ抜いて有名になりました。犯罪歴があると米国に入国できないはずなのに、FBIが手引きして、とか、元組長がお金を払って移植の順番抜かしをしたんじゃないか、とか。

で、人身売買についてですが、

読売新聞の記者をしている時に、ある日、情報提供の電話がかかってくる。それがきっかけで、外国人売春婦の被害について関わってゆくことになるんですな。海外からホステスとしてリクルートされたにも関わらず、借金を背負わされて、パスポートを取り上げられて、半分監禁状態で売春させられる。文句を言うと暴力。警察も助けてくれない。観光ビザで入国してて、仕事しているのがばれると不法滞在で国外退去処分にされてしまうんで、助けを求められない。

著者は、取材を重ねて、やっとのことで記事にして、結構な反響も得た、そこまでは良かった。
当然、取材して判明した悪事は暴かれて、悪人達は裁かれるものだと思ったら、警察が一切動かない。

警視庁のエライさんに文句を言いに行った。

女性をだまして、誘拐して監禁して、強制売春させている極悪人たちをなぜ逮捕しないのか。

その答えは、

1、悪人達を逮捕するには被害者も逮捕されて国外追放になる。観光ビザで仕事している罪を見逃すことはできない。
2、売春で捕まえて有罪にしても刑が軽いし、起訴されないことも結構多い
3、そんなんいちいち捕まえてる体力は無い

とかなんとかで、著者は納得できなかったが、引き下がるしかなかった。

で、著者がどうしたか。

米国の国務省に記事と、取材で入手した情報を送った。

で、どうなったか。

その結果、国務省のレポートで、日本は、北朝鮮よりちょいと良いくらいのひどいところにランク付けされることになり、ウォッチリストに上がってしまう。前回ご紹介したヤツですね。今は、ウォッチリストからは外れてるみたいですな。記事を書いたのは03年のことです。

それで、米国大使館が人身売買のシンポジウムをやることになって、著者はパネリストとして呼ばれたんだそうで。ジャーナリストとしてではなく、パネリストとして。大変名誉なことだった、著書に書いておられますな。


ILO(国際労働期間)が、日本の人身売買についてレポートを出した。日本政府がスポンサーだったんですが、政府の対応が失敗していると指摘したんで、日本政府は出版されるのを止めたそうで。

これですな。

日本における性的搾取を目的とした人身取引

著者は、これもコピーを入手して記事にした。


で、その後日本では法改正がなされようとしたり、当局も重い腰を上げて・・・。

こんな感じですかね。

人身売買「監視対象国」日本の対応

このような国際社会からの非難を受け、日本政府は、労働基準法や出入国管理法などの現行法の運用を強化したり、被害者をすぐには強制送還しないという方針を打ち出したり、「人身売買罪」を新設する刑法改正案を今国会に提出したりするなど、ようやく重い腰をあげ始めた。これらの対策を進めることで国際社会の要望に答え、上記条約の早期批准・発効を目指すことがまず必要である。

もういっちょ。



まあ何年かかっても、きちんとした対応ってのはムリっぽいですが、まあ、問題は認識されてて、グダグダではあっても全く問題が無視されているわけじゃないって感じですかね。アホくさ。

こういう動きを見てて感じることは、

1、モノゴトが、大新聞の記事になって、騒がれても、問題が解決しない


このことは、大きな欠陥ですな。どんな不正もガラス張りの中では生き伸びることはできない、というのが世界の常識だとしたら、これは常識に反してますね。暴露されても放置されてしまう。どっかおかしい。



2、外圧が決定的に重要

国務省のレポートが、事あるごとに指摘されてます。国務省から指摘されたから動く。そら大変だ、みたいな。本当は国内で犯罪が見逃されて放置されていることが、大問題なはずなんですが、それを指摘しても、インパクトがない。だから、アメリカ様に怒られまっせとアピールするしかない。

3、社会のメインストリームから外れた人間には薄情な社会

ここが、決定的な点ですが、被害者が一般の勤め人で、本当にやくざに襲われて、売春させられたとしたら、社会が怒って警察はヤクザたたきに乗り出すんでしょうが、被害者が外人で、外人と言ってもビンボー国からで、しかもちょいとビザの点で後ろめたいとかいうと、死のうがどうしようが、自分達とは関係ないハナシになってしまうんですな。

社会が公正かどうか、とか、法執行が正しく行われているかどうか、という観点では動かない。不正があからさまになっても自分達に関係がないと一般人に判断されると動かない。

