会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

電子マネーで地域通貨 杉並区

2010-05-30 13:35:22 | 金融
また、地域通貨かいって感じですが、土曜日の日経記事にハッとする記事がでていたんですな。
夕張を電子マネーを活用した地域通貨で経済振興ができるだろうと書きましたが、

杉並区で実際にやるらしい、って言うんですね。


ソニーと東京・杉並区、地域電子マネー展開

ソニーは地方自治体と組み、地域で電子マネーを普及させる事業に乗り出す。第1弾として子会社の
フェリカポケットマーケティング(東京・品川)と東京都杉並区は共同で2011年度から、区が支給する
助成金や商店街の金券などのICカードによる管理を始める。利便性の高い電子マネーを活用することで
地域の消費活動の底上げにつなげ、行政コストの削減も目指す。

 杉並区が発行するカードはソニーが開発した電子マネー用の非接触IC技術、フェリカを搭載し、東日本旅客鉄道
(JR東日本)の「スイカ」やイオンの「ワオン」、セブン&アイ・ホールディングスの「ナナコ」といった複数の
電子マネーを1枚で使える。区の窓口などで希望者に数百円で配り、区役所や商店街の店舗などに設置した
専用端末にかざせば入金や買い物の支払いができる。

 杉並区では子どもを持つ世帯に配る区の独自の支援クーポンや、ボランティア活動参加のポイントなどを電子マネー化し、
カードにためられるようになる。電子マネーは区内の店舗だけで利用できるようにしたり、使用期限を自由に設定したりできる。
商店街で使う金券やポイントでも活用できるため、官民のサービスを一枚で利用できるようになる。


減価機能は付かない。しかし、

区の給付を電子マネーで行うこと、
地域の店舗で使えるようにする、

ってとこは実現するようで。

地域でしか使えない、という点は良いとして、ただ、

地域での還流という点ではどうですかね。

イサカアワーにもあったように、地域通貨の一つの目的は、富を地域に留める、というものですな。これを実現するには商店街で使われた地域通貨が、さらに、地域の卸業者ないし、生産者からの仕入れに使われなければならない。

そういう手当なしには、結局、商店街が受け入れた電子マネーは円に転換されて終わり。
現状では、『区の給付が、区の業者に支払われることは確保される』、というところまでですな。

それでも、区の業者振興という点では意味があるんですが、地域で流通する地域通貨、とまでは呼べません。企業間で取引ができるようにし、円への転換に制限を設ける必要があるんですな。

このニュースを読んで、あれこれネットを探ってみましたが、ドコもこの視点が欠けてます。
地域通貨の議論は、大きく二手に分かれているようで、

一つは、『うちわ通貨』を発行している主催者のような、どっちかと言えばひだり系の議論。
もう一つは、地公体をからめた上で、地域振興券や、こういう電子マネーを使って地域通貨を実現しようという議論。

ブームを作ったのは前者の方ですが、本筋は後者で、後者は前者を包含しながら、さらに先に進んで行ける議論の力、潜在力がある。前者はやってることと言ってることがマッチしていないし(利息がつかないことが重要なのか)、もともと閉じた世界を志向していて広がりようもない。

ただ、後者の、実際に地公体を巻き込んで考えられている電子マネーは、『電子マネー』を導入することに目を奪われてしまっていて、電子マネー業者のロジックの範囲にとどまってしまう。

商店街独自ではコストが高すぎるんで、地公体が支援して導入しましょうよ、ついでに、区の給付もこれでやれば、参加する業者しか使えず、区外に流出せず、区内で使われることになりますよ、バウチャー方式の給付は面倒でコストかかるがこれなら簡単安い、区長さんの政策に合致してますよ、みたいなセールストークの範囲にとどまっている感じなんですね。『便利になる』ことだけがウリなんですな。


ここまでやるんなら、もうちょっと手を加えて、還流できる仕組みにしちゃえば良いのにって感じなんですがね。

まあ、杉並区は農業や畜産があるわけじゃなく、卸業者を巻き込んでどうなるってのは難しいかもですな。つまり区だけでは経済が完結しにくくて、還流する流通ルートが作りにくい。人口はそれなりにあっても地産地消は難しい。そういう面で外部と組んで経済圏を作ってゆくことがないと、すぐには無理かも。

ただ、さっすが杉並区、というハナシがあって、

『子育て応援券』という給付が住民に出ていて、これも電子マネーに統合されることになるんでしょうが、

日本一!6万円の「杉並子育て応援券」とは

■おむつやミルクを買う時に、使えないの?
物品の購入には使えません。地域の子育て支援サービスの、「量と質の向上を目的としている」からだそうです(納得)。現金で6万円もらっていたら、きっと将来の教育費のための貯金か、いいお肉や、お刺し身に消えてたかも。それでは、地域の小売業は潤っても「子育て支援サービス」の量と質向上にはなりません(反省)。