これは外国人売春婦に限らず、同じ日本人でも、どっかにお勤めでなかったり、ドロップアウトや、会社トーサンしたおっさんにめちゃめちゃ厳しいことと関連していて、それは金を持っていようがなかろうが関係ない。

日本の自殺率が、なぜ先進国でダントツなのか。不景気で、ドロップアウトした人が増えたからですな。ドロップアウトしただけで死ぬわけじゃなくても、病気やなんかで、行き詰まると誰もたすけてくれない。ケーサツが売春強要されている外国人売春婦を救出しないのと同じように、行き詰まったドロップアウトに対しては当局も冷たい。

組織にしがみついていないと、地獄に落ちてしまうような社会なわけで、そんな社会にダイナミズムを求めるのはドダイ無理なんじゃないか、と言う風にも思うんですな。

いや、俺は独立してうまくやってる、とか、そんなハナシは別としてですね。


ヤクザを報じるアメリカ人

憚りながら 後藤組元組長

元組長 vs CBS 60ミニッツ

Tokyo Vice 東京バイス ジェイク・エーデルスタイン

『人身売買大国日本』  アメリカ様にチクッたのは誰だ

アメリカ様にチクッたのは誰か その2

アメリカ様にチクッたのは誰か その2

2010-10-21 11:17:48 | 政治

日本が米国国務省のレポートで、人身売買でTier 2に分類されている件について、続きです。誰がチクッたか、のハナシ前に、米国大使館のサイトに、仮訳がのってたんで、貼っときます。昨日のは09年版だったんですが10年版がもう出ててるようで、訳は最新版です(借金の金額が50千ドルから49千ドルになってたりして。どうでもいいんですが円高を反映したんですな。芸が細かい)。

読んでると、だんだん情けない感じになって来るんで。


2010年人身売買報告書(抜粋・日本に関する報告)


国務省人身売買監視対策室
2010年6月14日
(下記は、国務省発表の2010年人身売買報告書から日本の項目を抜粋した仮翻訳です。)
日本(第2階層)

 日本は、人身売買、具体的には強制労働や強制売春の被害者である男女や子どもの目的国であり、規模ははるかに少ないが、供給国や通過国でもある。中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、その他のアジア諸国からの移住労働者は男女共に、時として強制労働の被害者になることがある。東アジア、東南アジア、東ヨーロッパ、ロシア、中南米から雇用あるいは偽装結婚を目的に日本にやって来る女性や子どもの中には、売春を強要される者もいる。日本の組織犯罪集団(ヤクザ)が、直接的にも間接的にも、日本での人身売買で重要な役割を果たしているとみられる。人身売買業者は、借金による束縛、暴力による脅し、その他の精神的な威圧手段を用い、被害者の移動を厳しく制限する。マスコミや非政府組織(NGO)は、人身売買の一因である、借金による束縛、移動の制限、残業代の未払い、詐欺など、外国人研修生・技能実習生制度(以下「外国人研修生制度」とする)の悪用事例を引き続き報告している。



女性たちは通常、契約開始時点で4万9000ドル以上の借金を負っており、加えて生活費、医療費、その他の必要経費を雇用主に支払わねばならず、借金による束縛を受けやすい状況に置かれた。行いが悪いとの理由で「罰金」が当初の借金に加算された。雇用主がこうした借金を計算する方法は不透明であった。多数の日本人女性や少女が、日本国内で性目的の人身売買被害者となっており、その数は増加しつつある。性目的の人身売買は、日本国内の犯罪ネットワーク、その他の業者にとって極めて収益の多い産業である。日本人被害者の場合、脅迫、クレジットカード債務、悪徳金融業者からの借金が、人身売買の強要手段として利用されることが多かった。日本は、東アジアから北米に売買される人々の通過国である。日本人男性は、引き続き、東南アジアにおける児童買春ツアーの需要の大きな源泉となっている。


 日本政府は、人身売買撲滅のための最低基準を十分に満たしていないが、満たすべく著しく努力している。本報告書の対象期間に日本政府が報告した、認知された人身売買被害者の数と、起訴され有罪判決を受けた人身売買犯罪者の数は過去最低だったが、日本の人身売買問題が減少したことを示す経験的証拠はなかった。2009年12月、政府は人身取引対策行動計画を発表した。しかしながら、政府による人身売買事案の捜査と起訴、および人身売買被害者の認知と保護への取り組みは、依然として不十分であった。政府は、これまで外国人研修生制度における労働搾取目的の人身売買事案を一度も起訴したことがない。日本で認知され支援を受けた人身売買被害者の数は4年連続で大幅に減少したが、同時に日本の人身売買問題の減少を示す信頼できる証拠はない。


日本への勧告
:より多くの人身売買被害者を認知するために、正式な被害者認知手続きを確立して実施し、その手続きの活用方法についての研修を、売春で逮捕された人、外国人研修生・技能実習生、その他の移住労働者と接する職員を対象に行う。外国人労働者を雇用する企業および商業的性風俗業における人身売買を捜査するために、積極的な法執行の取り組みを拡大する。売買されたことに直接起因する違法行為を犯したことで、人身売買被害者が罰せられることがないようにする。労働目的の人身売買犯罪者の起訴および有罪判決件数を増やす。児童に対する性的搾取の疑いで日本人が捜査の対象となる場合に、現地の当局にできる限り協力するよう、警察庁および日本大使館・領事館から職員に指示を出すことを奨励する。被害者向けシェルターにおいて、引き続き、通訳・翻訳サービスや被害者の母国語を話す心理カウンセラーを利用しやすくし、利用件数を増やす。認知された被害者全員に対し、無料で法的支援が受けられること、および入国管理上の救済措置という選択肢があることを通知する。

起訴

 本報告書の対象期間中、日本政府による人身売買対策のための法執行の取り組みは低下した。政府は、2009年に、刑法第226条の2「人身売買」に基づいて5人を起訴し有罪判決を下したと報告した。これらの犯罪者の量刑情報についての報告は政府からなかった。過去、有罪判決を受けた犯罪者のほとんどが執行猶予を受けている。日本は包括的な人身売買対策法を持たず、人身売買の捜査および起訴件数の統計を取っていない。人身売買事案を扱う各省庁間の協力は、起訴、有罪判決、量刑などの明確な統計記録の確立に必ずしも寄与していない。政府は人身売買に関与する組織犯罪集団に対し十分な捜査・起訴を行わず、有罪判決を追求しなかった。人身売買を禁止する2005年の日本の刑法改正や、労働基準法および児童買春・児童ポルノ処罰法を含むその他のさまざまな刑法の条文や法律は、人身売買とそれに関連する幅広い活動を刑事罰の対象としている。しかし、既存の法的枠組みが、すべての過酷な形態の人身売買を刑事罰の対象にするほど、十分に包括的なものかどうかは明確でない。人身売買を禁止する2005年の刑法改正は、最高7年の懲役刑という十分に厳格な刑罰を規定している。入国管理局と労働基準監督署は引き続き、企業による外国人研修生制度の悪用事例を何百件も報告した。こうした悪用事例の多くは人身売買に関連してはいなかったが、中には、詐欺的な雇用条件、移動の制限、給与の未払い、借金による束縛など重大な悪用事例の報告もあった。外国人研修生・技能実習生から渡航書類を取り上げ、逃避防止のために移動を制限する場合もあった。しかし政府は、外国人研修生制度を十分に監視や規制する努力をせず、この制度で労働目的の人身売買という罪を犯している者を刑法に基づき捜査し、起訴し、有罪判決を下したことはこれまで一度もない。2009年12月、上級職の入国審査官が、バーで働く女性の在留許可の審査で便宜を図る見返りにわいろを受け取ったとして有罪となり、懲役2年の判決を受けた。不正行為は、社会的に容認された日本の巨大な娯楽業界において依然として深刻な問題であるが、そのような不正行為に対する政府の取り組みは不十分であった。人身売買の犯罪の認定、捜査、起訴に関する法執行官の研修において、政府はNGOや国際機関と適度な協力関係を維持した。

保護
 本報告書の対象期間中、政府の人身売買被害者の認知と保護の取り組みは低下した。日本政府によって認知された人身売買被害者の総数は、4年連続で減少した。2009年に警察当局が認知した被害者の数はわずか17人で、2008年の36人、2007年の43人、2006年の58人、2005年の116人から減少した。政府は男性の人身売買被害者を1人も認知せず、男性の被害者が利用できるシェルターはなかった。日本人の子どもの性目的の人身売買被害者を保護する政府の取り組みは改善したと報告されたが、こうした被害者の認知数の報告は政府からなかった。人身売買問題を監視している、情報に通じた組織や個人は、脆弱(ぜいじゃく)な人たちの中から被害者を探し出すことに政府が積極的でないと引き続き報告している。