物品の購入には使えない。ココ、さすがです。大手スーパーで、おむつを買われても地域に貢献しない。売上の一部は地域で雇用されている従業員の給与なんかで支払われますが、結局本社に吸い上げられて、杉並区にはとどまらない。

地域の、しかもサービス業なら、お金が出ていかない。そもそも仕入れるモノがないですからね。

よーく見てゆくとザルになってて、結局何にも変わらずに特定の人だけが得する政策、みたいなのに慣れさせられている身としては、こういう細かな配慮、良くみないと気がつかず、ぱっと見不便じゃん、だけどこうすることが区のためになる、みたいな工夫には関心させられますな。そういうのがホンモノの政策ってもんでしょう。

サービス業を重点に置いて、電子マネーの参加業者を募って、業者の給与も受け取った電子マネーを一部、そのまま電子マネーで支払う、みたいな形ならば杉並でも還流可能でしょう。サービス業はモノの仕入れがなくて、コストは地域に落ちやすい。

区長さん、もう一歩どうですかね。

おむすび通貨 その8  電子マネーでどうよ

エンデの遺言を読んでみた  地域通貨




アップル vs マイクロソフト 時価総額トップ

2010-05-28 04:49:49 | ロンドンエコノミスト
アップルの勢いが止まりませんな。

今度はアイパッドですか。
私はアマゾンのキンドルを持ってて、そんなに欲しいとは思わないんですが、人気があるみたいで。キンドルはイーインクを使ってて目が疲れないし、軽くて。

まあ、読書用というより、つかめるパソコン、ってことなのかも知れませんな。さっとつかんで、手元でブラウジング。デスクトップよりノート、ノートよりパッド。身近になっていることには違いない。ノートはまだ重すぎるし、書きものをする以外はキーボードはジャマで、ブラウズするだけならない方が良い。簡単に立ち上がって、動きが機敏で、ノートより安けりゃアップルじゃなくても買いますな。

で、そのアップルなんですが、時価総額がマイクロソフトを超えたってことなんですな。

Apple v Microsoft
A sour taste
Microsoft loses its top spot to Apple







APPLE has overtaken Microsoft to become the world’s largest technology company by market capitalisation. On Wednesday May 26th Apple’s market value of $222 billion had closed the $80 billion gap which stood between the two companies at the beginning of the year.

アップルは時価総額で、テクノロジー企業のトップの座をマイクロソフトから奪った。年初には800憶ドルもあった差が、水曜日に埋まってしまったということなんですな。

昨日、木曜日ですが、

Mkt cap 227.86B  マイクロソフト
Mkt cap 230.53B  アップル

ほんのちょっとの差ですが、アップルがマイクロソフトを上回ってますな。

記事についているグラフでもわかるとおり、業績で見ると利益の差はまだまだ大きくて、マイクロソフトの方がかなりでかいですが、マイクロソフトの利益の伸びが止まっているのに対し、アップルはかなりの伸びがあって、それがPERの違いになってるんですな。少ない利益でもマーケットの評価が高いんで時価総額が抜いてしまった。

棒グラフが純利益の動きなんですが、アップルは04年あたりまで啼かず飛ばず。その後急激に爆発したって感じですな。一方のマイクロソフトも07年に急激に伸びていて、今から考えると、景気が良かったんですな、そんなに衰えは見られません。

マイクロソフトの08年以降の落ち込みは法人顧客の情報投資の落ち込みでしょうな。アップルはアイポッドやモバイルホンへ、まあ、個人が中心で、ヒットに恵まれて成長を続けられた。

エコノミストが去年書いてますが、アップルはチープマネーをかき集めているんで。

テクノロジーセクターは復活して経済を引っ張るか ロンドンエコノミスト

アップルが実現したグラフィカルインターフェースをマイクロソフトがパクッた、とか、
ソフトを売ったマイクロソフト、パソコンを売ったアップル、とか、

いろいろと、アップルの失敗をあげつらう議論が長年続けられてきて、熱心なファンはいるもののどうしようもないアップル、という時代が長く続いてきたわけですが、

時価総額でマイクロソフトを抜きましたか。

いやはや。


リバタリアン親子 ロン アンド ラン

2010-05-27 07:29:34 | 政治
多分、共和党ケンタッキー州プライマリーで勝利した時のスピーチなんだと思いますが、




登場する時の音楽がカッチョいい。
そもそも音楽つきかい!!