日本の当局の中には、国際移住機関(IOM)発行の被害者認知の手引書を利用しているところもあるが、当局から、正式な被害者認知手続きを有しているとの報告はなかった。さらに、人身売買を含む分野の担当職員が日本の複数の省庁にいる一方、政府は、人身売買問題専任の法執行官や社会福祉担当職員は置いていないようである。認知された17人の被害者は全員、配偶者からの暴力の被害者向けの政府のシェルターである婦人相談所(WCC)に収容され、そこでは被害者の移動の自由は認められなかった。被害者は、診療を受けることができ、国際機関から心のケアを受けた。これらの被害者はすべて、売春施設で認知された。当局が、外国人研修生制度の参加者を含め、日本に数多く在住する外国人労働者を人身売買被害者と認知したことはこれまで一度もない。政府はNGOと協力し、被害者の母国語を話す通訳を利用しやすくしたと報告した。政府は、日本の法律下では刑事あるいは民事訴訟による法的救済あるいは賠償が可能であるという情報を人身売買被害者に対して十分提供していないようである。当局は、人身売買業者の捜査と起訴への参加を被害者に奨励していると報告したが、被害者に対して、例えば、就労や収入を得ることを可能とするなど、参加を促す奨励策を提供しなかった。政府は、人身売買被害者の長期間の在留ビザ取得は可能だと主張するが、外国人被害者にそのようなビザが発給された事例はこれまでに1件もない。2009年に日本は、人身売買被害者の本国への帰国と社会復帰を支援するためのIOMへの提供資金額を、30万ドルから19万ドル未満へ引き下げたが、これにより日本の被害者支援への取り組みに悪影響が及び、外国人被害者が本国に帰国できず、社会復帰の支援を得られなくなった。

防止

 日本政府は、国際機関とNGOの支援を受けて人身売買防止に取り組んだが、その取り組みは限定的だった。政府は引き続き、人身売買に対する意識向上のために、ポスターとパンフレットを配布した。当局はまた、IOMの支援を受け、警察大学校での法執行の研修を継続した。2009年7月に政府は、新たな人身取引対策行動計画の策定を目的に、NGOも参加する暫定的な作業部会を設置した。この新行動計画は2009年12月に発表されたが、NGOとの協力は盛り込まれていない。政府は引き続き、世界各地における多数の人身売買対策プロジェクトに資金を提供した。長年、多数の日本人男性が、子どもとの性行為を目的に、アジア諸国、特にフィリピン、カンボジア、タイに旅行してきた。2005年以降、当局が児童買春ツアーを理由に日本人を起訴した事例は1件もなく、本報告書の対象期間にそのような事案を捜査したという報告もなかった。日本の商業的性産業が繁栄しているにもかかわらず、政府は、商業的性行為や児童買春ツアーへの需要の減少にまったく取り組まなかった。日本は、国連で2000年に採択された人身売買議定書の締結国ではない。


っとまあ、こんな具合で。


読んでると、お笑いっぽくなって、笑ってしまいます。
あんまし、まじめに取り組まれていないって感じがとってもよく出てますなあ。

年次要望書で日本の市場の自由化を迫られたとかなんとか、黒フネがやってきた、米国が日本のユーチョを略奪しにやってくるみたいなハナシで盛り上がったりもしますが、この勧告には、なんの米国インボー説も成立しないでしょうね。

イッソのこと、日本では、ビンボー外国人や売春婦の人権は認めません、とはっきり宣言しちゃう方が、スッキリするかもですな。


『人身売買大国日本』  アメリカ様にチクッたのは誰だ

2010-10-20 00:03:35 | 政治
以前、米国の国務省のホームページをなんとなくながめてて、人身売買レポートなるものを見つけて、読んでいると、日本がなんとTier 2に分類されていて、びっくらこいたことがあるんですな。

Trafficking in Persons Report 2009
JAPAN (Tier 2)

Japan is one of several destinations and transit countries to which men, women, and children are trafficked for the purposes of forced labor and commercial sexual exploitation. Women and children from East Asia, Southeast Asia, Eastern Europe, Russia, South America, and Latin America are trafficked to Japan for commercial sexual exploitation and male and female migrant workers from China, Indonesia, the Philippines, Vietnam, and other Asian countries are sometimes subject to conditions of forced labor. Most officially identified trafficking victims are foreign women who migrate willingly to Japan seeking work, but are later subjected to debts of up to $50,000 that make them vulnerable to trafficking for sexual exploitation or labor exploitation. A significant number of Japanese women and girls have also been reported as sex trafficking victims.

女子供が、日本に連れてこられて強制労働や、性的搾取の対象になっている、公式に特定されている被害者は外国人女性で、初めは自発的に仕事を求めてやってきて、後に借金を背負わされて労働搾取、性的搾取されやすくされてしまう。日本人女性についても人身売買被害の多くの報告がある。


で、もっとびっくりしたのは、韓国がKOREA, REPUBLIC OF (Tier 1)に分類されていることでして、韓国は売春王国とかいうイメージもあって、日本の方が程度が悪いというのは、ホンマかなって感じで。


本書を読んでいると、東欧ブルガリアの犯罪組織が、少女を監禁して無理やり売春させるようなやり口を紹介してまして、共産主義が破綻して、資本主義の背景もナニも無い空白地帯に、拝金主義や犯罪がのさばって・・・、みたいな文脈でそういうハナシが出てくるわけですが、

世界犯罪機構(W.C.O.)
ミーシャ・グレニー
光文社


日本も同じなのか、みたいな。

ちなみにブルガリアもBULGARIA (Tier 2)でございます。アフガンもそうだったりして、日本ってホンマに先進国なんかいな?

で、検索してみると、すでに日本のメインストリームなメディアでも報じていたりしてました。



まあ、ひげのおっさんは、いかにもウソッぽくてちょっと笑ってしまいますがね。テレビ報道のやらせは何度も発覚してるんで、こういうの観ても信じられなくなってるんですが、あやしさ一杯だとしても、少なくともそれなりにテレビでも報じられている。

で、なんで、アメリカ様が日本をTier 2に分類しているのか、そういう情報はどっからつかんでいるのかっていうのが今日のテーマなんですが、

たとえばこのブログでは、毎日新聞英語版が根も葉もないことを伝えたために、アメリカ様の目に止まってしまったのではないか、と推測しているんですな。

人身売買国家、日本!? (By 毎日変態新聞)

それはおそらく、アメリカの国務省の担当者の知るところになるくらいの早さと深度で拡散したのではなかろうか。

なるほど。

ただ、どうも事実はそうではないらしく、こないだからご紹介している、米国出身で読売の記者をしていたジャーナリストが書いた TOKYO VICEに、この辺の経緯が詳しく書いてありまして、

Tokyo Vice: An American Reporter on the Police Beat in Japan
クリエーター情報なし
Pantheon


ちょいと長くなったんで、その辺の中身については、明日にします。



多国籍企業 VS 草の根中小企業  バーナンキ

2010-10-18 13:00:16 | 金融
バーナンキが金曜日に講演をしてまして、ちょいと気になったんで、



このバーナンキ講演は、大概は、FRBがもう少し踏み込んだ金融緩和政策を実施する、インフレ目標にもっとこだわる、とか言った観点で報じられてます、ってかそうなんでしょう。

たとえば、ファイナンシャルタイムズも、そんな感じです。

Bernanke hints at further stimulus

The incremasing likelihood of hundreds of billions of dollars of further asset purchases by the Fed – a strategy known as quantitative easing – will heighten tensions in international currency markets by weakening the dollar further. That may prompt other central banks to follow suit with currency intervention or QE of their own.

FRBが何兆ドルもの追加資産購入政策の可能性が高まっている。それは、量的緩和戦略として知られているわけだが、それは国際通貨市場でさらに米ドルが弱くなるとのテンションを高めることになるだろう。そして、他国の中央銀行が通貨介入や、彼ら自身の量的緩和策を促すことになるかもしれない。

Mr Bernanke on Friday also marched the Fed another step closer to adopting a formal inflation target – a politically contentious goal he has pursued since becoming chairman – saying that most of the body’s officials think that price rises should be “2 per cent or a bit below”.

バーナンキは金曜日にFRBがさらにステップを進め、公式的にインフレターゲットを採用するのに近いところまで来た。政治的には、彼は着任来、この議論の多い目標を追い求めてきたが、今回、ほとんどの会議の職員は価格は2パーセントがそれより少し低い位でないといけないと考えていると語った。

It is the first time that Mr Bernanke has put that number in a speech and linked it to the central bank’s inflation objective so clearly, a strong signal that the Fed will tie any new stimulus to getting inflation back to the 2 per cent goal.