お父さんのロン・ポールに先導されてラン・ポール。

『政府を取り戻す時が来た』

『FRBの無駄遣いを止めさせろ』

みたいなスピーチ。

個人としての責任を教え、・・・・ 育ててくれた両親に感謝。

ロンポールは、クビをひょいと下げて応える。

『アメリカのベースは自由だ。自由なビジネス・・・。そのことをオバマみたいにアメリカはお詫びする必要はない』


ティーパーティが送りだした候補。
リバタリアンが大きな支持基盤を持ち始めたってことなんでしょうか。

ピーター・シフが、次の大統領は小さな政府、2012年のレーガン、共和党のアウトサイダーがやってくるって言ったんですな。

ピーターシフ

この親子が絡むかどうかはわかりませんがね。

そういや、レーガンもレイシスト的な発言をしてたんでした。

クルーグマン 自著を語る

ラン・ポールは同じ層に働きかけている、とも言えるかもですな。


ロン・ポールの息子

2010-05-26 07:28:20 | 政治

ロン・ポールの息子。

だったらサン・ポールか。

ちゃいまんがな。

おむすび通貨にうつつを抜かしている間にアメリカはちょいと論争になっているみたいで。





リバタリアンのロン・ポールの息子さんが、共和党ケンタッキー州の上院選候補に選出された。これだけでも結構なニュースなんですな。お父さんと同じリバタリアンで、真ん中より大分外れてます。

ティーパーティの支持を得て勢いがついた。

今や、反ワシントンはとっても強くなってて、泣く子も黙るティーパーティ。

それがですな、その後、

市民権法は行き過ぎだ、と発言して以来

やいのやいの。チョー有名人になっちゃってます。

市民権法で、人種差別を禁止してて、レストランで黒人を入れないなんてできなくしたことに彼が、行き過ぎだ、私的なビジネスにまで連邦法が踏み込むべきじゃないとか言ってしまった。

人種差別には反対で、市民権法は支持するみたいなことも言いながら、このオネーチャンの厳しい突っ込みにムニャムニャ。

共和党の有力者は、それでも彼をそんなにひどくいってなくて、支持し続けてますみたいなことも言ってるみたいですが、やはり、泣く子もだまるティーパーティということなんでしょうな。変に批判して自分の立場が危うくなっても困るんで。

Rand Paul: Ron Paul's son is a wacky guy on civil rights -

このブログでは、

ワッキィガイ  ヤバイヤツ、みたいに言われてます。ちなみに息子の名前はランポール。

親父と紛らわしいんですがね。



エンデの遺言を読んでみた  地域通貨

2010-05-24 07:11:58 | 金融
丸一週間、ずっとおむすび通貨一色でどうもすんません。

なんせ、地域通貨のことはずっと頭の片隅で引っ掛かったままで、いつか整理したいと思っていたんで。それに、地域通貨を考えるということは、通貨一般を考えるということでもありやして、シロートが頭の体操をするには面白い素材なんですな。ギリシアもユーロを離脱しないで、地域通貨を並行して使うなんて、どうかな、とか。

そろそろ通常モードに復帰したいんですが、もういっちょだけ。

例の番組が書籍化されてるんで、この週末で読んでみました。

映像だけでは今一つわからない点まで、活字なら踏み込んでいるはずですよね。

エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」
河邑 厚徳,グループ現代
日本放送出版協会


先週、いろいろ書いてきたわけですが、大体のことは、本書にすでに書かれてますな。

先に読むべきであったか。

ただ、ちょっと気がついたことを書いときますと。

1.ウォルマートへの対抗

米国イサカのケースで、未来学者のなんとかさんが、富を地域に留める機能がある、っておっしゃってました。

本書によると、はっきり名指しされてはいませんが、大手安売りショッピングセンター、つまりウォルマートへの抵抗運動も背景にあったみたいです。ウォルマートが進出してくると、物価は安くなるが、地域の購買力は吸収されて、ウォルマート本社へ。そしてその先の中国なんかの生産地に行ってしまう。生産地では子供や女性がひどい労働環境で・・・というパターン。これまでここでも何回も見てきましたやつですね。

反東京、反全国チェーンと前に書いたと思うんですが、イサカじゃウォルマートがはっきりと意識されていたってことで。


2.大規模農場への対抗

イサカアワーで地元の土地を守るって番組で誰かが言ってました。大規模農場は土地が荒らしてしまうんでイサカアワーで地元の零細農家を支援するんだと。これも名指ししてませんが、モンサントなんかの遺伝子組み換え種子と、除草剤の組み合わせで手間いらずの大規模農業のことを言ってるんでしょう。

市場原則を突きつめると、とことん効率化を進めることになりまして、

一つは規模の経済。
一つは省人化。

これが極限まで進んで、結構グロテスクなことになってしまう。

地場の商店や、農家を支援することで、地域を保全する。
少々できるのが遅くなっても、形が整っていなくても、そこは消費者も許容する。

家族経営でやってるんで、給与を払う必要がなくて、つまり、奥さんと子供が無償労働で、作ったものが売れさえすれば儲かりはしなくても何とかやってゆける。地場の消費者が買うかどうかが問題なんで、イサカアワーが地域の提供者と消費者を結びつけるって感じですな。



3.理論、思想面

 (1)『悪貨は良貨を駆逐する』原理について

地域通貨が流通するのは、悪貨が良貨を駆逐する原理があるからだ、と私は書いたんですが、地域通貨は悪貨じゃないのか、という議論も、なんと本書にあって、

経済学者のフィッシャーが、米国で減価する地域通貨を広めようとしていた時に、

『悪貨は良貨を駆逐する。代用貨幣が現金にとってかわるなら、これは代用通貨が悪貨であることを証明している』

との批判されてまして、それに対し、

『そのような主張はインフレ時以外は間違っている。流通にある貨幣が流通していないとき、これを駆逐し本当に流通するどんな貨幣も悪貨ではなく良貨である』

と答えたそうです。まあ、流通にある貨幣が流通していないとき、なんて、訳はメタメタですけど、なんとなくわかりますな。インフレでなくて、ひどい不況にあって、貨幣が退蔵されて流通しないとき、減価する代用通貨なら流通するってだけで、それは悪貨にあたらない、という主張です。

フィッシャー大先生には申し訳ありませんが、私は、悪貨だから流通する、減価させて人為的に悪貨度を高める、と一般化した方が、すっきりして、一貫した説明ができると思いますがね。悪貨でいいじゃん。

まあ、呼び方が悪ければ、言い方を変えて、反保蔵需要を高める、とか、わけがわからなくしてしまって。専門書でみかけるような、アホ用語を使ってしのぎましょう。

(2)内輪通貨と本格通貨

地域通貨にも内輪でだけ通用する信任度が低いもの、世間一般に通用する信任度が高いものといろいろあって、低いものほどメンバー間の信頼関係による補完が必要だ、と私は書いたんでした。同じ地域通貨でも求める機能によって、性質が違ってくる
。内輪通貨に減価機能なんて、ほとんど関係ありませんな。そういうことを理論化するには通貨の信任度という概念がどうしても必要になるんですが、本書でこの問題がどう扱われているかと言いますと、

こうした、通貨間のレベルの違い、区別はなされておらず、金利をひたすら強調するのみです。今の貨幣の悪い点が金利に集約されている、という見方なんですな。金利があるから邪魔になって、貨幣が流通しない、てな具合で。

まあ、本書は理論書じゃないんで、そういうことはどうでもいいのかも知れませんが、私にすれば、地域通貨の主催者が金利のつかない通貨が世の中を変える、みたいなことを言うのが、どうも引っかかるんで。本書が発端だったのか。

ゲゼルは、減価する通貨が、経済を変える、と言っただけで、ゼロ金利ではだめでしょう。

地域通貨について考えていたわけでもない。国家レベルでの改革を考えていたんで、小さな町単位の成功であっても、十分ではなかったでしょうナ。

地域通貨は金利がつかないから良きものだ、というのは、ほとんど根拠も意味も不明です。

おむすび通貨が流通するのは、金利がつかないから?

アホか!!


内輪通貨も本格通貨も、一般化して説明するには、これまでやってきたように、『悪貨が良貨を駆逐する原理』と『通貨への信任とその補完論』が必要なんですな。内輪通貨は減価機能をつけなくても悪貨として流通する。信任度の高い本格通貨では減価機能を付けないと悪貨にならない、という風にですな。


(3)ゲゼル

ゲゼルは、労働者のために立ち上がろうとか、平等な社会を、とか考えていたんじゃなさそうですな。彼はビジネスで大成功した実業家であって、反ビジネスでもない。

ただ、反金融資本なんですな。

今、アメりカで議論になっている、

ウォールストリート VS メインストリートの戦いで、

ゲゼルはメインストリート側なんですな。

同時に、彼は土地改革も提唱していて、土地の政府による収用を主張。

つまり、お金は劣化せず放っておいて金利がつく、土地も劣化せず貸すと地代が稼げる。おんなじなんですな。

これが滞留の原因になっててイカンというわけで土地も収用しちゃう。

ゲゼルは市場がどん詰まるのをなんとか掃除しようとした不況の経済学を考えたに違いないんで、地域通貨の親分と呼ぶにはちょっと遠過ぎる感じなんですけど・・・。

ゲゼルの自由通貨運動の一環ってことで、自由に通貨を発行させろってこと ?