これは、バーナンキが政策目標として、はっきりと数字を上げたのは今回が初めて。

ってな具合です。とっても分かりやすい記事ですな。
インフレターゲットに遅まきながら、ようやく米国も辿り着いたという感じも出てます。

状況が厳しくなると、いっそう踏み込んで行かざるを得なくなるんで、金融政策はカンケーありません、とは言っても許されないんですな。民主主義なんで。

日銀はどうなんだ、ってハナシも今後は、また出てくるに違いないんでしょうな。


さて、それはそうと、このバーナンキ講演の中で、気になった点というのは、

Bernanke's Speech on the Fed's Policy Objectives


The availability of credit to finance investment and expand business operations remains quite uneven: Generally speaking, large firms in good financial condition can obtain credit in capital markets easily and on favorable terms. Larger firms also hold considerable amounts of cash on their balance sheets.

投資やビジネス拡張のためのファイナンスの得やすさが、平等になっていない。一般的に言って、大企業は資本市場で簡単に有利な条件で調達できている。また、大きな企業は、巨額の手元資金を蓄えている。


By contrast, surveys and anecdotes indicate that bank-dependent smaller firms continue to face significantly greater problems in obtaining credit, reflecting in part weaker balance sheets and income prospects that limit their ability to qualify for loans as well as tight lending standards and terms on the part of banks.

一方で、調査や聞いた話によると、銀行に依存する、より小さな企業は、借入するのに大変な苦労をしている状況が変わらず、それは、金融機関の基準や条件が厳しかったりするためであるとともに、企業のバランスシートや、利益見通しが弱いことにより、ローンを受けるために必要な資格を満たせないことを反映している。


The Federal Reserve and other banking regulators have been making significant efforts to improve the credit environment for small businesses, and we have seen some positive signs.

FRBや他の規制当局は中小企業に対する金融環境を改善するために、かなりの努力を払い、若干の改善の兆候が出てきている。

In particular, banks are no longer tightening lending standards and terms and are reportedly becoming more proactive in seeking out creditworthy borrowers.

特に、銀行は、これ以上の貸出基準や条件の引き締めは行っていないし、もっと、かせる先を積極的に探すようになっていると伝えられている。


とか言うトコですな。

株価の回復が早い、とかいうのは、大企業の回復が早いとかいうハナシと結びついているんであって、そうじゃない草の根中小企業は苦しいままなんですな。

米国の政治論争には、ねじれがあって、

中央政府 VS 地方政府
大きな政府 VS 小さな政府
介入主義  VS 放任主義
現職議員 VS 新人候補
ウォールストリート VS メインストリート
エスタブリッシュメント VS 草の根

とかで、左 VS 右として整理されてるんですが、ってか整理されてしまうと、ちょいとねじれが生じて、ホントなら、もう一つの軸、

草の根 VS 多国籍グローバル大企業

ってのがあるはずで、草の根は左にあったんじゃないかと。

ブッシュは、この構図で敗れたはずなんですな。ナオミクラインや、エコノミックヒットマンも、多国籍企業が、世界中で暴れまわり、米国内でも乱暴狼藉、政権を乗っ取って好き放題自分を有利にもって行っている、みたいな。

これが、ウォールストリート VS メインストリートや 大きな介入政府 VS 小さな放任政府、構図で、打ち消されてしまって、反モスリムの宗教論争までが加わって、旧態依然の共和党に人気が移っている、とかいう流れで、ホントなら、ティパーティは左派であってもおかしくないんですな。ミドルクラスを破壊するのは共和党じゃないの?

本来は、草の根に手厚いのは左派のハズですが、ビンボー人や、共和党政策で被害を被るような人達が共和党支持に回っている感じがあって、これ、ビンボー人を動員した小泉政権時代の選挙に似てるかもですね。

今、とっても苦しくて、大企業やウォールストリートはノウノウとしている、これは政府や現職議員のせいだ、というわけで、介入か放任かみたいなところに議論がいっちゃってるんですが、部外者としては、大企業優遇はそもそも共和党の政策やろ、と突っ込みを入れたくなるんですがね。

ティーパーティ候補のポロが出たり、さすがにちょっと変か、と人々が思い始めて、民主党も支持を詰めているみたいですが、こっからどこまで、いけるかって感じでしょうか。

とまあ、依然として中小企業のファイナンス環境は厳しくて、人々の怒りの原因の一つに違いないこと、怒りの矛先は政府や現職に向かっていること、苦しい自分達じゃなくて、他の連中にお金を回すのはけしからん、という単純な図式にノルのは、ちょいと違うかも、ってことで。


シティ  貸出残高

バンクオブアメリカ 第一Q