とまあ、考えは尽きないんで、ずっとこのまま、地域通貨ブログにしちゃっても良いくらいですけど、とりあえずこの辺で。イロイロととっかかりができたんで、またこのネタに戻ってくることもあるかもですね。

タンザニアのビクトリア湖のナイルパーチのハナシをやってる『ダーウィンの悪夢』って映画があって、あれ、地域通貨で考えると・・・、

ってもうやめときます。












おむすび通貨 その8  電子マネーでどうよ

2010-05-23 10:04:24 | 金融
地域振興券という結構近いトコまで行った前例があるじゃないか、というハナシでしたが、既存のインフラを使ってもっともっと簡単にやる方法もある(かも)。

JR東日本のスイカや、おさいふケータイのような、電子マネーのインフラを使ったらどうでしょう。

別の通貨を使って減価させるわけですが、通常の政府円と流れを区別できれば良いので、スイカインフラをそのまま使っちゃう。

どうやるか。

1.夕張市の給付をメロンマネーで行う

市職員や市の病院職員なんかの給与、市が委託している業者への支払い、その他給付など、市の支払いの一部をメロンへのチゃージで行う。メロンはスイカと同じインフラを使います。あの定期券みたいなカードを職員に作ってもらって、そこへチャージしてもらいます。

これだけです。

2.原資

予算です。円をメロンマネーに転換して払うだけ。メロンマネーの運営主体を別途作って、そこに予算を支払ってメロンマネーに転換してもらうという形になるんでしょうな。国債とか、金とかを担保にして新通貨を発行するのとそんなに変わりませんが電子マネーというなじみのある形で実施します。

3.減価するメロンマネー

で、1か月ごとに1%づつ減価させます。毎月1%特別市民税を徴収する、って感じですな。税法改正が面倒なら、メロン通貨運営主体への手数料として残高に応じて1%徴収する、という形態でも良いでしょう。メロン運営主体は徴収したお金を市に何らかの名目で返納する。

誰がどんだけ持っているかにかかわらず、カードにチャージされているメロンマネーの残高が毎月1%減ってしまう

給付を受けた人は、減価期日までに使ってしまうことを目指すでしょう。
給付形態も、給付額は、短期で使いきれる程度の金額である必要があるんで、高額の場合は分割して払うなんて工夫があっても良いですな。

4.B to Bで使わせる

小売から卸、メーカーへとさかのぼるために、企業間でメロンマネーを使ってもらう必要があります。企業間の電子商取引のインフラも整備します。スイカインフラが法人間の決済に使えるのか知りませんが、メロンマネー運用主体が、企業口座を持って、決済代行を行えば良いんでしょうけど、法的に面倒な課題があるかもですな。地元の銀行に手伝ってもらうと良い。

5.換金ルールを決める

通常の円に転換するには10%の手数料をとる、とか決めておきます。普通なら、1割払う人は居ないんで、そのままメロンマネーとして還流し続けます。

還流し続けることで、1年経つと、発行した通貨の1割が減価する。つまり、夕張市は1年後に、新たな原資無しに、1割の新しい追加給付ができるということにもなるってことで。あるいは、一回こっきりにして、10年経てば夕張市に元本がそのまま戻ってくるってことなんですね。


思いつきをまとめただけなんですが、意外に、難しくなさそうな気がするんですが、どうでしょうね。

法的な措置が必要だっていうんなら、財政再建団体にだけに認めるとかして、中央のお役所を説得する。地域復興政策としてやってみる。

うーん、すぐにでも、どうですかね。


おむすび通貨 その7  デフレ対策としてとにかくやってみる

2010-05-22 13:03:20 | 金融

地域通貨って、最近では全国であれこれ進められているようなんですな。ちいとも知りませんでしたが、デフレ対策としてやるんなら、もっと規模を大きくしてやる必要がありますね。とは言っても、そんなに難しくないんじゃないか、って思うんてすが、どんな感じになるかちょっと考えてみましょうか。減価する通貨前提で考えます。

まず、地方なり国なりの政府が入って行われる必要があるでしょうね。


なぜか、

1,通貨への信任の問題

政府の政策として行われるので通貨は信任されますな。

通貨への信任度が高ければ使用する主体間の相互信頼関係が高くなくても流通する→フェーストゥーフェースでなくて構わない→市場で広く使われるってことで。

規模を拡大してゆくには、いわゆるカンキョーがどう、とか、コミュニティーがどう、とか、そういうイロを外して、通貨としての抽象性、自律した価値を固めておく必要があります。

地域通貨でイメージされるタテマエ、ノウガキは一旦捨て去るんですね。そういうのは後で考えることにするんですな。

実行段階では邪魔になるんで。



2,政策的効果を出すには、ある程度の規模が必要

なんで、規模が必要なのか。通貨発行が効果を出すには、その通貨が流通する範囲内で通貨が還流していく必要がありますね。

消費者が小売業者から食品を買う → 小売業者は卸業者から仕入れる → 卸は食品メーカーから仕入れる→ 食品メーカーは材料を農家から仕入れる → 農家は消費者として小売業者から食品を買う → 小売業者は卸業者から・・・。


こうやって、お金が順繰りに回ってゆくには、ある程度流通する範囲内で完結する必要があるので、規模が小さいと、どっかで止まってしまう。

よくあるケースだと思いますが、商店街だけが参加した場合、その通貨を受け取っても仕入れに使えないんで。受け取った通貨を自分の給料として受け取って、同じ商店街仲間から買えば良いんですが、そこまでですな。その通貨を商売として受け取れる金額は、商店街仲間から個人として買って済ませる範囲に限定されてしまう→結果的に本格的に流通しない、あるいは使えないんでどっかで退蔵されてしまう。


3,私的機関がやるには、発行の問題が悩ましい

番組で、イサカのスタッフが、イサカを発行するのは誰かがローンを請求するか、なんとかするかの場合しか出してませんとかインタビューで言ってましたね。おむすび通貨でもボランティアの対価だとか、円で何か買うともらえるとか。どう発行するかは大問題なんですな。

イサカやおむすびのような内輪通貨でもそうであれば、大々的に流通させる通貨の場合とっても難しい。どうやって発行するか。

円を払ってもらえば、同額お渡しします。

これじゃあ誰もほしがらない。円のままの方が良いに決まっている。

地方なり国の政府が、給付としてまず発行するのがやりやすい。

夕張市の職員は給料がかなり削られて人数も減っててかなりつらい。職員の給与補完として減価するメロン通貨を発行する。
市がやってる病院も人件費を削り過ぎて人が集まらない(かったとしたら)、メロン通貨を発行して給与補完にあてる。
雪かき業者に、メロン通貨を支払う。

市の支出の一部をメロン通貨にあててゆくんですな。市は市の中で多分、最大か、それに近い支出主体なんで市だけでオーケー。

夕張がこれを発行した場合の市としてのメリットは別に考えましょう。


さて、地方なり国政府が発行することになったとして、


3,既に近い政策は前例があるんで、もうひと押しすれば実現できる(かも)

『地域振興券』ってのがありましたな。

地域振興券

ここまでやったんだから、減価する通貨はもうひと押し。

どうするか、

地域振興券を発行して、円に換金できなくする。

あるいは換金率を下げる。たとえば9割にしか換金できないことにする。

地域振興券って、一回こっきりで、結局お金をばらまいたのとそんなに変わらない。地域内で還流しないと意味がないんですな。地域振興券は期限が決まってて、それまでに必ず使う、という点は評価できるんですが、だからどうよってことで、結局
、フツーに使われて終わり。ほんの少しの、一回こっきりの効果しかありません。

で、もっと効果を上げるために、

その地域振興券を受け取っても、日本円に簡単には換金できないようにする。


そうすれば、受け取る小売業者はなんとか、その振興券を使って仕入れができないか考えますな。
そうしなければ、あらかじめ売り物に1割のっけて価格設定しなければならない。
そうした時点で競争に負ける。

卸業者は地域振興券でなんとか取引をとろうとする、
その通貨では取引しない、としても良いんでしょうが、他に受け取る業者がでれば、その時点で競争に負けてしまう。

勿論、業者にはあらかじめ趣旨を理解してもらって地域内で回るようサプライチェーンの整備をお願いしておくんですね。


もっと簡単な、既存インフラを使うやり方もありますな。








おむすび通貨 その6 退蔵ニーズは否定すべきものか 地域通貨

2010-05-21 06:52:37 | 金融
地域通貨と言っても、内輪通貨から、地方政府発行するそれなりの本格派まで、さまざまなのでした。

内輪通貨は通貨に対する信任は低いが、構成メンバー間の相互の信頼関係が、それを補完している。

本格通貨は通貨に対する信任が高く、構成メンバー間の相互の信頼関係で補完する必要が無い。ってか市場での競争にさらされるので、交換に供する商品やサービスには一定の水準をあらかじめ求められる。そうじゃないと供給者は市場からの退場させられる。内輪通貨ではシロートサービスやシロート商品でも、相互の信頼関係(フェーストゥーフェースで長い付き合い)をベースにオーケーされる。

通貨への信任が強くなるほど、求められるメンバー間の相互信頼関係というのは小さくなる。

さて、たとえ地域通貨であったとしても、価値の裏付けが明確なので、結局退蔵されてしまうってハナシでした。
だから、減価機能を付ける。

ではこの減価機能付き通貨を発行するということは、どういうことなのか。まあ、

通貨の流通速度を速めて経済活動を活発化する、

で良いんですが、それってどーゆーことなんだ、ともう一歩踏み込んで考えたいんですな。


1.貨幣は価値貯蔵機能と、交換機能を持っているが(計算単位としての機能もあるけどここでは関係ない)
2.価値貯蔵ニーズが強すぎて、交換機能を阻害するほどになっているため
3.交換機能専用の通貨を別途設ける。交換機能専用の通貨には減価機能を付与する。


つまり、用途別に通貨を分ける、ってことなんじゃないか、って思うんですね。勿論、現行通貨も交換機能を担い続けるわけですが、特に、交換機能に特化した通貨を投入することによって、退蔵ニーズから遮断された世界を作りだします。


一般的に提案されているマイナス金利政策とは、どう違うのか

ホームレス対策を考えましょう。

ホームレスの居場所を片っ端から攻め立てて、ホームレスを追っ払う。そうすりゃ、いずれホームレスは居なくなるだろう、と考えるのがマイナス金利政策ですな。

銀行預金に金利を付けて、銀行預金の居心地を悪くするってか追っ払う。

だけど、ホームレスを地下街から追い立てても、ホームレスが世の中から居なくなるわけじゃないのと同じで、銀行預金の居心地を悪くしても退蔵ニーズがなくなるわけじゃない。

ホームレス問題は、職場、一般社会復帰への道筋を考えて対応せざるを得ない、つまり出口戦略を考えないと解決しませんな。
退蔵ニーズも、攻め立てるだけじゃ解決しない、ってか余計な制度や、それにぶら下がる人達が増えて余計なコストを増やすだけに終わるんでしょう。

退蔵ニーズは、長期低迷の経済を受けて、どうやって皆が逃げ切るかを考えざるを得なくなっているからで、これは否定的にとらえちゃいけない。そんな発想の政策はそもそも受け入れられない。

退蔵ニーズは退蔵ニーズで大事なものととらえつつ、
圧迫されている交換ニーズの出口として、減価する通貨政策を実施する

こう考えると、おさまりが良くないでしょうか。





おむすび通貨 その5  減価する通貨 地域通貨

2010-05-20 06:40:40 | 金融

減価する通貨について、もう少し。

これまで見てきたとおり、地域通貨にはいろんな機能があるんですな。

1.地域に富をとどめる、

2.人々を取引の輪の中に取り込んでゆく←失業中でも地域の取引なら参加できるようにするってこと

3.『悪貨は良貨を駆逐する原理』で取引の回転を早める


この、3なんですな。

番組で紹介されていた地域通貨は、ブィグルでの事例以外、減価機能は盛り込まれていませんでした。それでも参加者は使ってましたね。

なぜ使われるのか。

一つは、地域の一員である、地域に貢献する、という意識の問題も当然ありますね。

もう一つ、これが大事なんですが、

地域通貨は貯蓄、退蔵の対象にならない、

ということなんでしょう。つまり、地域通貨が将来にわたって価値を維持するとは限らない。突然なんかの事情で中止される可能性もあるし、コミュニティが荒れて、使い物にならなくなるかもしれない。転居したらしまいだ、とか。

地域通貨を貯めても仕方ないんですな。だから入手したらすぐに使う。

別に、減価機能が付いていなくても、地域通貨を使える場所で、地域通貨を持っていれば、地域通貨から使う。だから地域通貨は使われる。『悪貨は良貨を駆逐する原理です』。

これ、マイナス金利問題では無いんですな。

では、ブィグルの、減価する通貨についてどう考えるのか。

地方政府が、きちんと担保の裏付けもとった上で、正式に通貨として発行した場合、この通貨には信用があって、退蔵の対象になりうる。国家の通貨よりは劣るにせよ『悪貨』度合いが小さいので、やはり使われにくい

だから、減価機能を付けて人為的に悪貨にする。

地域通貨も信用度に応じて分けて考える必要がある、ということであって、信用度が高まると、たとえ地域でしか使えないとしても国家の通貨とあまり違いがなくなってしまうケースもあるってことでして、ブィグルみたいな小さな町じゃなくて、もっと大きな、それこそ日本の道州制なんかで、それぞれ地域の通貨を作ろうってことになると、悪貨は良貨を駆逐する原理は効かない可能性もある。

減価機能というのは、小さな内輪通貨のレベルでは必要ないが、本格的な地域経済圏の経済成長を狙う、という政策レベルで考えるなら、付与する必要が出てくる。

その理由は政策的に使わせるには、その通貨に信用あることが不可欠で、信用度の高い通貨を発行すると減価機能をつけないと、退蔵の対象になってしまい、取引を活発化することにならない→結果として、あんまし使われない。



ってことで、

では、減価機能を持つ通貨を発行するとはどういうことなのか。

もうちょっと考えてみたいんですな。



おむすび通貨 その4  ケインズ vs ゲゼル  地域通貨

2010-05-18 05:15:12 | 金融
減価する通貨を提唱したシルブィオ・ゲゼルですが、例の番組で、ケインズが云々したと紹介されてました。

で、ちょいとケインズの著書をながめてみますと、

雇用・利子および貨幣の一般理論
J.M. ケインズ
東洋経済新報社


第23章に『重商主義、高利禁止法、スタンプ付き貨幣、および過小消費説に関する覚書』とあって、このスタンプ付き貨幣というのがそれなんですな。

ここで、ケインズはまず、重商主義について論評した後、『ここで、風変わりな、不当に無視された予言者シルブィオ・ゲゼルについて一見することが望ましい』、とゲゼルの経歴から、主張の概要、理論的な難点について結構な字数を割いて説明しています。

、『彼の理論が不完全であったことは疑いなもなく、彼の著作が学界の人々から無視された理由であった。それにも関らず彼は自分の理論を十分に実際的な勧告の基礎となるところまで押し進めていた。その勧告は彼が提案した形では実行可能ではないが、必要なものの本質を示していると言っていい』として、スタンプ付き貨幣の概要を紹介しています。

ゲゼルによれば、実物資本の成長は貨幣利子率によって阻止される→この貨幣利子率による阻止機能を取り去れば→実物資本の成長は極めて急速に行われる。

と説明した後、

『このことから彼は有名なスタンプ付き貨幣という処方箋を書いたのであって・・・』と減価する通貨について云々しています。ケインズは、スタンプ料金がいくらにするのが良いのかみたいなことまで書いた後に、

『スタンプ付き貨幣の背景をなす考えは健全なものである。・・・・しかし、ゲゼルが取り上げなかった多くの困難がある』
と書いて、貨幣にそんなスタンプの負担を強いた場合、銀行預金や、外貨や貴金属にとって代わられる、逃げられちゃうんじゃないか、と示唆しています。一般理論が出版されたのは1936年でヴェルグルで実行されたのが1932年なんで、ケインズは実例を知ってた可能性があるんですが。

『もちろん、控え目な規模で実行に移すことは可能である』
と書いてます。実例のことを指しているのかもしれません。

まあ、ケインズは、そしてゲゼルも、利子率全体を気にしてて、利子率を下げることで実物資本の成長つまり、投資を増やすということを狙っているんで(と考えていいのかな)、そういう議論になっちゃうんですな。

利子がイカン、みたいなハナシは『FRB陰謀説』『中央銀行はコストゼロで金を刷って利息付けて搾取している』『ロックフェラーとかロスチャイルドみたいな銀行家世界支配説』みたいなインボー説とつながってて、それはそれで面白い。また、ケインズがマルクスと並べて『将来の人々はマルクスの精神よりもゲゼルの精神からより多くのものを学ぶであろうと私は信ずる』とまで書いている理由も大きな議論を評価してのことでしょう。

ただ、減価する通貨は、ヴェルグルの事例をみる限り、利子率を下げて経済を拡大する、というよりも、『悪貨は良貨を駆逐する』原理を人為的に強化することで、受け取った人ができるだけ早く手放すことによって経済がすばやく回転してゆく→貨幣乗数が上がって経済が拡大するんで、金利全体を下げるハナシとはちょっと違う感じです。


実物貨幣に減価機能を付与するハナシは、いわゆるマイナス金利の議論、たとえば銀行預金残高に課税しちゃうみたいな議論とは切り離して考えるべきでしょう。

金利全体を引き下げることを目標としているのではなく、特定の通貨にマイナスを付与して、退蔵されない通貨を作るというだけで、全体的な、強い流動性選好、貨幣や財貨退蔵傾向をいじることを狙っていない。

ゲゼルという教祖様がそう言ってるからかも知れないんですが、あたしは、日本に限らず地域通貨を推進している人達が、地域通貨に利子がつかないからどうこう、資本主義がなになに、みたいなことをおっしゃることに違和感があるんで。

そんなのカンケーネーッ!